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中性子線

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

今日は中性子線に関して重要事項を覚えましょう。

 

中性子

中性子線は原子力百科事典ATOMICAでは以下のように記載されています。

原子力百科事典ATOMICA>

一方向に運動している状態の中性子中性子原子核を構成する素粒子の一つで、核分裂などの原子核壊変によって原子核の外に飛び出し運動状態となる。原子核外に飛び出した中性子はランダムな方向に運動しており、広義にはそのような状態での中性子中性子線と呼ぶこともある。しかし、通常はがん治療や非破壊検査中性子ラジオグラフィ)に用いる運動方向の揃った中性子のことを指す。中性子電荷を持たず、磁力によって運動方向を変えることができないため、内壁に中性子吸収材を貼ったコリメータ等を用いて概ね一方向に運動する中性子線を得る。

中性子線の特徴として発生源や遮蔽などは放射線取扱主任者試験でも非常によく出題されていますので必ず暗記してましょう。

中性子線の発生源

241Amのα線9Beの核反応、226Raのα線9Beの核反応

     241Am-9Be 中性子線源:9Be + 4He(α線) →12C + 1n

      226Ra-9Be  中性子線源:9Be + 4He(α線) →12C + 1n

252Cfの自発核分裂

中性子線の遮蔽

・水素を多く含む物質(水やコンクリートなど)が使用される

 

自発核分裂を伴って中性子を放出する放射性核種として、放射線取扱主任者試験では252Cfが非常によく出題されます。計算問題としても過去には何度か出題があります。

252Cfは、96.9%の確率でα壊変が起こり、3.1%の確率で自発核分裂が起こります。1個の自発核分裂によりおよそ3.8個の中性子を放出し、そのエネルギーの平均値は約1MeVで、平均2-3MeVになります。

 

中性子に関係する公式

①物質との相互作用における反跳エネルギーの公式

  

②放射化分析に関する公式

   

  

①の中性子と物質の相互作用における反跳エネルギーの公式は物理の試験で非常によく出題される重要公式です。

 2021年度物理問23、2020年度物理問24、2019年度物理問22など

②の放射化分析の公式は化学の試験で出題されています。中性子照射後の生成放射性核種の放射能を計算できるようにしておきましょう。

 2021年度化学問7、2020年度化学問7、2019年度化学問31、2020年度実務問3Ⅰなど

 

令和以降の第一種試験の中性子に関する代表的な問題

2021年度

物理

問5、問12(核反応)、問22、問23(反跳エネルギー)、問31(文章問題)

化学

問7(放射化分析)、問12(241Am-9Be 中性子線源)

問32からの抜粋

33Pは、硫黄や塩素を中性子照射することで得られる。ここでは、塩素を標的とする場合を考える。塩素には、同位体存在度75.8%の35Clと24.2%の37Clがある。塩化アンモニウムNH4Clを標的として中性子で照射すると、35Clからは(B)(n, α) 反応により32Pが生成するが、同時に(C)(n, p) 反応により35S(半減期87.4日、(エ)β- 壊変)も生成する。

生物

問30(ホウ素中性子捕捉療法(BNCT))

2020年度

物理

問5、問6、問7、問10(D-D反応)、問23、問24(反跳エネルギー)、問25

問28(熱中性子の検出)、問30(速中性子の検出)

化学

問7(放射化分析)、問9、問27(ホットアトム)

実務

問3Ⅰからの抜粋

64Cuの製造には、荷電粒子や中性子を用いた核反応が使われる。中性子を利用した製造では、安定同位体64Znに速中性子を照射して(A)(n, p) 反応が、無担体の64Cuを作るのに適している。

中性子照射で生成する放射性核種の放射能は、nfσ×(B)(1-e-λt)で求めることができる。ここで、nは標的核の数、fは速中性子フルエンス率、σは中性子核反応断面積、λは生成核の壊変定数、tは照射時間である。(B)(1-e-λt) を飽和係数といい、照射時間tが生成核の半減期と等しいときは0.5となり、半減期に対して十分に短い場合には(C)λtと近似できる。

天然同位体存在度の金属亜鉛の箔(原子量65.4)654mgを速中性子フルエンス率5.0×1013cm-2・s-1で76分間照射した直後の64Cuの生成放射能A(64Cu)は、おおよそ(D)3.7×108 Bqである。この計算に必要なパラメータを下表に示す。

