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溶媒抽出法

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

前回はリン酸トリブチルに関する記事を掲載しましたが、その中で「溶媒抽出法は非常に重要ですので過去問題でしっかり勉強しておきましょう」と記述しました。

第一種放射線取扱主任者試験では溶媒抽出法に関する計算問題がよく出題されています。試験に出題される溶媒抽出法の計算問題は2つの公式を暗記しておけばほとんどの問題は解くことができます。

今日は溶媒抽出法で必ず暗記しておかなくてはならない2つの公式について書きたいと思います。しっかりと覚えて使えるようにしましょう。

 

溶媒抽出法は放射性同位元素を分離・精製する手段の1つで、互いに混じり合わない二液間、通常は有機溶媒(有機相)と水溶液(水相)における分配の差を利用して分離・精製する方法をいいます。

 

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①分配比Dを求める公式
分配比(一般的にDで表す)とは有機相と水相への放射性核種の分配を示す数値で、Dの値が大きいほど有機相に多く抽出されます。分配比Dは以下の式で表されます。

 イメージ 1
 (この式は暗記しましょう

 CO有機相中の放射性核種の全濃度
 CW:水相中の放射性核種の全濃度

②抽出率Eを求める公式
抽出率(一般的にEで表す)とは有機相にどれだけの放射性核種が抽出されたかを示す数値で以下の式で表されます。
   
 イメージ 2 (この式は暗記しましょう

 D:分配比
 VO有機相の容量
 VW:水相の容量

通常は有機相と水相の容量は等しい場合が多いので、VO=VWより、

 イメージ 3 (この式は暗記しましょう

 

実際の試験では分配比や抽出比に関する計算問題が多く出題されています。
分配比、抽出比の定義をしっかりと理解していれば難しい問題ではありませんので、必ず過去問題を繰り返し解くことで自分で解けるようにして下さい。
溶媒抽出法における分配比や抽出比は、定義の文章や公式だけ見ていてもイメージできないかと思いますので、実際の過去問題を解く方がより理解しやすくなります。
 
2014年度第一種試験物化生問4Ⅲは良問ですので、この問題を解きながら溶媒抽出法における分配比や抽出比というものを理解して下さい。
2014年度第一種試験物化生問4Ⅲ
溶媒抽出法も微量の放射性物質を分離するときにしばしば用いられる。溶媒抽出では2種類の互いに溶解しない溶媒に対する溶質の溶解性の違いを利用して分離又は抽出を行う。
実際の分離抽出では、分配比
D=C2/C1     (3)
が重要である。ここで、C1は注目する核種の溶媒1における濃度、C2は溶媒2における濃度である。
平衡状態に達したときの溶媒2への抽出率E(%)は、使用する溶媒1、2の体積をそれぞれV1、V2として、
E(%)=(I)×100     (4)
と表せる。例えば、V1=V2でD=20のときE=(エ)%となる。
一般にも目的核種を抽出する場合、使用する溶媒の体積は同じである必要はない。上と同じ抽出を、溶媒2を一度に全量使うのではなく、3回に分けて抽出操作をする場合を考える。つまり溶媒2をV2/3使って抽出し、溶媒1、2を分液ロートで分離する(抽出1)。次に溶媒1に対して新しいV2/3量の溶媒2を使って再び抽出する(抽出2)。さらに残りのV2/3量の溶媒2で抽出をもう一回繰り返す(抽出3)。この一連の操作での抽出について、抽出1での抽出率E1は(オ)%である。抽出3まで行うと、溶媒1に残っている目的核種は(カ)%となる。一般に抽出に用いる溶媒を一度に用いるよりも多数回に分けて用いたほうが、操作全体での抽出率は大きくなる。
金属イオンは、有機溶媒にほとんど溶けないが、有機溶媒への溶解度を高める(J)と結合させることによって金属イオンの水溶液から有機溶媒への抽出が行われる。一般的にこのような(J)は(K)であるために、抽出効率は水溶液の(L)に大きく依存する。複数のイオンの混合水溶液から特定のイオンを有機溶媒へ抽出する場合には、目的イオン以外のイオンの水溶性を高める(M)が用いられる。
 
最近出題された溶媒抽出法の過去問題をいくつか掲載します。
2019年度第一種試験化学問31
化学分離には、沈殿法、溶媒抽出法、イオン交換法などが利用される。
(中略)
一方、溶媒抽出法とイオン交換法は、2つの異なる相の間で元素が(J)される現象を利用した分離法で、トレーサー量の元素に対しても適用可能である。
2018年度第一種試験物化生問4Ⅱ
(前略)
一般的に抽出効率は抽出剤の選択性や溶媒の使用量に大きく依存する。水相:有機相の体積比が1:1のときに、放射性核種の水相/有機相の放射能比が0.10となるような抽出を考える。水相にある100kBqの放射性核種に対して、水相の4倍の体積の有機相で2回抽出を行うと、水相には、(ウ)Bqが残る。
208Tlを水相から有機相に選択的に分離するには、Fe(Ⅲ)に用いられるようなイオン会合体抽出が効果的で、水相を(N)溶液として、(O)を有機相に用いる分離が行われる。

2017年度第一種試験化学問20

ある化学種に対する有機溶媒(O)と水(W)の間の分配比(O/W)は4である。その化学種(100MBq)を含む水溶液に同体積の有機溶媒を加えて抽出した。有機溶媒を取り除き、残った水溶液に同体積の新たな有機溶媒を加えて再び抽出した。2回の操作で有機溶媒に抽出された化学種の放射能の総量[MBq]として最も近い値は次のうちどれか。

2015年度第一種試験化学問19

ある有機化合物を溶媒抽出する場合、放射性化合物の有機相中の濃度が水相の濃度の10倍であった。この化合物の放射能が100MBqであるとき、その95MBqが有機相に抽出された。このとき、有機相(O)と水相(W)の容積比(VO/VW)として最も近い値は次のうちどれか。

2014年度第一種試験化学問23

有機相と水相との分配比が50の放射性の化学種があり、その化学種を含む水溶液の放射能は100MBqである。水相と等容積の有機相で溶媒抽出した場合に、水相に残る放射能[MBq]として最も近い値は次のうちどれか。

2012年度第一種試験化学問25

水相からある有機相へのI2の抽出の分配比が100であった。50MBqの125IをI2として含む水相100mLから、このI2有機相50mLに抽出した場合、水相に残る125Iの放射能[MBq]に最も近い値は次のうちどれか。