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気体発生に関する問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日は演習問題を一緒に解きましょう。
気体に関する計算問題です。
化学計算に苦手意識を持っている方も多いかもしれませんが、基本をしっかりと理解すれば難しいことはありません。問題を数多く解くことで苦手意識を克服して下さい。


問 精製した226Ra(半減期:1.60×103年)1gを密封容器に入れて100日間放置した。そのときの娘核種222Rn(半減期:3.82日)の標準状態(0℃,1.01×105Pa(1気圧)の状態)での体積[ミリリットル]に最も近い値はどれか。
ただし、1molの気体の体積は標準状態で22.4リットル、アボガドロ定数は6.02×1023mol-1、ln2=0.693とする。

① 3.3×10-4
② 6.5×10-4
③ 9.8×10-4
④ 1.3×10-3
⑤ 2.2×10-3


放射平衡に絡めた計算問題です。
ラジウム(226Ra)とラドン(222Rn)はともにウラン系列に属する核種です。
226Raの半減期1600年は222Rnの半減期である3.82日よりも十分に長いため、100日間(3.82日の10倍のおよそ40日以降)放置した後では放射平衡の中でも永続平衡が成立します。

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永続平衡が成立する核種間では、親核種と娘核種の放射能が等しくなるという特徴がありますね。(←これは絶対覚えておかなくてはならない重要事項です)

226Raと222Rnの間で永続平衡が成立しているので両者の放射能は等しくなります。
226Raは1gですのでその放射能を計算してみましょう。
放射能の計算式は以下の式で表される重要公式です。必ず暗記しましょう。

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ここで、T[s]は半減期、NAアボガドロ数、w[g]は放射性核種の重量、Mは放射性核種の質量数です。
w[g]/Mで放射性核種のモル数を表し、モル数にアボガドロ数を乗じたNA×w[g]/Mで原子数を表しています。
ln2=0.693、NA=6.02×1023を代入すると以下の式になります。

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226Raの半減期は1600年、質量は1g、質量数は226であるので、これらの数値を代入すると(半減期は秒単位に変換すること)、

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となります。
このRa1gの放射能3.7×1010[Bq]は1[Ci](キューリー)と定義されています。
現在では放射能の単位は[Bq]が一般的ですが、以前は[Ci]を使用していました。

 イメージ 10 「ミナテンテン」と覚える

は覚えておくと良いでしょう。
さて、Ra1gの放射能が3.66×1010[Bq]と計算できましたので、この放射能と等しくなる222Rnのモル数を求めます。
3.82日も秒単位に変換して放射能を求める公式に代入すると、

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この式からn[mol]を求めると、

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気体1モルの体積は標準状態では22.4Lになります。
1L=1000mLなのでmLで表すと22.4L=22400mLとなります。

よって、222Rnの2.9×10-8[mol]を体積に換算すると、

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となります。よって、正解は②ですね。
これが基本に忠実な解き方になります。

この問題は平成17年度化学問5に実際に出題された問題の類題です。
本番の試験の限られた時間内で、これだけの計算量を電卓なしで手計算で行うことは非常に大変です。
Ra1gの放射能が3.7×1010[Bq]であることを知っていれば前半の計算は省略できるので少し楽になります。
また本問題ではあまり恩恵は受けられないかもしれませんが、1年=3600秒×24時間×365日ですので、1年=3.15×1010秒も暗記しておくと放射能を求める計算問題では役に立つことがあります。ついでに覚えておきましょう。
 

 


それでも、これだけの計算量を実際の試験で行うことは大変です。
放射線取扱主任者試験は電卓が使用できないため、実際の試験は時間との戦いでもありますので、明日はもう少し計算が楽になる解法を考えてみましょう。
本日の問題に関連する内容として、本ブログでは以下の記事がありますのであわせてご覧下さい。

 放射能を求める式
 化学計算の基本 モル、気体の体積、原子数
 放射平衡①
 Rnの同位体