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2020年度第一種試験問題総評 生物編

2020年度第一種試験問題総評

【生物】

難易度は例年通りかと思います。

五肢択一式の問題では、問9、10、11、24、25などは難しい問題かと思いますが、それ以外は過去問題でもよく出題されている問題です。文章問題では問31は全て最近の物化生の類似問題ですので、過去問題をしっかりと解いておけば7割は得点できたはずです。

総合的には合格基準点の6割は得点したい問題です。

 

問1は例年、標識化合物の問題が出題されています。核医学で使用される核種やPET核種などは過去にも幾度と出題されていますので過去問題を勉強していれば得点できる問題です。

問2も標識化合物に関する問題です。これも毎年出題されています。DNAの合成、RNAの合成、タンパク質の合成などに使用される標識化合物は確実に覚えておきましょう。

問3、問4、問5はγ線急性全身被ばくに関する問題です。線量と症状の関係、発症までの期間などは暗記しておく必要があります。放射性宿酔から骨髄死、腸死などは過去問題で幾度と出題されています。また、被ばく後の末梢血中の変化については毎年のように出題される分野です。各血球の変化を表す図をおおまかでも自分で描けるようにしておくとよいでしょう。

問6は原爆被爆者の疫学調査に関する問題です。過剰相対リスクなども過去問題ではよく出題されています。定義をしっかりと覚え、過去問題を解いて考え方を理解しておくことが大切です。

問8、問9は自然放射線や人工放射線に関する問題です。自然放射線量は変化するものなので、できるだけ最新の情報で数値は覚えておきましょう。古い過去問題と最近の過去問題とでは正答が異なる場合もありますので注意が必要です。問9は、詳細な知識が必要な難しい問題だったかと思います。

問10は実効線量を求める計算問題です。過去の物化生ではこのような問題も出題されたことがあったかと思いますが、生物の試験では珍しいかもしれません。難しい問題ではありませんので計算の仕方をしっかり覚えておきましょう。

問11は食品中に含まれるカリウムの量を知らないと解けない問題ですね。勘に頼るしかありません

問12は臓器親和性に関する基本問題です。試験で最もよく出題される骨親和(向骨性)性核種(ボーンシーカー)核種に関する問題です。過去問題でも幾度と出題されています。

問13は直接作用、間接作用は問題です。生物の問題では毎年のように出題されている分野です。間接作用の修飾効果も非常に出題頻度の高い分野ですので確実に覚えておきましょう。問14が修飾効果に関する問題です。

問15は活性種に関する問題で、第一種試験では化学、生物の課目で過去にもよく出題されています。ヒドロキシルラジカル、水素ラジカル、スーパーオキサイドラジカル、水和電子などをしっかり押さえておきましょう。

問16はDNA損傷に関する問題です。DNA損傷やその修復に関する問題も毎年必ず出題されている分野です。細胞周期や周期毎の感受性などと合わせて覚えておくとよいでしょう。

問17は生殖腺の放射性障害の中で精巣に関する問題です。精子形成過程における放射線感受性や突然変異の感受性についてはよく出題されています。セルトリ細胞については2018年度生物問13でも出題されています。

問18のアポトーシスも頻出問題です。過去問題に同様の問題が出題されています。

問19、問20の染色体異常も重要問題です。問19に関しては、異常が染色体型か染色分体型かは文章問題でも頻繁に出題されています。細胞周期と合わせて理解しておきましょう。問20の安定型、不安定型もよく出題されています。がんの原因となるもの、線量推定に用いられるものなど確実に暗記しておきましょう。

問21で出題されている線量率効果やブラッグピークも重要事項です。がん治療と合わせて理解しておきましょう。線量率効果は問22の細胞生存率曲線にも関連してきますので合わせて勉強しておくと良いでしょう

問23の胎内被ばくも毎年出題されています。着床前期、器官形成期、胎児期の時期、特徴などはしっかりと覚えておきましょう。

問24は難しかったかもしれません。毛細血管の閉塞に関しては2015年度生物問15でも出題されています。

問25、問26は遺伝的影響、倍加線量に関する問題です。遺伝的影響については生物の試験で毎年出題されていますので、過去問題をしっかりと解いておけば正答できるかと思います。問26の倍加線量を求める計算問題は過去には出題されたことはないのではないでしょうか。なかなか良い問題かと思います。解き方をしっかりとマスターしておきましょう。

問27の毛細血管拡張性運動失調症は放射線取扱主任者試験では、択一問題、文章問題ともに非常によく出題されています。近年では昨年の2019年度生物問32で文章問題や2017年度物化生問5Ⅲで出題されています。過去の物化生の問題も解いておくと良いでしょう。

問28は線エネルギー付与(LET)に関する問題です。高LET放射線、低LET放射線についてはその特徴を覚えておきましょう。細胞生存率曲線やブラッグピーク、また問29で出題されているRBEなどとも合わせて勉強しておきましょう。

問30はがん治療に関する問題です。がん治療に用いられる放射線の特徴、放射性核種については代表的なものは暗記しておくことが大切です。

 

問31のⅠは2017年度物化生問5Ⅰや2016年度物化生問6Ⅰの類題で、Ⅱは2017年度物化生問5Ⅱや2016年度物化生問6Ⅲ、Ⅳの類題です。Ⅲは2018年度物化生問6Ⅱの類題です。近年は生化学に関する問題が多く出題され、DNAを構成する塩基の構造式は暗記しておく必要があります。また、Ⅲのタンパク質合成における塩基の配列やアミノ酸に関する問題は2018年度に出題されていますので過去問題をしっかり解いて試験に臨んだ人は正答できたかと思います。今後も同様の問題は必ず出題されますので、このような問題は解けるようにしておくことが大切です。

 

問32は細胞周期と細胞死に関する問題です。細胞周期に関する問題では損傷と修復も必ずセットで問われますので、合わせて勉強しておくことが大切です。細胞死では、間期死や分裂死の特徴、またアポトーシスネクローシスなどの用語もしっかりと押さえておきましょう。

 

生物の試験では、数年前からDNAの構造やタンパク質など生化学の問題がよく出題されるようになってきました。基本的な生化学に関する勉強を行うとともに、過去5~7年間分の生物の文章問題(物化生含む)の過去問題は必ず解いておかなくてはなりません。また、従来から出題されている細胞周期や修復、骨髄死や腸死などの急性放射線被ばくなどの問題は今後も出題されるかと思いますので、過去問題はできることなら7~10年間分を解いておくとほとんどの問題は網羅できるはずです。