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ホットアトム①

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
以前、11月18日の記事でα壊変する際の生成核種の反跳エネルギーについて記載しました。今日は関連事項として、(n,γ)反応におけるγ線放出時の反跳エネルギーについての記事を紹介したいと思います。
第7版放射線概論ではP.204「8.ホットアトム」の章に記載されています。

インターネットでホットアトムを調べて見ると、以下のように記載されています。
「核反応や放射線エネルギーの吸収過程で生成する原子で、反跳による運動エネルギーの獲得や異常な電子状態などのため系の平衡熱エネルギーより大きな運動エネルギーや内部エネルギーを有するものをホットアトムと呼ぶ。一般にホットアトムは過剰に有するエネルギーのため反応性に富み、熱平衡状態にある同じ原子では起こしえないような特異な反応を誘起する。ホットアトムとその反応性を研究する化学の分野をホットアトム化学と呼んでいる」
ここに書かれていますように、
ホットアトムは過剰なエネルギーにより反応性が高く、通常では起こりえないような特異な反応が起こります。

○ホットアトムで覚えておきたいこと
①ヨウ化エチル(C2H5-I)の中性子照射からの128Iの合成
中性子照射して生成したヨウ化エチル(C2H5-I)を分液漏斗に入れ水と振り混ぜると、安定ヨウ素127Iが128Iになるときに放出するγ線の反跳エネルギーによって、ヨウ素はC-I結合を切断し、水相に移行する。 
 → 127I(n,γ)128I 反応によるγ線の反跳エネルギーによるC-I結合の切断
平成17年度物化生問1
平成27年度物化生問4Ⅰ
(第7版放射線概論P.204)

②クロム酸カリウムK2CrO4の中性子照射からの51Cr(Ⅲ)+の合成

50Cr(n,γ)51Cr 反応によるγ線の反跳エネルギーにより、K2CrO4のCr(Ⅵ)が51Cr(Ⅲ)+になる。
また、K2CrO441Kも中性子照射で41K(n,γ)42Kにより半減期12時間の42Kが生成することも覚えておきたい。

カリウム40K,42K)については10月12日の記事参照
 
K2CrO4では
CrO42-は2価の陰イオンであるため陰イオン交換樹脂に吸着するが、中性子照射で生成した51Cr(Ⅲ)+42K+陽イオンであるため陰イオン交換樹脂には吸着せず溶出液として流れる。(第7版放射線概論P.179,P.209問3,4)

③ヘキサアンミンコバルト塩酸塩[Co(NH3)6]Cl3の中性子照射
ヘキサアンミンコバルト塩酸塩
[Co(NH3)6]Cl3に原子炉で中性子を照射すると、核反応でコバルト60Coが生成する際のγ線の反跳エネルギー(ホットアトム効果)により結合が切れたコバルトイオン60Co2+が水溶液中に存在する。

(第7版放射線概論P.207)

④ホットアトムの反跳エネルギーEγ[eV]
反跳原子の質量数をM、γ線のエネルギーをE[MeV]とすると、ホットアトムの反跳エネルギーEγ[eV]は、

 イメージ 1


で与えられます。
この式に関しては出題頻度が高いわけではないですが、平成17年度物化生問1Ⅰ、
平成27年度物化生問4Ⅰで出題されています。また、この式そのものではありませんが、γ線放出時の原子が受ける反跳縁ルギーの計算問題として平成19年度物理問11に関連問題が出題されています。覚えておいて良い式かと思います。

過去問題
平成17年度化学問28
平成17年度物化生問1
平成21年度化学問25
平成22年度化学問27
平成24年度化学問27
平成25年度化学問28
平成26年度化学問28
平成27年度物化生問4Ⅰ
平成29年度化学問27