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キレート剤について

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今年も最後の月になりました。
予報では今年の冬は暖冬とのことですが、その予報通り12月に入っても今のところ寒さをあまり感じません。ただ、今週末からは寒気が入ってきて気温も下がるとのことですので、体調管理に気を付けて下さい。
今日はキレート剤についての記事を掲載したいと思います。
 
キレート剤とは(ATOMICAより)
金属イオンに配位してキレート化合物(一種の環状化合物)をつくる多座配位子をいう。キレート試薬又はキレート形成剤とも呼ぶ。種類、用途はきわめて多様である。一般には、可溶化、安定化作用を利用して溶液の調整に利用される。また、特定の金属と特異的に結合する性質を持つものは沈降剤、金属回収等に用いられる。医療分野では、体内に吸収された放射性核種、毒物元素と結合して、組織内から体外へ排出させるキレート剤療法に利用される。また、放射能の除染剤として、キレート剤が使用されることがある。
キレート剤としてはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)が最もよく知られています。
 
イメージ 1
 
EDTAは通常エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(EDTA-2Na) として使用され、水によく溶ける性質から金属イオンと水溶性のキレート錯体を形成します。イメージ的にキレート剤の分子構造はカニのハサミのような形をしており、そのハサミの部分が金属イオンを包み込むようにして封鎖します。
 
キレート剤としてはジチゾンなどもあります。
ジチゾンは有機試薬で水やエタノールにはほとんど溶けませんが、有機溶媒にはよく溶けるため、ベンゼンクロロホルムなどの有機溶媒に溶解させ用いられます。このジチゾン溶液を金属イオンを含む水溶液と振り混ぜると、金属イオンはジチゾン塩として有機相に抽出されます。カドミウム、銀、水銀、銅、亜鉛、鉛などの重金属イオンと反応して、水に溶けにくいキレート錯体を生成するので重金属イオンの検出、分離に用いられます。
また、目的以外の金属イオンがキレート化合物と反応しないように加えるものをマスキング剤といいます。一緒に覚えておきましょう。


今年度、平成30年度(2018年度)の物化生問4Ⅱでは以下の問題が出題されました。
このような平衡状態にある核種の混合水溶液から特定の核種を分離する方法の一つに溶媒抽出法がある。この例では、(M)のようなキレート形成剤を使うことによって、弱酸性水溶液から212Biを有機相に選択的に分離抽出することができる。
問題文に「212Biを有機相に選択的に分離抽出することができる」と書かれてありますのでEDTAは誤りです。有機相に抽出できるキレート剤はジチゾン(ジフェニルチオカルバゾン)が正解になります。

EDTAは水溶液に抽出、ジチゾンは有機溶媒に抽出するキレート剤であることは覚えておきましょう。
溶媒抽出法やイオン交換樹脂、キレート剤など放射性核種の分離に関する問題は放射線取扱主任者試験でもよく出題されている分野ですので、放射線概論や過去問題でしっかりと勉強しておきましょう。
公益財団法人日本アイソトープ協会が発行しているIsotope Newsの記事から参考になる記事を以下に示します。
 
”今こそ復習!”主任者の基礎知識─「もっと基礎を,ここが肝」編─
 
過去問題
平成19年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問4Ⅱからの抜粋
通常は有機相への抽出を増すために(B)HDEHP等の抽出剤を有機相に加える。
平成26年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問4Ⅲからの抜粋
金属イオンは、有機溶媒にほとんど溶けないが、有機溶媒への溶解度を高める(J)キレート化剤と結合させることによって金属イオンの水溶液から有機溶媒への抽出が行われる。一般的にこのようなキレート化剤は(K)弱酸であるために、抽出効率は水溶液の(L)pHに大きく依存する。複数のイオンの混合水溶液から特定のイオンを有機溶媒へ抽出する場合には、目的イオン以外のイオンの水溶性を高める(M)マスキング剤が用いられる。
平成28年度第一種放射線取扱主任者試験物化生問3Ⅱからの抜粋
液体-液体間の放射性核種の分配平衡を利用した分離法としては溶媒抽出法がある。水溶液中に電気的に中性な分子を形成させ、これが有機溶媒中に移動することで抽出が進行する。キレート抽出とイオン会合体抽出に大別される。キレート抽出試薬には(J)ジチゾンやβ-ジケトンのトリフルオロアセチルアセトンなどがある。特定の金属イオンと錯イオンを形成しやすい(K)EDTAやCN-などを(L)マスキング剤として添加することにより、水相に特定の成分を保持することもしばしば行われる。イオン会合体抽出の例としては、濃塩酸溶液からのFe3+の(M)ジイソプロピルエーテルによる抽出が知られている。