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コンプトンエッジに関する問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も演習問題を一緒に考えましょう。
本日の問題は放射線取扱主任者試験でも第一種、第二種ともに毎年必ず出題されている光子に関する問題です。

問 エネルギーEγのγ線が角度θ方向にコンプトン散乱後に持つエネルギーEγ'は次式で表される。
 
 
 
エネルギー1MeVのγ線をNaI(Tl)検出器で測定した時にコンプトンエッジは約何MeVになるか。最も近いものを次の中から選べ。
 
 ① 1.0MeV ② 0.8MeV ③ 0.6MeV ④ 0.4MeV ⑤ 0.2MeV

まずコンプトン散乱についておさらいしましょう。
エネルギーの高い光子が物質に入射されると、光電効果やコンプトン散乱、電子対生成などの相互作用を介して光子のエネルギーが物質に与えられます。中でも、コンプトン散乱では、入射した光子のエネルギーの一部が軌道電子に与えられコンプトン電子(反跳電子)が放出されます。その際、入射した光子は散乱され進行方向が変わりエネルギーは低下します。
エネルギーと波長の関係を表す以下の式(λ:波長、h:プランク定数)から波長が長くなるとエネルギーが小さくなるので、散乱光子の波長はエネルギーが小さくなる分、入射光子に比べて長くなります。
 
 
 
光子が物質と相互作用を起こし、コンプトン散乱が起こった場合の散乱光子のエネルギーを表す公式は問題本文中にも記載されていますが、超重要公式です。必ず暗記しましょう。エネルギーを代入するときの単位はMeVであることに注意しましょう。
 
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式中のm・c2は電子の静止エネルギーを表し0.511MeVとなり、角度θは散乱光子の散乱した角度になります。
 
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本日の問題で問われているコンプトンエッジ(コンプトン端ともいう)はコンプトン散乱が起こった場合に、波高スペクトルにおいてコンプトン電子の最も高いエネルギーの位置付近に観測されます。
では、本問題でのコンプトン電子の最も高いエネルギーを求めてみましょう。
散乱光子のエネルギーを表す公式から、散乱光子のエネルギーは散乱角度に依存し、散乱角度が180°(cosθ=-1)のとき、すなわち入射方向へ散乱されるときに最小になります。公式で分母が最大になるときが散乱光子のエネルギーが最小になることから分かります。
散乱光子の最小エネルギーは入射光子のエネルギーを1MeVとして、
 
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となります。
散乱光子のエネルギーが最小のときにコンプトン電子(反跳電子)のエネルギーは最大になるので、そのコンプトン電子のエネルギーは入射光子のエネルギーから散乱光子のエネルギーを引いて、
 
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となり、すなわち、このエネルギーの位置にコンプトンエッジが観測されることになります。よって、正答は②となります。
 
コンプトンエッジに関しては、2015度物理問17でも出題されています。また、以下の図は2018年度第二種試験管理技術Ⅰ問5Ⅲに出題された図です。Ge半導体検出器で測定した24Naのエネルギースぺクトルになります。この図では③と⑦がコンプトンエッジになります。
 
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2018年度第二種試験管理技術Ⅰ問5Ⅲは波高スペクトルの勉強には良い問題かと思いますので是非解いてみて下さい。
 
参考までに、
放射線概論には24Naのエネルギースペクトルとして以下の図が掲載されています。
 
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 また137Csの波高スペクトルは以下のようになります。
 
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本日の問題に関連する内容として以下の記事もあわせて読んで勉強して下さい。