2019年度

物理

問6、問11、問21、問22(反跳エネルギー)、問27(中性子の検出)

化学

問24(ホットアトム)、問26(ホットアトム)

問31からの抜粋

放射線を利用した元素分析法の1つに放射化分析法がある。この方法は、核反応を利用して放射性核種を生成し、この核種からの放射能を測定することによって元素を定量する。最もよく利用される核反応は(n,γ)反応で、標的核と生成核の(A)原子番号は等しい。生成する放射性核種の多くはγ線を放出するので、エネルギー分解能の良い(B)Ge半導体検出器γ線スペクトルを得ることにより、多種類の元素を同時に定量することができる。

(n,γ)反応により生成する放射性核種の放射能Aは、次式により計算できる。

    A=Nφσ(C)(1-e-λt)・・・・・・・・・・(1)

ここで、Nは標的核の数、φは中性子フルエンス率、σは核反応断面積、λは生成核種の壊変定数、tは照射時間である。(C)(1-e-λt)は(D)飽和係数と呼ばれ、例えば、tが生成核種の半減期と等しいとき、(ア)0.5となる。

問32Ⅰからの抜粋

123Iは加速器を使って124Xeを標的とした(ア)(p, 2n)反応で生成した短寿命の123Csが123Xeに壊変し、さらに123Xeの壊変によって得られる。

(中略)

131Iは、主に(ウ)235Uの熱中性子照射により製造され、半減期8.02日で(エ)β-壊変して主に(F)365keVのγ線を放出する。

問32

中性子を吸収した原子核は、γ線を放出すると同時に(H)反跳エネルギーを得る。このエネルギーが化学結合エネルギー以上となると結合を切断して、中性子を捕獲した分子とは異なる化学形となる。1934年にSzilardとChalmersは、この核反応による化学効果を初めて発見した。

127Iの熱中性子捕獲反応で生成する128I(半減期25.0分)を考える。水に不溶な液体であるヨウ化エチルC2H5I(分子量156)3.12gを50分間熱中性子照射した場合、照射終了時の128Iの放射能は(I)1.1×105Bqとなる。ただし、熱中性子の反応断面積は6.2×10-24cm2中性子フルエンス率は2.0×106cm-2・s-1アボガドロ定数は6.0×1023mol-1とする。照射終了後、還元剤を含む水と振とうすると、生成した128Iの大部分は(オ)I-の化学形で水相に抽出されるので、高い比放射能128Iを得ることができる。

生物

問28(放射線加重係数)、問30(ホウ素中性子捕捉療法(BNCT))

実務

問1からの抜粋

高速中性子を利用する施設の中性子モニタリングでは、熱中性子に対して大きな反応断面積を有する3Heを(A)計数ガスとした円筒型比例計数管とポリエチレンなどの中性子減速材を組合せたモニターを利用することがある。3Heは、熱中性子とQ値が約764keVの(n,p)反応を引き起こし、(E)3H原子核と陽子が荷電粒子として放出される。ポリエチレンで減速された熱中性子が計数管に入射すると図に示すようなパルス波高の分布が観測される。図中の③のピークは、荷電粒子の運動エネルギーの総和の(F)100%が(A)計数ガスの中で失われた時の信号に対応し、そのエネルギーは約(ア)764keVに相当する。ピークの低エネルギー側には、荷電粒子が陰極で吸収されてエネルギーを失う(G)壁効果により図中②のような連続分布が観測される。陰極の内面近傍で核反応が起こり、陽子が(A)計数ガス中でエネルギーを失う前に陰極に到着した場合、(E)3Hの原子核の電離作用により生成された電荷のみが信号に寄与することがある。①の端部は、この時の波高に相当し、そのエネルギーは約(イ)191keVとなる。①で示した立ち上がり(100チャネル)から③のピーク右側(500チャネル)までの領域にわたって積算した計数は、熱中性子と(A)計数ガス中の3Heの(n,p)反応数に対応し、そのモニタリング対象である中性子強度とこの核反応数の間には相関関係がある。

 

本日の記事で紹介した問題は非常に重要な問題ばかりですので参考書や過去問題をしっかりと勉強しておきましょう。中性子に絡めた問題としてホットアトムや遮蔽に関する問題もよく出題されています。