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エネルギー転移係数、エネルギー吸収係数

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
一昨日は、線減弱係数について記載しましたので、今日はエネルギー転移係数とエネルギー吸収係数についての記事を紹介します。

エネルギー転移係数とエネルギー吸収係数については、第7版放射線概論P.110の「8.4.2エネルギーの伝達」の初めに書かれている部分を是非覚えておいてください。
「光子が光電効果、コンプトン散乱、電子対生成などにより電子にエネルギーを与えると、電子は物質中で電離や励起を通して物質にエネルギーを与える。この電子が物質中を進むときに原子核などの電場などの制動を受けると制動放射を発生する。制動放射は物質外に放射されるので、物質に伝達されるエネルギーは電子に与えられたエネルギーの総和から制動放射で逃げる部分を引いたエネルギーとなる。」

エネルギー転移係数
 光電効果、コンプトン散乱、電子対生成などにより荷電粒子に与えられる(転移する)エネルギーの確率(割合)です。
入射光子のエネルギーをEγとすると、
光電効果によって転移するエネルギー(光電子に与えられるエネルギー)Eeは、
 
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ここで、δは電子の束縛エネルギー、すなわち特性X線として放出されるエネルギーです。

コンプトン散乱によって転移するエネルギー(反跳電子に与えられるエネルギー)Eeは、
 
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電子対生成によって転移するエネルギー(電子と陽電子のエネルギー和)Ee

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電子対生成は入射光子のエネルギーが電子の静止エネルギーの2倍(1.022[MeV]以上)が必要です。

光電効果、コンプトン散乱、電子対生成により電子に与えられる(転移する)総エネルギーEはこれらの和より、

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エネルギー転移係数μTRは、単位体積中の原子数をNとすると、

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線減弱係数と同様、エネルギー転移係数を密度で割ったものを質量エネルギー転移係数と言います。

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エネルギー吸収係数
 エネルギー転移係数から制動放射で逃げる割合Gを差し引いたものとなるので、
 
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エネルギー吸収係数を密度で割ったものを質量エネルギー吸収係数です。

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エネルギー転移係数、エネルギー吸収係数の単位は線減弱係数と同じで[m-1]や[cm-1]となります。質量エネルギー転移係数、質量エネルギー吸収係数の単位も質量線減弱係数と同じで[m2/kg]や[cm2/kg]となります。

これらの単位は放射線取扱主任者試験の物理の問題としてでよく出題されていますので是非覚えておいて下さい。また、線減弱係数、エネルギー転移係数、エネルギー吸収係数の大きさの順序が以下のとおりとなることも是非覚えておいて下さい。
 線減弱係数>エネルギー転移係数>エネルギー吸収係数
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 光子のエネルギーが1MeVくらいまでに小さいエネルギー領域では、制動放射で逃げるエネルギーは非常に小さいので、G≒0と考えられるので、μenTRとなります。

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過去問題としては、一昨日の「線減弱係数と半価層、1/10価層」と一緒にまとめて掲載していますので是非自分で解いてみてマスターしてください。
平成30年度物理問15
平成30年度物化生問1Ⅱ