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荷電粒子と物質の相互作用

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日は風が強いですね・・・
 
本日は、α線や陽子線などの荷電粒子と物質の相互作用についての記事を紹介したいと思います。

陽子の静止エネルギー 
 イメージ 1
電子の静止エネルギー 

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よって、陽子は電子のおよそ938/0.511≒1800倍重くなります。

(平成19年度物理問2)
平成27年度物化生問1Ⅱ)

また、同様に、
α粒子は電子の(2×938+2×940)/0.511≒7300倍重くなります。
(平成19年度物化生問1Ⅱ)

(平成21年度物理問1)

参考: 11月7日の記事 原子質量単位(u)と陽子、中性子などの質量


 α線、陽子線は電子に比べて質量が大きいので、物質中で方向を変えずエネルギーを失うまで直進します。
 
 飛程の最後のところで速度が小さくなり、阻止能(単位長さあたりに失うエネルギー)は速度の2乗に反比例するのでα線、陽子線などの重荷電粒子が止まる付近で阻止能が非常に大きくなります。

イメージ 3

このグラフをブラッグ曲線といいます。
縦軸は比電離(単位長さあたりの電離数)を表し、飛程の最後に大きくなります。
ブラッグ曲線は陽子線やα線重粒子線で示します。

X線γ線、電子線、中性子線はブラッグ曲線は示しません。

α線、陽子線などの荷電粒子は、ごくまれな確率で原子核と衝突して大きな角度で曲げられることがあります(ラザフォード散乱)

α線、陽子線の質量は上述したとおり電子に比べて大きいため、
電子との散乱による曲がり方は小さく放射損失(制動放射)は無視できます。そのため、エネルギー損失は電子との衝突損失(電離と励起)で決まります。

α線、陽子線などの荷電粒子は、β線に比べて進行速度が遅いため、クーロン力を受けやすく、透過力が小さくなります。

重荷電粒子の飛程及び阻止能を表す式は是非暗記しておいてください。

飛程 R
単位は[m],[cm]または密度を掛けて[kg/m2],[g/cm2]
飛程を[kg/m2],[g/cm2]で表した値は物質にあまり依存しません。

 イメージ 4

覚え方としては、E=1/2mv2を代入して

 イメージ 5

エネルギーが分かっているときはEを含む方を、速度が分かっているときはvを含む方を用います。

阻止能 S
単位は[MeV/cm],[MeV/m]または密度で割った質量阻止能[MeV・cm2/g],[MeV・m2/kg]
質量阻止能[[MeV・cm2/g],[MeV・m2/kg]で表した値は物質にあまり依存しません。


 イメージ 6

覚え方は、飛程と同様、E=1/2mv2からv2=2E/mを代入して

 イメージ 7

飛程と同様に、エネルギーが分かっているときはEを含む方を、速度が分かっているときはvを含む方を用います。

平成17年度物理問14
平成17年度物化生問3Ⅱ
平成18年度物理問13
平成18年度物化生問3
平成19年度物理問15
平成19年度物化生問1Ⅱ
平成20年度物理問15,16
平成21年度物理問16
平成22年度物理問15
平成22年度物化生問1Ⅰ
平成23年度物理問11,12,13,14
平成24年度物理問12,22

平成25年度物理問11,12,19
平成25年度物化生問2Ⅱ
平成26年度物理問11,12
平成27年度物理問14,25
平成27年度物化生問1Ⅰ,Ⅱ
平成28年度物理問13
平成28年度物化生問2Ⅰ
平成30年度物理問14

また、β線の飛程、α線の飛程に関する以下の式も重要ですので是非覚えてください。
単位の違いに注意してください。

β線のアルミニウム中での最大飛程[g/cm2]

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遮へいを見積もる場合は、

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α線の空気中での飛程[cm]

 イメージ 11

α線のエネルギーは4-8MeV程度なので、空気中での飛程は数cmとなります。

例えば、
α線のエネルギーが5Mevのとき、飛程は3.6cm
α線のエネルギーが6.3Mevのとき、飛程は5cm
 
今年度、平成28年度の物化生問2Ⅰに以下のような問題が出題されています。
「4MeVのα線の空気中の飛程は(1)式により約(ア)cmと計算できる。また、このときの空気の密度を1.3mg・cm-3とすると、水中の飛程は(イ)µmほどしかいないことがわかる」
 
今年受験された方は正解できましたか? 正解は(ア)2.5cm、(イ)33µm