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2020年度第一種試験問題総評 物理編

2020年度第一種試験問題総評

【物理】

難易度はここ数年では一番難しく思います。

問1から問30までに五肢択一式の問題では、細かいことを問われている選択肢や用語の定義をしっかりと覚えていないと迷う問題もいくつかあり、また計算量も多く、時間的にも厳しい問題も多かったように思います。

問31と問32は文章問題ですが、問31の問題の図は加速器の概要ですが、加速器についての知識がなくても問題は解けます。問32は壊変や特性X線、内部転換などに関する問題で、過去の第一種試験の物化生でも何度か出題されている問題ばかりですので、過去問題をしっかりと解いて試験に臨んだ人は得点できる問題だったかと思います。

全体的に計算量が多い問題も多くあり、1時間50分の試験では厳しかったように思いますので、6割得点できればまずまず良い方かと思います。

 

問1、3,4は計算問題です。問1はエネルギーに関してW(ワット)がJ/sであることを知っていれば解けます。問3は波長や振動数とエネルギーの関係を表す式を暗記しておけば正答できます。問4はなかなか計算量があり大変です。

問2はド・ブロイ波長の公式を暗記していれば正答できます。

問5は難しいですね。磁気モーメントに関して知識がないと選択肢1と2は分かりません。選択肢3や5も難しいですね。

問6は原子核を構成する陽子や中性子に関する問題です。迷う選択肢もあります。

問8は難しいですね。選択肢BとCについては核種の詳細について知っていなければ正答できません。

問9は加速器に関する問題です。加速器に関しては毎年必ず出題されますので、7種類の加速器をしっかり覚えておきましょう。

問10は重陽子同士の核融合反応に関する問題です。D-D反応と呼ばれるものですね。近年はD-D反応やD-T反応に関する問題もよく出題されています。

問12は反跳エネルギーに関する問題です。出題頻度の高い重要問題です。

問13は飛程に関する問題です。過去に似たような問題も出題されています。

問14は特性X線制動放射線に関する問題です。少し迷う問題かもしれません。

問17の選択肢DのBragg-Williamsの近似については知らなくても構いません。知らなくても正答は分かります。

問18、25は用語に関する問題ですが、用語の定義をしっかりと覚えておかないと難しい問題です。

問20は光子束の減弱を表す式を暗記していないと解けません。重要な式ですので暗記しておきたい式です。

問22の半価層、1/10価層の公式は重要です。必ず暗記しておきましょう。

問24は中性子の弾性衝突に関する問題です。中性子原子核と弾性衝突した際の原子核の反跳エネルギーを求める公式は重要公式です。必ず暗記しておきましょう。

問27は計数率と誤差(標準偏差)に関する問題です。少し古いですが、2006年度物理問27の類似問題です。計数率や標準偏差の公式はしっかり暗記しておきましょう。

問28、30は中性子の検出に関する問題です。熱中性子の検出、速中性子の検出に利用される核反応や検出器は覚えておきましょう。

問29はシンチレータに関する問題です。本問題で出題されているシンチレータの特徴は覚えておきましょう。

 

問31は加速器を題材にした文章問題です。

加速器の文章問題は過去にも何度か出題されていますが、ローレンツ力やクーロン力といった用語、また公式はしっかりと押さえておく必要があります。例年、加速器の問題は円運動する半径などを求める問題が多く出題されています(2012年度、2017年度、2019年度)が、今年度の問題は直進運動するための条件が問題として出題されています。

後半はブラッグ曲線やベーテの式が出題されていますが、ベーテの式までは暗記しておく必要はありませんが、「重荷電粒子に対する衝突阻止能が電荷の2乗に、また速度の-2乗に比例する」ことは重要です。2019年度の第一種試験物理でも出題されています。

 

問32の前半は壊変に関する文章問題です。

2007年度物化生問2Ⅰ、2011年度物化生問2Ⅱの類似問題です。β+壊変における壊変エネルギー(B)は放射線概論にも記載されています。特性X線のエネルギー(F)やオージェ電子のエネルギー(G)も過去問題で何度か出題されています。この辺りは確実に得点しておきたい問題です。

後半の40Kに関する問題は放射線取扱主任者試験では頻出問題です。

(ア)(イ)は2006年度物化生問4Ⅰとかなり似た問題ですし、(エ)(オ)は2007年度物化生問2Ⅱ、2014年度物化生問1Ⅰ、2017年度物化生問1Ⅰの類似問題です。過去問題を5年間から7年間分解いておけば見たことのある問題のはずです。

なかなか古い過去問題までは解く余裕はないかもしれませんが、できるだけ多くの過去問題を解いておくと得点できる確率もグッと上がります。

 

2020年度の物理は、過去にもあまり出題されたことのないような選択肢も散見され、全体的に難しかったかと思います。

ただ、分からない選択肢があっても、分かる選択肢から消去法で正答は導ける問題もありますので、何とか6割得点したいですね。