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壊変、内部転換、自発核分裂の問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
クリスマスも終わり、年の瀬、慌ただしい時期かと思います。寒い日が続いていますので体調管理にはお気を付け下さい。
さて、今日は久しぶりに演習問題を掲載したいと思います。


問 放射性壊変に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
①α壊変で放出されるα粒子は4Heの原子核であり、娘核種の原子番号は2減少し、質

 量数は4減少する。
②β-壊変では、原子核から電子が放出され、娘核種の原子番号は1増加するが、質量

 数は変わらない。
③軌道電子捕獲とは、原子核が軌道電子を捕獲することにより起こる壊変過程であ

 り、その際、特性X線あるいはオージェ電子が放出されるが、娘核種の原子番号

 質量数は変わらない。
④γ遷移では、原子核が高励起状態から低いエネルギー状態に移る際に光子(γ線)が
 放出される。この光子の代わりに電子が放出される現象を内部転換という。
⑤自発核分裂では、重い原子核が自発的に分裂する現象のことで、分裂に伴い中性子
 が放出される。


壊変に関する基本的な問題です。壊変は放射線取扱主任者試験では毎年必ず出題されていますので確実に覚えて下さい。
α壊変は、α粒子であるヘリウムの原子核を放出する壊変であるため、原子番号は2減少し、質量数は4減少します。①は正しいですね。

β-壊変は、原子核内の中性子が陽子に壊変するもので、このとき電子(β-)と反ニュートリノを放出します。原子番号は1増加し、質量数は変化しません。②も正しいですね。

軌道電子捕獲(EC)壊変は、原子核の陽子が軌道電子と結合して中性子となり、ニュートリノを放出する現象です。β+壊変との競合過程となりますのでβ+壊変同様、原子番号は1つ減少し、質量数は変化しません。③は誤りですね。

γ遷移は、励起状態原子核が安定な基底状態に戻るときにγ線を放出することです。④も正しいですね。競合過程として内部転換があります。原子核励起状態(不安定な状態)にあるときに光子であるγ線を放出して安定な基底状態に転移する代わりに、軌道電子を放出して安定な基底状態に転移することを内部転換と呼びます。
参考までに、光子であるX線γ線の違いは、原子から放出する光子をX線原子核から放出する光子をγ線と呼んでいます。

自発核分裂は、選択肢の記載通り、重い原子核が自発的に分裂する現象のことで分裂に伴い中性子が放出されます。第一種試験では252Cfが最もよく出題されています。⑤も正しいですね。

よって、選択肢の中で最も不適切なものは③になります。

今日の記事に関係する問題として今年度(平成29年度)の第一種試験では以下の問題が出題されています。
壊変
 平成29年度物理問6,7
 平成29年度物化生問1Ⅰ
内部転換
 平成29年度物理問3
自発核分裂(252Cf)
 平成29年度物化生問1Ⅱ

平成29年度物化生問1Ⅰからの抜粋
「α壊変やβ壊変で生じた原子核は、励起状態にある場合がある。この励起状態原子核がより低い準位に遷移する際にγ線が放出される。」

平成29年度物化生問1Ⅱからの抜粋
原子番号が(J)92上の原子核では、外からの刺激なしに核分裂が起こることがあり、これを自発核分裂という。この過程はα壊変と競合して起こり、一般にα壊変の確率のほうが高い。自発核分裂の部分半減期は(K)原子番号が増すとともに急激に減少する。中性子線源として利用される252Cfは、半減期が2.65年であり、自発核分裂の割合が3.1%で核分裂に伴い高速中性子を放出する。」

本ブログでも、壊変、内部転換、カリフォルニウムに関する記事を掲載していますので是非読んで勉強して下さい。
壊変: 
 壊変(2016年11月8日)
 壊変(2017年1月6日)
内部転換: 
 内部転換電子(2016年11月15日)
 競合過程、内部転換、核異性体転移の基本事項(2017年1月18日)
カリフォルニウム: 
 カリフォルニウム(252Cf)(2016年10月11日)