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2020年度第一種試験問題総評 実務編

2020年度第一種試験問題総評

【実務】

難易度は例年並みかと思います。

いくつか計算問題で過去問題でも見ない問題も出題されていますが、それを取りこぼしたとしても6割は得点できる問題です。時間的には1時間45分で全問題を解くことは十分できたかと思います。

 

問1は波高分布に関する問題です。波高分布の問題は過去にも出題されており、第二種試験(2018年度管理技術Ⅰ問5)でも出題されています。全吸収ピーク、サムピーク、エスケープピークなどの用語とともに、それらに該当するピークがどのピークであるかも知っておく必要があります。主な核種、例えば 60Coや 137Csの波高分布はしっかりと見直しておきましょう。本問題ではコンプトンエッジのエネルギーを計算する問題も出題されています。コンプトンエッジに関しては、本ブログでも前回記事(2020年度実務の試験問題から②)としても取り上げました。公式を覚えていなくてもコンプトンエッジが何を意味するかを知っていれば解くことができます。是非解けるようにしておきたい問題です。

 

問2は測定値の不確かさなどの統計に関する問題です。計数値や計数率、標準偏差などの公式は必ず暗記しておきましょう。公式を覚えておけば(ア)と(イ)は正答できるはずです。統計に関する問題は苦手意識を持ちやすい分野ですが、最低限の用語の理解と公式を覚えているだけでも得点できる問題は結構ありますので、基礎はしっかりと勉強しておきましょう。(ウ)や(エ)は少し難しく感じたかもしれません。今後も出題される可能性もありますので、この機会に解き方をマスターしておきたいですね。本問題のW(σ)=0.68、W(2σ)=0.95、W(3σ)=0.997の値は覚えておきたい値です。2008年度の管理測定技術問2Ⅰではこの値が問われています。

 

問3のⅠは核反応に関する問題、中性子放射化分析に関する問題です。中性子放射化分析に関しては重要公式があります。確実に暗記して使えるようにしておくことが大切です。同様の問題は物化生の化学の分野でよく出題されていますので、過去問題をしっかりと解いておくことが大切です。(B)や(C)は2008年度物化生問4Ⅰ、2012年度物化生問4Ⅱ、2016年度物化生問4Ⅱなどで同様の問題が出題されています。

Ⅱは放射性同位元素の取扱いに関する問題で、実務(過去の管理測定技術)の試験では非常によく出題される分野です。ピンセットやトングの使用、アクリル板のついたて、コールドランといった用語も過去問題で出題されている内容です。必ず押さえておきましょう。クロロ錯体形成に関しては化学の分野で重要です。これも過去の物化生の問題をしっかり解いておけば対応できる問題です。後半の実効線量の計算問題も実務(過去の管理測定技術)の試験では毎年のように出題されている出題頻度の高い分野です。公式をしっかり覚え、単位に気を付ければ難しい問題ではありません。半価層の計算も含めて必ず解けるようにしなくてはならない問題です。

 

問4は放射性同位元素の空気中濃度、排気中濃度、排水中濃度に関する問題です。別表第2から該当する数値を選び、計算間違いをしなければ、それほど難しい問題ではありません。捕集に関しては、トリチウムヨウ素、粒子状放射性物質などが頻繁に出題されていますので、過去問題をしっかり解いておきましょう。排水中の濃度についても本試験ではよく出題されています。本ブログでも解説していますので読んでみて下さい。(排液中の放射性物質の濃度

 

問5のⅠは放射線被ばくの管理に関する問題です。物理的半減期、生物学的半減期、有効半減期に関しては基本事項ですので、公式と合わせて定義もしっかりと覚えておいて下さい。(A)の有効半減期の公式、(C)のトリチウム半減期、(D)の有効半減期の計算問題は確実に得点しなければなりません。

Ⅱの(F)、(G)で問われている預託線量の評価期間は基本事項です。成人や幼児に関してはしっかり覚えておきましょう。また、職業被ばく、一般公衆被ばくの線量限度はしっかり暗記しておかなくてはなりません。(H)は問4同様、別表第2を利用する計算問題ですが、計算間違いさえしなければ正答できる問題です。別表第2の意味をしっかりと理解しておきましょう。

 

問6のⅠはがん治療とヨウ素に関する問題です。ヨウ素放射線取扱主任者試験において最もよく出題されている核種のひとつです。131I 以外にも 123I、125I など重要な同位体がいくつかありますので、エネルギー、半減期、特徴などを確実に暗記しなくてはなりません。(B)は先日のブログでも記事にしました。(2020年度実務の試験問題から)近年はこの種の問題が非常に頻繁に出題されていますので、是非解き方を覚えて下さい。(C)のような問題は過去問題でも見かけていませんので難しかったかもしれません。

Ⅱは内部被ばく時の核種の集積部位、また内部被ばく時における対処法に関する問題です。核種の臓器親和性に関しては今年度の生物の試験問12でもボーンシーカーの問題が出題されています。主要な核種の集積部位はしっかり覚えておきましょう。また、プルシアンブルーやDTPAも過去問題ではよく出題されています。放射性物質を吸入した場合の対応として、よく出題されるキレート剤や結合剤などはその特徴を覚えておきましょう。