ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
昨日、光子と物質の相互作用のひとつであるコンプトン散乱について記事を書きました。光子と物質の相互作用で出題される計算問題のほとんどはコンプトン散乱ですので、昨日掲載した公式は必ず暗記して自分で使えるようにしておきましょう。
放射線取扱主任者試験で出題される光子と物質の相互作用には、コンプトン散乱の他に光電効果と電子対生成があります。今日は光電効果について簡単に記事にしたいと思います。
光子と物質の相互作用において入射光子のエネルギーと起こりやすい相互作用の関係は放射線取扱主任者試験でもよく出題されている分野ですので必ず覚えて下さい。
「入射光子のエネルギーが小さいときは光電効果が起こりやすく、エネルギーが大きくなるとコンプトン効果のほうが相対的に起こりやすくなる。さらに光子のエネルギーが大きくなると電子対生成が起こりやすくなる。」
以下の図を自分で描けるようにしておけばこの文章は覚えられると思います。この図を使用して解く問題は非常によく出題されていますので必ず覚えておきましょう。
最近出題された光電効果に関する問題です。
第一種試験
2018年度物理問15
光子と物質との相互作用に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 光電効果で生じる光電子のエネルギーは、光子のエネルギーに比例する。
B 光電効果に対する原子当たりの断面積は、原子番号の2乗に比例する。
C 質量エネルギー吸収係数は、質量減弱係数より小さい。
D 線源弱係数は、物質とその密度及び光子のエネルギーによって決まる。
2017年度物理問21
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 光電効果によって放出される光電子は、全ての方向に均等に放出される。
B 光電効果は光子の粒子性を示す現象である。
C 光電効果に対する線減弱係数は、物質の原子番号をZとすると、Z(Z+1)に比例する。
D 光電効果に伴ってオージェ電子が放出されることがある。
2017年度物理問18
光子と物質との相互作用に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 0.2MeVの光子と水との相互作用は主に光電効果である。
B 1.0MeVの光子と鉛との相互作用は主に光電効果である。
C 2.0MeVの光子と水との相互作用は主にコンプトン効果である。
D 10MeVの光子と鉛との相互作用は主に電子対生成である。
2015年度物理問19
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 光電効果は、光子と束縛電子との相互作用により起こる。
B 光電効果は、光子と軌道電子との弾性衝突である。
C 光電効果に伴って、オージェ電子が放出されることがある。
D 光電効果の原子当たりの断面積は、原子番号の2乗に比例する。
E 光電効果の原子当たりの断面積は、光子エネルギーの増加とともに増加する。
2014年度物理問17
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 0.1MeVの光子による鉛の吸収線量においては、光電効果が最も大きく寄与する。
B 137Csγ線による鉄の吸収線量においては、光電効果が最も大きく寄与する。
C 60Coγ線による水の吸収線量においては、コンプトン効果が最も大きく寄与する。
D 3MeVの光子による鉄の吸収線量においては、電子対生成が最も大きく寄与する。
2014年度物理問14
光電効果に関連する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 光電子のエネルギーは入射光子のエネルギーに比例する。
B 光電効果に伴って必ず特性X線が放出される。
C 光電効果の起こる確率(断面積)は入射光子のエネルギーとともに単調に変化する。
D 蛍光収率は物質の原子番号によって決まる。
光電効果に関しては計算問題が出題されることは稀ですが、過去には以下のような問題が出題されています。
2011年度物理問17
0.1MeVの光子がタングステンと光電効果を起こし、K軌道電子が放出された。またこれに伴い、Kα-X線が発生した。それぞれのエネルギー[keV]として正しい組合せは次のうちどれか。ただし、K軌道とL軌道における結合エネルギーはそれぞれ69.5keV及び10.9keVとする。
2005年度物理問18
100keVの光子と鉛との相互作用に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。ただし、鉛のK吸収端及びL吸収端のエネルギーはそれぞれ88keV、13keVとする。
A 主な相互作用は光電効果である。
B 電子は全ての方向に均等に放出される。
C この相互作用において12keVの電子が放出される。
D この相互作用において75keVの光子が放出される。
第二種試験
2018年度管理技術Ⅱ問7
137Cs線源からのγ線が生体に入射したときの相互作用の確率が大きい順に並んでいるものは次のうちどれか。
1 光電効果 > コンプトン効果 > 電子対生成
2016年度管理技術Ⅱ問7
光電効果に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A γ線のエネルギーと光電子のエネルギーは等しい。
B γ線の運動量はすべて光電子に与えられる。
C γ線を吸収する確率はより内殻の電子の方が大きい。
D 光電効果の断面積は物質の原子番号の5乗にほぼ比例する。
2013年度管理技術Ⅱ問5
光電効果に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A γ線エネルギーがK軌道電子の結合エネルギーよりも高い場合、K軌道電子に対する断面積の方がL軌道電子に対するものよりも大きい。
B 原子断面積はγ線エネルギーにほとんど依存しない。
C 原子断面積はおおよそ原子番号の5乗に比例する。
D 光電子は連続エネルギー分布を示す。
2018年度までは第一種試験の物化生の課目でも、また第二種試験では管理技術Ⅰの課目でも光子と物質の相互作用に関する問題は非常によく出題されてきました。
2019年度からは文章問題が各課目で出題されるようになりましたが、今後も第一種試験、第二種試験ともに物理の課目で光子と物質の相互作用に関する文章問題は必ず出題されますので、しっかりと過去問題を解いて勉強しておくことが大切です。