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結合エネルギーの計算問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も雨が降っていますが、昨日梅雨入りした地方も多いようですね。

今日は物理の試験で出題される結合エネルギーの計算に関する記事を紹介したいと思います。結合エネルギー、平均結合エネルギーに関する問題は物理でよく出題されています。是非、重要事項は覚えてください。(第7版放射線概論P.38-40)
結合エネルギーについては、このブログでも11月21日の記事(結合エネルギー)で少し紹介していますが、今日は実際の計算方法について触れたいと思います。
 
原子核の質量は構成している中性子の質量と陽子の質量の和よりも質量欠損分だけ小さくなります。この質量欠損をエネルギーに換算したものが結合エネルギーです。
 
質量欠損ΔM
原子核の質量差で、構成核子の質量の総和から原子核の質量を引いたもの
 
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  mp:陽子の質量、mn:中性子の質量、Mnucl:原子核の質量
 Z:原子番号(陽子数)、N:中性子

原子核内はプラスの電荷を帯びた陽子と電気的に中性な中性子が存在しており原子核全体としてはプラスになっており、陽子-陽子間にはクーロン力が働いています。
原子核内にはクーロン力よりも強い核力が働いているため陽子同士は同じ原子核内に存在できます。
例題を掲載します。

問 重水素原子核の結合エネルギー[MeV]に最も近い値はどれか。ただし、重水素中性子、陽子、電子の質量をそれぞれ、2.014102u、1.008665u、1.007276u、0.000549uとする。ここで、uは原子質量単位で、1u=931.5MeVである。
 A 1.11  B 2.22  C 5.55  D 7.77  E 9.99

解答
質量欠損をエネルギーに換算したものが結合エネルギーとなりますので、この問題の質量欠損を求めると、重水素原子核には陽子、中性子がそれぞれ1個ずつあり、そして重水素原子にはさらに電子が1個ありますので、その総和は、
 
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この総和から重水素の質量を引いた値が質量欠損ΔMになりますので、
   
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                  イメージ 3
 
1uのエネルギーは931.5MeVであるので、この質量欠損は、
 
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これが重水素原子核の結合エネルギーとなります。よって、正解はBですね。
 
「質量欠損をエネルギーに換算したものが結合エネルギーとなる」

減少した質量は消えてなくなるわけではありません。この減少した質量が結合エネルギーとなっているのです。このことは非常に重要ですので必ず覚えておいてください。
 
平成27年度の物化生問2では質量欠損や結合エネルギーを計算する問題が出題されています。過去問題を解いた方は既にお気づきかもしれませんが、問2Ⅱの問題に重水素の結合エネルギーが上で計算した値と同じ2.2MeVと記されていますね。
 
この問2Ⅱの問題では、重水素中性子、陽子、電子の質量が与えられているのではなく、放出されるエネルギーと重水素の結合エネルギーが与えられています。それらの値から三重水素、すなわちトリチウムの平均結合エネルギーを求める問題です。
基本に戻ってゆっくりと考えればできる問題ですので是非解いてみてください。
 
また、この問2Ⅱの核融合反応はD-D反応とD-T反応です。(第7版放射線概論P154)
D-D反応とD-T反応に関しては最近は時々試験に出題されていますので、またこのブログでも取り上げたいと思います。