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β線と物質との相互作用

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
先週まで数日にわたって、光子に関係する事項について記載してきましたので、今日はβ線について是非覚えておきたいことを書きたいと思います。

β線と物質との相互作用として、
原子核と衝突する弾性散乱
 ごくまれな確率で起こるラザフォード散乱です。
 β線では、原子核の得るエネルギーも無視されるくらい小さく、電子のエネルギー損失も無視できるほど小さいのであまり問題となることはありません。
 
   ラザフォード散乱:原子核の電場によって曲げられる弾性散乱
(今年度平成28年度の化学問26にも出題されていました)

②電子との衝突による非弾性散乱
 β線が物質中でエネルギーを失う主要な機構です。電離や励起によりエネルギーを失います。いわゆる衝突阻止能です。

制動放射
 β線のエネルギーが減少する機構のひとつで、放射阻止能です。
 制動放射とは、β線が原子の近くを通過するときに原子核又は電子のクーロン力で曲げられて放射する現象です。
 物質の原子番号の2乗に比例し、入射粒子の質量の2乗に反比例します。 
 電子での制動放射のみが問題となります。制動放射は入射粒子の質量の2乗に反比例するので、陽子線やα線制動放射は問題にはなりません

 
 電子は質量が小さいので、原子核の電場により制動を受けると大きな加速度による制動放射でエネルギーを失います。エネルギーの大きな電子ほど制動放射によるエネルギーの損失の割合は大きくなります。

衝突阻止能に対する放射阻止能の割合の式は覚えておきたいです。
放射線概論第7版P.92)
Scolを衝突阻止能、Sradを放射阻止能、Eを電子のエネルギー、Zを物質の原子番号として、

 イメージ 1 

β線は電子線の一種であり、連続エネルギーです。
・連続エネルギーのβ線はその減衰は近似的に指数関数で表せます
β線の最大飛程は最大エネルギーで決まります
β線の平均エネルギーは最大エネルギーのおよそ1/3です(第7版放射線概論P.48)
今年度平成28年度の物化生問1Ⅰではβ+線の最大エネルギーに関する問題が出題されています。

荷電粒子に関しては、阻止能や飛程が問題となります。
荷電粒子が単位長さあたりに失うエネルギー損失を阻止能といいます。

β線では、全阻止能Sは電子との衝突による阻止能(衝突阻止能)Scol原子核の電場によって強く曲げられて制動を受ける場合に制動放射を発生しエネルギーを失う放射阻止能Sradの和となります。

 イメージ 2

阻止能や飛程という言葉は荷電粒子にだけ使用される用語です。
W値(1対のイオンー電子対を生成するために必要なエネルギー)も荷電粒子にのみ使用される用語です。
W値に関しては、11月2日(W値とε値)の記事をご覧ください


阻止能や飛程については、放射線取扱主任者試験ではよく出題される重要事項ですので、また後日改めて書きたいと思います。
β線と物質の相互作用に関する問題としては物化生の過去問題をしっかり解いて理解を深めてください。

平成18年度物化生問3,4Ⅱ
平成19年度物化生問1Ⅱ
平成20年度物化生問1Ⅱ
平成22年度物化生問1Ⅰ
平成23年度物化生問2Ⅱ

平成25年度物化生問2Ⅰ,Ⅱ

平成27年度物化生問1Ⅰ,Ⅱ
平成28年度物化生問1Ⅰ
平成24年度物理問12
平成26年度物理問10,11
平成28年度物理問13