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結合エネルギーの計算問題②

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も演習問題を一緒に解いてみましょう。
物理や物化生の試験でよく出題される結合エネルギーの計算に関する問題です。結合エネルギー、平均結合エネルギーに関する問題は非常によく出題されています。是非、重要事項はしっかり暗記し、また質量欠損から結合エネルギーの計算もできるようにして下さい。(第7版放射線概論P.38-40)

問 238Uの核子当たりの平均結合エネルギー[MeV]に最も近い値はどれか。
ただし、ウランの原子番号は92、原子質量単位で表した238U、水素原子、中性子の質量はそれぞれ、238.050784u、1.007825u、1.008665uであり、1u=931.5MeVとする。
 ①7.0 ②7.2 ③7.4 ④7.6 ⑤7.8

本ブログの2017年6月8日の記事(結合エネルギーの計算問題)でも重水素原子核の結合エネルギーを計算する問題を掲載しています。
少しおさらいしてみましょう。
原子核の質量は構成している中性子の質量と陽子の質量の和よりも質量欠損分だけ小さくなります。この質量欠損をエネルギーに換算したものが結合エネルギーです。

質量欠損ΔM
原子核の質量差で、構成核子の質量の総和から原子核の質量を引いたもの
 
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 mp:陽子の質量、mn:中性子の質量、Mnucl:原子核の質量
 Z:原子番号(陽子数)、N:中性子

原子核内はプラスの電荷を帯びた陽子と電気的に中性な中性子が存在しており原子核全体としてはプラスになっており、陽子-陽子間にはクーロン力が働いています。原子核内にはクーロン力よりも強い核力が働いているため陽子同士は同じ原子核内に存在できます。

では、今日の演習問題を解いてみましょう。
まず、238Uの原子核内の陽子、中性子質量の和、それに238U原子に存在する電子の質量を加えた総和を求めます。
238Uの原子核内の陽子数は238Uの原子番号が92なので92個。
238Uの原子核内の中性子数は238Uの質量数238から陽子数92を差し引いて、
 238-92=146個。
・電子数は陽子数と同じなので92個。
ここで、注意して欲しいことが、
本問題では陽子及び電子の質量が与えられておらず、その代り水素原子の質量が与えられています。水素原子には陽子1個と電子1個がありますので、水素原子の質量は陽子1個と電子1個の質量の和と考えることができます。

よって、238Uの原子核内の陽子、中性子質量の和、それに電子の質量を加えた総和は、中性子146個の質量と水素原子92個の質量の和と考えられるので、

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となります。
この総和から238Uの質量を引いた値が質量欠損ΔMになりますので、 

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1uのエネルギーは931.5MeVであるので、この質量欠損をネルギーに換算した結合エネルギーは、

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これが238Uの原子核の結合エネルギーとなります。
本問題では核子当たりの平均結合エネルギーが求められていますので、この結合エネルギーを核子数238で除して、

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となります。よって、正解は④ですね。

2017年6月8日の記事(結合エネルギーの計算問題)重水素原子核の結合エネルギーを計算する問題では、陽子、電子の質量が問題に与えられていましたが、本問題ではそれらの値はなく、代わりに水素原子の質量が与えられています。
考え方をしっかりと理解しておけば間違えることはありませんので、両方の問題を自分で解いて必ずマスターして下さい。
最近では、平成27年度物化生問2で質量欠損や結合エネルギーの計算問題が出題されています。また、今年度(平成29年度)の第2種放射線取扱主任者試験の管理技術Ⅱの問2で40Caの核子当たりの平均結合エネルギーを求める問題が出題されています。本問題の238Uが40Caに変わっただけの問題ですので、是非解いてみて下さい。

最近の過去問題
 
平成27年度物化生問2 
 平成29年度管理技術Ⅱ問2(第2種放射線取扱主任者試験

本日の問題に関連する内容として、本ブログでは以下の記事がありますのであわせてご覧下さい。
 結合エネルギー
 結合エネルギーの計算問題