ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日はγ線に関して重要事項を覚えましょう。
不安定な状態(励起状態)にある原子核が安定な状態(基底状態)に遷移する際に発生する電磁波である。α線、β-線放出時のように原子番号や質量数などが変化することはありません。
X線とγ線はともに光子と呼ばれますが、「原子核外から放出されるのがX線」であり「原子核内から放出されるのがγ線」とされています。波長によって区分されるわけではありません。2021年度の第二種試験物理問1にX線とγ線に関する問題が出題されています。
2021年度第二種試験物理問1からの抜粋
先日のα線の記事で、原子番号88のラジウム226Raがα壊変して原子番号86のラドン222Rnになり、その際にα線を放出する核反応を掲載しました。
226Raはα線以外にもおよそ3.5%の割合で186keVのγ線も放出します。
また、先日のβ線の記事で掲載した40Kも壊変図からも分かるようにEC壊変後、励起状態から基底状態に遷移する際に1.46MeVのγ線を放出します。
2019年度第二種試験化学問11でも40Kのγ線に関して出題されています。
2019年度第二種試験化学問11からの抜粋
上記のような壊変系列をつくらない天然放射性核種もあり、体内にも存在して内部被ばくの主な要因になっている核種として例えば、(E)40Kがある。(E)40Kは、89.1%の分岐比で(F)β-壊変して安定同位体40Caになり、一方、10.8%の分岐比で(G)EC壊変し、安定同位体40Arになり、この際、1.46MeVの(H)γ線を放出する。
40Kの1.46MeVのγ線がGe半導体検出器のバックグラウンドにも現れることは先日も記載しましたね。このことは過去の第一種試験の管理測定技術の課目において出題されたことがあります。
2012年度第一種試験管理測定技術問2Ⅰからの抜粋
これらの原因のうち、①の環境中の放射性物質として(ア)232Thや(イ)238Uの壊変生成物や(ウ)40Kなどの天然の放射性物質が主なものであるが、原子力発電所事故により放出された134Cs、137Csによるバックグラウンドにも注意すべきである。40Kは高いエネルギーのβ線、γ線を放出し、γ線バックグラウンドスペクトルの1.46MeV相当位置に顕著なピークを出現させる。また、2.6MeV付近にも顕著なピークが認められるが、これは232Thの子孫核種の(エ)208Tlから放出されるγ線によるものである。
2014年度第一種試験管理測定技術問3Ⅰ
鉄筋コンクリート建物の室内において、遮蔽体のないGe検出器で長時間測定したときのγ線スペクトルの例を図に示す。スペクトルはいくつかのピークと、ピーク以外の連続部分からなる。ピーク部分で顕著なものは、壊変系列を作らない(ア)40Kの1,461keVと、232Thの(A)子孫核種である(イ)208Tlの2,615keVの(B)全吸収ピークである。
実務
問3からの抜粋
137Csは半減期(ア)30.1年でβ-壊変して、その94.4%は137mBaになり、残りの5.6%は直接安定な137Baの基底状態になる。137mBaは半減期2.55分で(A)核異性体転移により137Baになる。この際、主にγ線((イ)662keV)を放出する。
問32からの抜粋
問1からの抜粋Ge半導体検出器を用いて放射線同位元素が放出する光子の波高分布を測定する場合を考える。図に28Al線源を用いて測定した場合に得られる波高分布の一例を示す。ただし、28Alは半減期2.241分でβ-壊変し、最大エネルギー2.863MeVのβ-線および1.779MeVのγ線を放出する。それぞれの分岐比は100%である。矢印①の波高分布は、入射光子の(A)全吸収ピークを示し、入射光子が直接(B)光電効果を起こすか、あるいは、何回かの(C)コンプトン散乱でエネルギーの一部を失った後、(B)光電効果で全エネルギーを失う場合に対応する。矢印②は反跳電子の(D)コンプトン端を示し、そのエネルギーは(ア)1.556 MeVに相当する。この反跳電子と同時に散乱された光子のエネルギーは、図中の2つの矢印(イ)①と②のチャンネルの差分に相当する。
問6Ⅱからの抜粋
非密封放射性同位元素を取り扱う場合には、外部被ばく対する管理の他に吸入摂取などによる内部被ばくの管理が必要である。放射性ヨウ素131Iは、壊変の過程で主に(E)3.65×105 eVのγ線を放出するため、鉛ブロック等による線源の遮蔽による外部被ばくの防止に務める。また、131Iの吸入摂取を防ぐためには、作業時の活性炭マスク着用や、作業をフードやグローブボックス内で行うことが重症である。
2019年度
物理
問18(コンプトンエッジ)、問25(波高分布の分解能)、問29(1cm線量当量の測定)
化学
問30(51Cr線源)
問32Ⅰからの抜粋
放射性ヨウ素の同位体はトレーサー実験及び核医学診断や放射線治療に用いられており、加速器や原子炉で製造されている。核医学で用いる放射性ヨウ素は無担体で高い比放射能でることが必要である。
下表に、代表的な放射性ヨウ素の核種と半減期、製造方法、壊変様式と主な放射線、適用例をまとめた。123Iは加速器を使って124Xeを標的とした(ア)(p, 2n)反応で生成した短寿命の123Csが123Xeに壊変し、さらに123Xeの壊変によって得られる。123Iは半減期13.2時間でEC壊変して、主に(A)159keVのγ線を放出し、(B)甲状腺シンチグラフィに利用される。β線を放出しないので体内に投与した時の被ばく線量は少ない。125Iは、原子炉で124Xe(n,γ)125Xe反応により生成する。125XeのEC又はβ+壊変により得られ、半減期59.4日で(イ)EC壊変して(C)35.5keVのγ線を放出する。クロラミンTを用いて(D)チロシン残基を125Iで標識したタンパク質は、(E)ラジオイムノアッセイに利用される。131Iは、主に(ウ)235Uの熱中性子照射により製造され、半減期8.02日で(エ)β-壊変して主に(F)365keVのγ線を放出する。ヨウ素は加熱などの操作により気体となりやすいために、吸入などしないように取り扱いには注意する必要がある。また、131Iの約1%は半減期11.8日の放射性気体の(G)131mXeに壊変することも考慮すべき点である。
問32(反跳エネルギー(C2H5Iのホットアトム))
実務
問2からの抜粋
低エネルギーのγ(X)線を放出する125Iの場合には、薄い(エ)NaI(Tl)シンチレータを用いたサーベイメータを用いるのが有効である。
放射線取扱主任者試験では、γ線に関する問題は非常に多く出題されています。
核種では60Coや137Cs、123I、125I、51Crなどの出題頻度は高く、また40Kのγ線に関する問題もよく出題されています。これらの核種についてはγ線のエネルギーだけでなく、その用途、半減期なども覚えておきましょう。
C2H5Iのホットアトムに関する問題も過去には幾度と出題されています。
2019年度化学問32に出題された反跳エネルギーに関する問題は2015年度物化生問4Ⅰ、2005年度物化生問1Ⅰでも出題されています。化学の五肢択一式の問題でも数多く出題されています。しっかり過去問題を勉強しておくことが大切です。
また、実務(旧管理測定技術)の試験では実効線量率定数を用いた公式を利用して実効線量を求める計算問題は出題頻度が非常に高い分野です。公式を確実に暗記し自分で計算できるようにしておきましょう。関連して、γ線の遮へい、線減弱係数、質量減弱係数、半価層や1/10価層などもしっかりと理解しておきましょう。