放射線取扱主任者試験に合格しよう!

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X線について

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

今週から12月に入りました。早いもので2019年も最後の月になりました。今年度の放射線取扱主任者試験が終わってから3ヶ月、結果発表があってから1か月以上が既に経ちました。この12月もあっという間に過ぎ、すぐに2020年1月になり、また少しすると新年度の4月がやってきます。

来年度の放射線取扱主任者試験合格を目指している人は、早め早めに勉強に取り組むことが合格へ第一歩です。まずは自分に勉強する癖をつけ、毎日必ず勉強する習慣を作りましょう。努力と継続こそが力となって合格に導いてくれます。

 

さて、α線β線γ線と記事にしてきましたので、今日はX線について簡単に書きたいと思います。X線について原子力百科事典ATOMICAでは以下のように記載されています。

原子力百科事典ATOMICAによる記載>

 電磁波の一種で普通、紫外線とγ線との間約10-8〜10-12mの範囲の波長をもっている。X線は電子と原子の非弾性散乱や電子の内部転換等によって電子が励起されたり、または電子が原子からはじき出された状態から安定な状態に戻る際に、そのエネルギーを電磁波(X線)の形で放出されたものである。したがって、X線は発生源が異なるだけで、γ線と同一である。γ線と同様、蛍光作用、電離作用、写真作用により検出され、強度が測定される。X線非破壊検査、診断用や結晶構造の研究等に利用される。

γ線励起状態原子核基底状態に移る際に発生する電磁波であったのに対して、X線原子核からではなく原子から発生する電磁波であることは先日記載しました。

 

放射線取扱主任者試験では、X線に関しては特性X線制動放射線に関する問題が非常によく出題されています。特性X線制動放射線については原子力百科事典ATOMICAでは以下のように記載されています。

原子力百科事典ATOMICAによる記載>

特性X線

 各元素に固有な波長の線スペクトルを示すX線をいう。内部転換電子が放出されたあと、空孔のできた軌道に外側の軌道から電子が落ち込み、軌道電子のエネルギー準位の差に相当するエネルギーが特性X線として放出される。K殻の空孔がL殻またはM殻の電子によって満たされた場合、それぞれKα-X線、Kβ-X線、L殻の空孔が満たされた場合、Lα-X線と呼ばれる。

 

制動放射線     

 高速で運動する荷電粒子、例えば電子が原子核の近傍を通過するときに、その電界によって減速され、その際失ったエネルギーを電磁波、すなわちX線として放出する。このように電子と強い電磁界との相互作用でX線が放出される現象を制動放射といい、放出される電磁波を制動放射線または制動X線という。制動X線のエネルギーのスペクトルは連続である。電子の制動放射によるエネルギー損失は電子のエネルギーに比例し、物質衝突の場合その原子の原子番号の2乗にほぼ比例する。したがってβ線の遮蔽には小さい原子番号の物質を線源側におき、制動X線の遮蔽材を外側に置くのがよい。放射光は高速電子を意図的に偏向電磁石やウィグラー、アンジュレーター等の挿入装置で曲げたとき出る制動放射線(X線)である。

 

2019年度の試験では、珍しく第一種試験では特性X線に関する出題はありませんでしたが第二種試験で出題されています。

2019年度第二種試験物理問1

放射性壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A β+壊変により、原子核から陽電子が放出される。
B EC壊変により、原子核から特性X線が放出される。
C 内部転換により、原子核からニュートリノが放出される。
D 自発核分裂により、原子核から中性子が放出される。

 

2019年度第二種試験物理問3

KX線に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 電子軌道のK殻に空孔が生じたときに発生する。 
B KX線の放出に続いてLX線が放出されることがある。 
C KX線の放出とK殻オージェ電子の放出は競合過程である。 
D 同じ元素では、KX線のエネルギーはLX線のエネルギーより高い。 

また、先日の「β線について」の記事でも掲載しましたが、2019年度第二種試験物理問11Ⅱでも出題されいます。問題全文は「β線について」の記事をご覧下さい。

 

特性X線とオージェ電子との競合する関係(競合過程)にあります。そのため両方が同時に起こることはなく、どちらか一方が起こります。特性X線とオージェ電子のどちらが起こりやすいかは原子番号で決まり、おおよそ原子番号が30から32くらいが境目でしょうか。原子番号がおよそ30程度まではオージェ電子を放出しやすく、それよりも原子番号が大きくなると特性X線を放射しやすくなります。特性X線とオージェ電子が競合過程にあることは試験でも非常によく出題されていますので必ず覚えておきましょう。

上述した2019年度第二種試験物理問3の選択肢Cでも出題されています。

また、以下のような問題も過去には出題されています。

2016年度第一種試験物理20

2つの放射線の発生が互いに競合する関係にあるものの組合せは、次のうちどれか。
A コンプトン電子と散乱光子 

B 特性X線とオージェ電子 

C 制動X線と特性X線 

D 内部転換電子とγ線

特性X線とオージェ電子は光電効果コンプトン効果、内部転換、軌道電子捕獲(EC)などで起こり得ます。
 
 

制動放射に関しては2019年度は以下のような問題が出題されました。

2019年度第一種試験物理問14

5MeVの電子線を鉛に入射させたときに直接起こる相互作用として正しいものの組合せは次のうちどれか。
A コンプトン散乱 B 制動放射 C 光電効果 D 電離

 

2019年度第一種試験物理問31

(中略)

荷電粒子平衡が成立し、制動放射により失われる電子のエネルギーの割合が無視できる場合、(A)と(B)は互いに等しくなる。 

 

2019年度第一種試験化学問30

51CrはEC壊変して51Vになるときに、320keVのγ線を放出する。51Cr線源からの放射線を鉛で遮蔽するとき、次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。ただし、鉛の密度は11gcm-3、320keVのγ線に対する質量減弱係数は0.35cm2g-1とする。・
A 厚さ3.2cmの鉛で320keVのγ線は約1/1000に減弱する。
B 厚さ1.8mmの鉛で320keVのγ線は約1/2に減弱する。
C 51Vから放出される特性X線は320keVのγ線より遮蔽が難しい。
D 制動放射線の遮蔽は考慮する必要がない。 

 

2019年度第二種試験実務問3

放射線の遮蔽に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A α線は、ゴム手袋(厚さ0.3mm)で遮蔽される。
B 高エネルギーβ線の遮蔽では、制動放射線の発生を考慮する。
C γ線の遮蔽には、原子番号の大きい物質が効果的である。
D 中性子の遮蔽には、水やパラフィンが用いられる。 

制動放射線は荷電粒子と物質との相互作用で起こりますが、基本的に電子でのみ問題となります。制動放射は入射粒子の質量の2乗に反比例するので、α線や陽子線の質量は電子に比べて大きいため制動放射問題にはならないからです