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壊変に関する演習問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

今日は演習問題を一緒に解いてみましょう。

 


問 

以下の壊変に関する次の記述のうち正しいのはどれか。

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A Xの質量数はYの質量数と同じである。

B Yの原子番号はZの原子番号と異なる。

C Xの壊変定数はYの壊変定数より小さい。

D 時間が十分に経過すればXとYは永続平衡の関係になる。


 

まず、β-壊変についてのおさらいです。基本的なことは必ず覚えておきましょう。

β-壊変
原子核内の中性子(n)が陽子(p)に壊変するもので、このとき電子線(β-線)と反ニュートリノを放出します。中性子が陽子に変わるので原子番号は1つ増加します。質量数は変化しません。

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では、問題を見ていきましょう。

核種Xがβ-壊変して核種Yになるので、核種Yの原子番号は核種Xの原子番号よりもよりも1つ大きくなります。核種Xと核種Yの質量数に変化はありません。よって、選択肢Aは正しい。

核種Yがβ-壊変して核種Zになるので、核種Zの原子番号は核種Yの原子番号よりもよりも1つ大きくなります。よって、選択肢Bは正しい。核種Yと核種Zの質量数に変化はありません。

壊変定数は一般的にλで表され、以下の公式があります。

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壊変定数は放射性核種が単位時間に壊変する確率を表しています。単位時間当たりの壊変数は元の原子核の数に比例し、この時の比例定数を壊変定数といいます。

(本ブログでも、壊変定数についての記事で詳しく記載していますのでご覧下さい)

公式から分かるように、壊変定数は半減期が長いほど小さくなります。核種Xと核種Yを比べると核種Xの半減期の方が長くなるので、壊変定数は核種Xの方が小さくなります。よって、選択肢Cは正しい。

親核種の半減期が娘核種の半減期よりも十分に長いとき、両者の間で永続平衡が成立します。親核種Xの半減期は約28.7年、娘核種Yの半減期は64時間ですので、親核種Xの半減期が娘核種Yの半減期よりも十分長いので両者の間に永続平衡が成立します。よって、選択肢Dは正しい。

よって、選択肢AからD全てが正しくなります。

 

本問題の核種Xと核種Yが何かはもう分かりますよね。

先日からこのブログでも掲載していましたが、核種Xは90Sr、核種Yは90Yになります。

放射線取扱主任者試験では第一種試験、第二種試験ともに非常によく出題されている核種で必ず暗記しておかなくてはならない核種です。

おさらいのため再度掲載します。

90Sr:β-壊変 半減期28.8年 546keVのβ線のみ放出

90Y:β-壊変 半減期64時間 2.28MeVのβ線のみ放出

 

β-壊変や壊変定数についても、試験では非常によく出題されていますので必ず暗記しておきましょう。

 

壊変に関する過去問題をいくつか掲載します。

第一種試験

2018年度物理問9

図には、137Csの壊変図を示す。次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

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A (ア)に相当する核種は137Baである。

B 137Csはβ+壊変する。

C 137Csの壊変のうち94%は(ア)の核異性体となる。

D 137Cs線源から放出される662keV光子の放出率は2.55分ごとに半減す

   る。

2017年度物理問7

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A 電子捕獲においては核内の陽子1個が中性子に変わる。

B α壊変する核種でβ線が放出されることはない。

C β-壊変が起きると必ずγ線が放出される。

D β-壊変と電子捕獲の両者が起きる核種も存在する。

2017年度物理問6

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A EC壊変が起きる核種では必ずβ+壊変が起きる。

B EC壊変が起きると特性X線またはオージェ電子が放出される。

C 核異性体は必ずその原子核基底状態を経て壊変する。

D α壊変で放出されるα線のエネルギー分布は線スペクトルである。

2015年度物理問3

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A 内部転換が起きると中性子数が1つ減少する。

B 軌道電子捕獲が起きると質量数が1つ減少する。

C β-壊変が起きると原子番号が1つ増加する。

D β+壊変が起きると中性子数が1つ増加する。

2013年度物理問7

放射性壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A α壊変ではニュートリノが放出されない。

B α壊変とβ-壊変は同一核種では起きない。

C β+壊変が起きる核種では競合してEC壊変が起きる。

D EC壊変ではニュートリノが放出されない。

 

第二種試験

2019年度物理問1

放射性壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A β+壊変により、原子核から陽電子が放出される。

B EC壊変により、原子核から特性X線が放出される。

C 内部転換により、原子核からニュートリノが放出される。

D 自発核分裂により、原子核から中性子が放出される。

2014年度管理技術Ⅱ問2

β-壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A 質量数が1だけ増加する。 

B 核内の中性子が陽子に変わる現象である。 

C 親核と娘核の質量差が電子の2倍より大きくないと起こらない。 

D 壊変のエネルギーは娘原子、電子、反ニュートリノの3体に分配され

   る。

2012年度管理技術Ⅱ問2

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A EC壊変により原子核からニュートリノが放出される。 

B β+壊変により原子核からニュートリノが放出される。 

C 核異性体転移によるγ線放出と内部転換電子放出は競合する。 

D 自発核分裂により中性子が放出される。

2011年度管理技術Ⅱ問6

β壊変(EC壊変を含む)に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A β-壊変は中性子数の過剰な原子核で起こりやすい。 

B β+壊変では娘核種の原子番号は親核種の原子番号よりも1大きい。 

C β線が連続スペクトルを示すのはニュートリノが壊変にエネルギーの一

   部を持ち去るためである。 

D EC壊変(電子捕獲)では娘核種の原子番号は親核種の原子番号と同じであ

   る。