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2019年度化学の試験問題 化学分離

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

今日は2019年度の化学の文章問題を題材に記事を書きたいと思います。

2019年度の化学問31の問題では化学分離に関する問題が出題されました。


2019年度化学問31

(略)

化学分離には、沈殿法、溶媒抽出法、イオン交換法などが利用される。沈殿法は、種々のイオンが溶解している溶液から、目的イオンだけを(G)の小さい化合物に変え、沈殿させて分離する方法である。この際、本来は沈殿しない目的外の微量なイオンが沈殿に取り込まれることがある。この現象を(H)という。(H)を防ぐには、前もって(I)を添加しておくとよい。

(略)

一方、溶媒抽出法とイオン交換法は、2つの異なる相の間で元素が(J)される現象を利用した分離法で、トレーサー量の元素に対しても適用可能である。


 

放射線取扱主任者試験でよく出題される化学分離としては、問題文中にある溶解度積や溶媒抽出法、イオン交換法があります。

 

〇溶解度積

難溶性の塩の飽和溶液における陽イオンと陰イオンの濃度積であり、イオンの沈殿条件を定めるのには重要な指標となる。濃度の積が溶解度積よりも大きいと沈殿が生成する。

「溶解度積が小さいものほど沈殿が生成しやすいので沈殿による分離に向いている」

このことは暗記しておきましょう。

2007年度の第一種試験化学問22でも出題されています。
2007年度第一種化学問22
C 沈殿分離では、生成する塩の溶解度積が小さい反応が選ばれる。(正)

 

〇溶媒抽出法

溶媒抽出法は放射性同位元素を分離・精製する手段のひとつで、互いに混じり合わない二液間、通常は有機相と水相における分配の差を利用して分離・精製する方法をいう。

溶媒抽出法では重要な公式があります。

放射線取扱主任者試験では溶媒抽出法に関する計算問題がよく出題されています。以下の公式を暗記しておけば解ける問題ばかりですので必ず暗記しましょう。

 

①分配比Dを求める公式
分配比Dとは有機相と水相への放射性核種の分配を示す数値で、Dの値が大きいほど有機相に多く抽出される。分配比Dは以下の式で表される。

 イメージ 1

 CO有機相中の放射性核種の全濃度
 CW:水相中の放射性核種の全濃度

②抽出率Eを求める公式
抽出率Eとは有機相にどれだけの放射性核種が抽出されたかを示す数値で以下の式で表される。
   
 イメージ 2

 D:分配比
 VO有機相の容量
 VW:水相の容量

〇イオン交換法

イオン交換樹脂に関する問題が出題されています。

イオン交換樹脂を使った分離はその名の通りイオン交換によって行われます。イオン交換樹脂は物理的な吸着とは異なり、あらかじめ樹脂に吸着しているイオンと吸着させたいイオンを交換されることで、樹脂に吸着させたいイオンが吸着される代わりに、もともと樹脂に吸着していたイオンが溶出します。
イオン交換樹脂(出典 原子力百科事典ATOMICA)
イオン交換の能力をもつ不溶性の合成樹脂をいう。樹脂は化学的に不活性な部分の樹脂基体とイオン交換基の部分からできている。樹脂の分類は、一般的に樹脂基体による分類(スチレン系、フェノール系、脂肪族系、ピリジン系など)と交換基による分類(陽イオン、陰イオン交換、両性樹脂)がある。使用する樹脂はこの両分類により指定できる。樹脂の使用に際しては、膨潤や予備平衡の操作、再生操作などを行う必要がある。

陽イオン換樹脂では予め吸着しているイオンは陽イオン(スルホン基、カルボキシル基など)で、吸着させたいイオンも陽イオン(Na+,Mg2+,Ca2+など)になります。また、陰イオン交換樹脂では予め吸着しているイオンは陰イオン(アミノ基などの塩基性基)で、吸着させたいイオンも陰イオン(OH-,SO32-など)になります。

 
イオン交換ではありませんが、
放射線取扱主任者試験ではキレート剤についてもよく出題されていますので覚えておく必要があります。
キレート剤(出典 原子力百科事典ATOMICA)
金属イオンに配位してキレート化合物(一種の環状化合物)をつくる多座配位子をいう。キレート試薬又はキレート形成剤とも呼ぶ。種類、用途はきわめて多様である。一般には、可溶化、安定化作用を利用して溶液の調整に利用される。また、特定の金属と特異的に結合する性質を持つものは沈降剤、金属回収等に用いられる。医療分野では、体内に吸収された放射性核種、毒物元素と結合して、組織内から体外へ排出させるキレート剤療法に利用される。また、放射能の除染剤として、キレート剤が使用されることがある。
キレート剤としてはEDTA(エチレンジアミン 四酢酸)が最もよく知られています。

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EDTAは通常エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(EDTA-2Na) として使用され、水によく溶ける性質から金属イオンと水溶性のキレート錯体を形成します。イメージ的にキレート剤の分子構造はカニのハサミのような形をしており、そのハサミの部分が金属イオンを包み込むようにして封鎖します。

 

過去の試験では化学分離に関する問題が数多く出題されています。

今後も出題されると思いますが、過去問題を解いておけば十分対応できる分野ですのでしっかりと勉強しておいて下さい。

特に溶媒抽出法の計算問題は出題頻度の高い分野ですので、過去問題を解きながら公式の使い方を覚えていきましょう。公式さえ使いこなせるようになれば、正答できる問題ばかりです。