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γ線スペクトロメータ、波高分布に関する問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
物理や管理測定技術の試験では、NaI(Tl)シンチレーション検出器やGe半導体検出器を用いた場合のγ線スペクトロメータや波高分布に関する問題が出題されることがあります。
 
今日はγ線スペクトロメータや波高分布に関する記事を紹介しようと思います。γ線スペクトロメータや波高分布に関する例題として第7版放射線概論の測定技術6章の章末の演習問題問6Ⅱ(P.429)を解いてみたいと思います。

問6Ⅱ 2.75MeVのγ線放出源をGe検出器で検出した.その出力パルス波高分布を調べると,最もエネルギーの高い2.75MeV相当の(A)ピーク以外に,2.24MeV相当の(B)ピークと1.73MeV相当の(C)ピークが現れた.後者の2つのピークは,検出器内で発生した(D)が1本又は2本検出器外に逃げ去った事象にそれぞれ相する.(D)は,(E)で生じた(F)が(G)と結合した結果、生じたものである.3つのピークの割合は検出器の有感領域の大きさに影響され,大きな検出器で波高分布を測定すると,小さな検出器に比べて(H)ピークの高さの割合が増加する.

この2.75MeVのγ線放出源とは24Naのことですね。
第7版放射線概論のP.372にGe検出器で検出した波高分布が載っています。

24Na、137Cs、60Coの波高分布は放射線取扱主任者試験でもよく出題されてますので、それぞれのピークが何のピークに相当するかを勉強しておくと良いかと思います。
 
24Na
 イメージ 1
137Cs
 イメージ 2
 60Co
 イメージ 3
 
24Naの最もエネルギーの高い2.75MeV相当のピークは(A)全吸収ピークになります。全エネルギーを検出器内で失ったときに発生したパルス波高に対応するもので、ほとんどが最終的に光電効果を起こして全エネルギーを失う過程を経るので光電ピークあるいは全吸収ピークと呼ばれます。

2.24MeV相当のピークと1.73MeV相当のピークは、検出器内で発生した(D)消滅放射線が1本又は2本検出器外に逃げ去った事象にそれぞれ相当する(B)シングルエスケープピーク(C)ダブルエスケープピークになります。

(B)のシングルエスケープピークの位置は  
  イメージ 4
 
(C)のダブルエスケープピークの位置は
  イメージ 5
 
24Naのγ線エネルギーは2.75MeVで1.022MeVのエネルギーよりも高いため、(E)電子対生成が起こり0.511MeVの消滅放射線2本を放出できます。そのため、それらの消滅放射線が検出器外に逃げ去った分だけ低い位置にシングルエスケープピーク、ダブルエスケープピークが生成します。

電子対生成は光子が原子核の強い電場に吸収されて電子と陽電子を生み出す反応です。生成された(F)陽電子は物質中の(G)電子と結合して2本の0.511MeVの消滅放射線を反対方向に放出して消滅します。
電子対生成はこのブログでも光子と物質の相互作用③の記事で紹介しています。
 
大きな検出器で波高分布を測定すると,検出器外に逃げ去る消滅放射線の確率が減少するため、小さな検出器に比べて(H)全吸収ピークの高さの割合が増加します.

γ線スペクトロメータ、波高分布に関する過去問題
 平成17年度管理測定技術問3
 平成19年度管理測定技術問2Ⅰ
 平成20年度管理測定技術問4Ⅰ
 平成21年度管理測定技術問1Ⅰ
 平成22年度管理測定技術問1
 平成24年度物理問27
 平成25年度管理測定技術問1Ⅰ
 平成26年度物理問27
 平成26年度管理測定技術問3Ⅰ
 平成27年度物理問17
 平成27年度管理測定技術問6Ⅱ
 平成28年度管理測定技術問2Ⅰ