放射線取扱主任者試験に合格しよう!

資格取得を目指す皆さんを応援します

放射性同位元素の輸送に絡めた問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も第7版放射線概論の章末の演習問題を掲載します。
管理測定技術の分野から管理技術14章「放射性同位元素等の運搬」の章末問題の問1(P.603)です。

法令で定められている放射性同位元素の輸送に絡めながら、線量率定数を用いた線量率の計算問題です。先週7月6日に紹介した記事(実効線量率定数を用いた被ばく線量の問題)に関連する問題です。これも管理測定技術の試験で出題されていますので自分で計算できるようにして下さい。


問1 事業所内で点線源のヨウ素131(131I)を運搬する場合を考える.最小サイズの運搬容器を用いた場合,遮へい材がないとすると,最大(1)77MBqの131Iを運搬できる.各辺1mの立方体の容器を用いた場合には,運搬できる量は最大(2)3462MBqとなる.
なお,事業所内運搬に用いる容器は各辺が10cm以上の直方体であること,線量率は容器表面で2mSv・h-1以下,容器より1mの距離で100μSv・h-1以下であること等の基準が定められている.131Iの1cm線量当量率定数は0.065μSv・m2・MBq-1・h-1である.
事業所外へ運搬する場合,表面から131Iまでの最短距離を20cmとして,遮へい材を使用しないとすると,約(3)3.08MBq以下の131Iであれば表面の1cm線量当量率が(4)5μSv・h-1以下なので,L型輸送物として運搬できる.


(1)
放射性同位元素を事業所内で運搬する場合、問題文にも記載されていますが各辺が10㎝以上の直方体の容器に封入することが必要です。第7版放射線概論ではP.600に記載されています。
線量率は容器表面で2mSv・h-1以下であること、また容器から1mの所で100μSv・h-1以下であるこが定められています。
本問題では最小サイズの容器を用いた場合と記載されているので、各辺が10cmの直方体の容器を使用しその真ん中に点線源の131Iを置いた場合で考えてみます。

 イメージ 1

131Iの放射能をQ[MBq]とすると点線源の131Iから容器表面までの距離は5㎝となるので、その容器表面での線量率は以下の式となります。

 イメージ 2

この線量率が2mSv・h-1以下であることが必要であるので

 イメージ 3

この式からQ[MBq]を求めると以下のようになります。

 イメージ 4

この場合、容器から1m(131Iの点線源からは1.05m)の場所での線量率を求めてみると、

 イメージ 5

となり、容器から1mの場所での線量率が100μSv・h-1以下という条件も満たします。

(2)
各辺が1mの立方体の容器を使用した場合は131Iから容器表面までの距離は50㎝となるので、容器表面での線量率は

 イメージ 6

この線量率が2mSv・h-1以下であるためには

 イメージ 7

よって、Q[MBq]は

 イメージ 8

となります。
では、この場合、容器から1m(131Iの点線源からは1.5m)である所の線量率を計算すると

 イメージ 9

となり、容器から1mの場所で100μSv・h-1以下という条件を満たすことができません。
そのため、容器表面での線量率が2mSv・h-1以下となる条件ではなく、容器から1m(131Iの点線源からは1.5m)の場所で100μSv・h-1以下になる条件を用いてQ[MBq]を求めなくてはなりません。

 イメージ 10

この式からQ[MBq]を求めると以下のようになります。

 イメージ 11

(3)
事業所外に運搬する場合は、容器表面の1cm線量当量率が5μSv・h-1以下であればL型輸送物として取り扱うことができます。
131Iの放射能をQ[MBq]として点線源の131Iから容器表面までの最短距離が20㎝とすると、遮へい材がない場合の容器表面での1cm線量当量率は以下の式のようになります。

 イメージ 12

この線量率が5μSv・h-1以下であるためには

 イメージ 13

よって、Q[MBq]は

 イメージ 14

となります。
問題(1)のように小さな容器では容器表面での線量率が2mSv・h-1以下という条件を満たせば、容器から1mの場所での線量率も100μSv・h-1という条件も満たすことができます。しかし、容器サイズが大きくなると、容器表面での線量率が2mSv・h-1以下という条件を満たしても容器から1mの場所での線量率が100μSv・h-1という条件を満たすことができないこともあります。その場合は容器から1mの場所での線量率が100μSv・h-1という条件を満たすように計算をすることが必要です。

放射性同位元素の輸送に関しては、日本アイソトープ協会のHPガイドラインとしてまとめた資料があります。
 アイソトープ輸送ガイド(2014年4月改訂版) 

一度目を通してみると良いかもしれません。