ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も第7版放射線概論の章末の演習問題を掲載します。
管理技術13章「放射性廃棄物の処理」の章末問題です。今日は問6(P.597)です。
問6 非密封の45Ca,32Pおよび60Coの各37MBqを使用する事業所がある.
Ⅰ この核種について,その1~10kBqの分析試料の放射能を正確に測定したい.
45Caは(A)であり,その最大エネルギーが(B)MeVであるので,測定装置として,効率の優れている(C)を選んだ.
32Pは(D)であり,液体で取り扱うことから,測定装置として(E)を選んだ.
60Coは(F)であり,精密なスペクトル測定は不要であるから,効率のよい(G)を選んだ.
Ⅱ 45CaはCaについて0.3mol/Lの水酸化カルシウム溶液である.この溶液100Lちょうど中和するためには,リン酸(H)kgを要すると計算される.ただし,リン酸の分子量を100とせよ.
Ⅲ 実験は1月1回の割合で行われ,1月で2基ある5m3の排水貯留槽の片方がほぼ満水となる.排水の放射能濃度の測定を行い,32P:9.0×10-2,45Ca:4.0×10-1,60Co:5.0×10-2 Bq/cm3 の値を得たとすると,そのまま排水できるか.ただし告示第5号別表第2第6欄の該当値は32P:3×10-1,45Ca:1×100,60Co:2×10-1 Bq/cm3 である.
Ⅰ
45Ca,32P、60Coは放射線取扱主任者試験では全て重要核種です。壊変、半減期、エネルギーは暗記しておく必要があります。
45Ca:β-壊変 半減期163日 257keVβ線のみ
32P:β-壊変 半減期14日 1.711MeVβ線のみ
60Co:β-壊変 半減期5.3年 1.173MeV, 1.333MeVγ線 318keVβ線
これらを踏まえて、
45Caは(A)β-(no γ)放射体であり,その最大エネルギーが(B)0.257MeVであるので,測定装置として,効率の優れている(C)液体シンチレーション計数装置を選んだ.32Pは(D)β-(no γ)放射体であり,液体で取り扱うことから,測定装置として(E)液体シンチレーション計数装置を選んだ.
液体シンチレーション計数装置は低エネルギーβ線やα線の測定に適する計測器で、エネルギー吸収量に比例して発光するためエネルギー測定も可能になります。そのため、3H(18keV) 、35S(167keV) 、32P(1.711MeV)などの核種識別が可能です。
60Coは(F)β- - γ放射体であり,精密なスペクトル測定は不要であるから,効率のよい(G)NaI(Tl)シンチレーション計数装置を選んだ.
γ線放出核種に関してはGe半導体検出器やNaI(Tl)シンチレーション計数装置が適していますが、精密なスペクトル測定は不要ならばNaI(Tl)シンチレーション計数装置で十分です。
Ⅱ
水酸化カルシウムとリン酸で中和する際の化学反応式は、
となります。
0.3mol/Lの水酸化カルシウム溶液100L中には、水酸化カルシウムが
あることになります。
化学反応式から3molの水酸化カルシウムを中和するのにリン酸は2mol必要であることが分かりますので、よって、30molの水酸化カルシウムを中和するのに必要なリン酸は20molになります。
リン酸の分子量は100ですので、20molのリン酸は、
よって、(H)2kgとなります。
化学計算に関する基本事項及び化学反応式に関する内容は本ブログでは以下の記事に掲載しています。
3月16日 化学計算の基本 モル、気体の体積、原子数
3月17日 化学反応式
Ⅲ
それぞれの核種の放射能濃度は、
32P:9.0×10-2 Bq/cm3
45Ca:4.0×10-1 Bq/cm3
60Co:5.0×10-2 Bq/cm3
また、告示第5号別表第2第6欄の該当値は
32P:3×10-1 Bq/cm3
45Ca:1×100 Bq/cm3
60Co:2×10-1 Bq/cm3
核種の放射能濃度の濃度限界(告示第5号別表第2第6欄の該当値)に対する比率が1よりも小さければ希釈せずにそのまま排出可能となります。
本問題のように核種が複数ある場合は、それぞれの核種の放射能濃度の濃度限界(告示第5号別表第2第6欄の該当値)に対する比率の和が1よりも小さければ希釈せずにそのまま排出可能となります。
よって、
32Pの放射能濃度の濃度限界(告示第5号別表第2第6欄の該当値)に対する比率は、
45Caの放射能濃度の濃度限界(告示第5号別表第2第6欄の該当値)に対する比率は、
60Coの放射能濃度の濃度限界(告示第5号別表第2第6欄の該当値)に対する比率は、
よって、これらの和は、
となりますので、このまま排出することができます。
排液中の放射性物質の濃度に関する問題は非常に出題頻度が高く毎年のように出題されていますので必ず過去問題をしっかり解いておいて下さい。本ブログでは以下の記事で紹介しています。