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イオン交換樹脂について

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
一昨日は放射性核種の分離においてキレート剤の記事を紹介しましたので、今日はイオン交換樹脂に関する記事を紹介したいと思います。

イオン交換樹脂とは(ATOMICAより)
イオン交換の能力をもつ不溶性の合成樹脂をいう。樹脂は化学的に不活性な部分の樹脂基体とイオン交換基の部分からできている。樹脂の分類は、一般的に樹脂基体による分類(スチレン系、フェノール系、脂肪族系、ピリジン系など)と交換基による分類(陽イオン、陰イオン交換、両性樹脂)がある。使用する樹脂はこの両分類により指定できる。樹脂の使用に際しては、膨潤や予備平衡の操作、再生操作などを行う必要がある。
イオン交換樹脂を使った分離はその名の通りイオン交換によって行われます。
イオン交換樹脂は物理的な吸着とは異なり、あらかじめ樹脂に吸着しているイオンと吸着させたいイオンを交換されることで、樹脂に吸着させたいイオンが吸着される代わりに、もともと樹脂に吸着していたイオンが溶出します。
 
陽イオン交換樹脂では予め吸着しているイオンは陽イオン(スルホン基、カルボキシル基など)で、吸着させたいイオンも陽イオン(Na+,Mg2+,Ca2+など)になります。
イメージ 1
 
陰イオン交換樹脂では予め吸着しているイオンは陰イオン(アミノ基などの塩基性基)で、吸着させたいイオンも陰イオン(OH-,SO32-など)になります。
イメージ 2
 
一般的なイオンの吸着の強さ(選択性)は、価数が高いイオン程大きくなります。
 Na+ < Ca2+ < Al3+ < Th4+
また、イオンの価数が同じ場合には原子番号が大きいもの程大きくなります。
 Li+ < Na+ < K+ <Rb+ < Cs+、  Mg2+ <Ca2+ < Sr2+ <Ba2+


平成30年度(2018年度)の管理測定技術問4Ⅱでは以下の問題が出題されました。
水素型にした陽イオン交換樹脂を加えても、(M)⑥は吸着しない。また、吸着するイオンのうち、陽イオン交換樹脂への吸着強度は(N)⑤が最も大きい。
陽イオン交換樹脂への吸着強度は上述の通り、価数が高いイオン程大きくなるので④Na+、⑤Ca2+、⑦Cs+の中では⑤Ca2+が最も大きくなります。

 
また、以下のことも覚えておくと良いですね。
クロム酸カリウム中のクロム酸は陰イオンであるため陰イオン交換樹脂に吸着されますが、クロム酸カリウム中性子照射することでホットアトムにより生成した51Cr3+や42K+陽イオン交換樹脂に吸着されます。
(平成21年度管理測定技術問3Ⅲ、平成25年度化学問28、平成26年度化学問28参照)
 
クロロ錯体を形成する金属イオンは陰イオン交換樹脂に吸着されることもよく試験に出題されています。
 
平成22年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問4Ⅲからの抜粋
(H)陽イオン交換樹脂充填カラムを使う方法では、0.2mol・L-1硝酸中では、Fe3+の方がCo2+より樹脂に吸着しやすいことを利用して、カラムに59 Fe3+を吸着させてCoと分離する。(I)陰イオン交換樹脂を用いて分離する方法では、0.5mol・L-1塩酸溶液中でFe3+のみが(J)クロロ錯イオンを形成する性質を利用して分離を行う。また、8mol・L-1の塩酸溶液からの溶媒抽出では、(K)Feだけを選択的に(L)ジイソプロピルエーテルに抽出することができる。
平成22年度第一種放射線取扱主任者試験管理測定技術問4Ⅰからの抜粋
137Cs水溶液を30分以上放置すると、137Csと137mBaは(E)永続平衡に達する。137Csは(F)アルカリ金属137mBaは(G)アルカリ土類金属に属する。陽イオン交換樹脂へ吸着する強さは、Csに比べBaの方が(H)強い。このため、137Csを吸着させた陽イオン交換樹脂カラムにpH3.5の酸性溶液を通すと、(イ)137Csが先に溶出する。
平成24年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問4Ⅲからの抜粋
また(Q)亜鉛の方がクロロ錯体を形成しやすいことを利用して、(R)陰イオン交換樹脂を使って亜鉛を捕集するのも1つの方法である。
平成25年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問3Ⅱからの抜粋
一例として、Cu2+、Ni2+、及びZn2+を含む6mol・L-1塩酸溶液試料中のZn2+を直接希釈法で定量する。この試料溶液に、10mgの65Zn2++Zn2+(比放射能15.0kBq・mg-1)を加え、十分混合して均一にした。この溶液の一部をとり、6mol・L-1塩酸で前処理した(K)陰イオン交換樹脂カラムに通す。これらの金属イオンは塩化物イオンとクロロ錯体を生成すると陰イオン交換樹脂カラムに吸着される。
平成26年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問4Ⅱからの抜粋
イオン交換樹脂は、イオン交換基をもつ高分子であり、水溶液中のイオンと樹脂自身に吸着しているイオンを交換する。イオン交換樹脂が水溶液中のイオンを吸着する強さがイオンによって異なり、この性質を利用してイオンを分離することができる。例えばスチレン-ジビニルベンゼン共重合体を高分子骨格とし、(C)-SO3H基をイオン交換部位として持つ強酸性陽イオン交換樹脂では、+1価イオンの樹脂への吸着強度は(D)Li+<Na+<K+<Rb+であり、水和イオン半径が小さいものほど強い。また、価数が異なるイオンに対しては、一般に(E)+1価<+2価<+3価という傾向がある。
(中略)
一方、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて塩化物イオンとの錯形成能の違いを利用して分離することができる。強塩基性陰イオン交換樹脂カラムに、Fe3+、Co2+、Ni2+を含む9mol・L-1塩酸溶液を1.0mL、その後9mol・L-1、4mol・L-1、0.5mol・L-1の濃度の塩酸を順次12mLずつ流して各イオンを分離すると右図のようになった。塩化物イオンとの錯形成能の強さは(G)Fe3+>Co2+>Ni2+の順であり、a、b、cのピークは左から順に、(H)Ni2+、Co2+、Fe3+であった。
平成28年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問3Ⅱからの抜粋
イオン交換法も放射化学分離法としてしばしば利用される。イオン交換樹脂を用いる方法が一般的である。この場合、固体-溶液間のイオン性化学種の分配平衡を利用している。陽イオン交換樹脂ではスルホン酸基を持つ強酸性イオン交換樹脂と(N)カルボキシル基を持つ弱酸性イオン交換樹脂がある。陰イオン交換樹脂では(O)第4級アンモニウム基を持つ強塩基性イオン交換樹脂と、弱塩基性イオン交換樹脂がある。対象とする放射性核種の溶存状態やpHなどから適切なイオン交換樹脂を選んで使用する。
過去問題
平成17年度化学問23
平成17年度物化生問2Ⅰ
平成19年度物化生問4Ⅰ
平成20年度管理測定技術問3Ⅰ,問4Ⅲ
平成21年度化学問20
平成21年度管理測定技術問3Ⅲ
平成22年度物化生問4Ⅲ
平成22年度管理測定技術問4Ⅰ
平成24年度物化生問4Ⅲ
平成25年度化学問28
平成25年度物化生問3Ⅱ
平成26年度物化生問4Ⅱ
平成26年度化学問28
平成27年度化学問18
平成28年度化学問21
平成28年度物化生問3Ⅱ
平成29年度化学問19
平成29年度物化生問4Ⅱ
平成30年度管理測定技術問4Ⅱ