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2021年度第一種試験問題総評 物理編

2021年度第一種試験問題総評

【物理】

昨年度に続き、今年度も難易度は難といった感じでしょうか。

問31の文章問題が難しく感じられたかと思います。

問1から問30までは五肢択一式の問題で、そのうち計算問題は8問です。(問2、問4は計算問題としていません)問17の計算問題は難しい問題ですね。

頑張って6割得点できたらいいですね。

 

問1はエネルギーや運動量など物理法則に関する問題です。公式をしっかりと覚えておきましょう。

問2は原子質量単位、問4は原子の直径に関する問題で暗記問題です。

原子質量単位は定義を覚えておくことも大切です。定義を覚えておけば計算でも求められます。

問3はド・ブロイの波長を求める公式を覚えておけば計算するだけです。2020年度物理問2でもド・ブロイの波長を求める公式が出題されています。

問5は選択A及びBが誤りであることが分かればすぐに正答できます。

問6は壊変に関する問題です。壊変系列を覚えておけば選択肢Bが誤りであることはすぐに分かります。2021年度の化学問5でも出題されていますが、64Cuを思い浮かべれば選択肢Dが誤りであることも分かります。

問7は陽電子に関する問題ですが、難しい問題ですね。

問8はγ線のエネルギーに関する問題です。主要な核種のγ線のエネルギーは覚えておかなくてはなりません。

問9は内部転換に関する問題です。内部転換、核異性体転移は放射線取扱主任者試験では頻繁に出題されています。しっかりと勉強しておきましょう。

問10、問11は加速器に関する問題です。加速器に関しては毎年必ず出題されますので、7種類の加速器をしっかり覚えておきましょう。問11はコック・クロフトワルトン型加速器に関する計算問題です。過去の物理の試験でもあまり出題されたことはありませんが、ゆっくり考えれば難しい問題ではありません。

問12も少し難しいですね。選択肢B及びDが誤りであることが分かれば、消去法で正答できそうですね。問14も核反応に関する問題です。発熱反応、吸熱反応は全部は覚えられませんが、本問題では選択肢A及びBがD-D反応、D-T反応であるので発熱反応であることが分かれば正答できます。

問13はホットアトムの反跳エネルギーの問題です。公式がありましたよね。

問15は制動放射線に関する問題です。制動放射放射線取扱主任者試験ではよく出題されている分野ですのでしっかり勉強しておきましょう。

問16は飛程に関する問題です。[cm2・g-1]単位の飛程が物質に依存しないことを知っていれば正答できます。

問17は難問ですね。ラザフォード散乱に関する計算問題です。放射線取扱主任者試験でも初めて見かける問題のような気がします。解いた経験がないと解くのは難しいでしょう。

問18から問21までは光子と物質の相互作用に関する問題です。放射線取扱主任者試験では毎年数問は必ず出題される分野です。問19の5つの相互作用についてはしっかりと勉強しておく必要があります。特にコンプトン散乱に関しては問21のように計算問題も非常によく出題されています。重要な公式がありますので確実に暗記して自分で使えるようにしておきましょう。ちなみに問21は2018年物理問16と全く同じ問題です。

問22は中性子に関する問題です。問22は選択肢によっては専門的な知識を問われているので難しかったかもしれません。質量に関しては、陽子、中性子、電子の質量は非常によく出題されていますので暗記しておきましょう。中性子の磁気モーメントに関しては2020年度物理問5で、スピンに関しては2015年度物理問6で出題されていますので、過去問題をしっかり解いていた人は正答できたかと思います。

問23は中性子に関する計算問題です。中性子原子核の弾性衝突には重要な公式があります。物理の試験で毎年のように頻繁に出題されていますので必ず暗記しておかなくてはなりません。

問24、問25は毎年出題されている単位と用語に関する問題です。単位を理解しておけば計算問題でも役に立ちます。また、放射線を学ぶ上では用語の定義もしっかりと覚えておかなくてはなりません。ともに正答したい問題です。

問26は計数率と誤差(標準偏差)に関する問題です。計数率や標準偏差の公式はしっかり暗記しておきましょう。

問27は比例計数管に関する問題ですが、専門的なことも問われていますので難しい問題です。

問28は半導体検出器に関する問題です。重要な放射線検出器に関しては基本的な原理を知っておくことが大切です。特に半導体検出器では液体窒素で冷却が必要か、室温でも動作可能かは知っておきましょう。

問29はシンチレーション検出器に関する問題です。自己放射性がある検出器かどうかを問われている問題ですが、難しかったかもしれません。よく出題されるNaI(Tl)、CsI(Tl)、BGO、ZnS(Ag)の検出器に自己放射性がないことを知っておけば消去法で正答は導けます。

問30もシンチレーション検出器に関する問題ですが、この問題ではエネルギー分解能が問われています。エネルギー分解能に関しては2020年度物理問29や2012年度物理問25でも出題されています。また、2019年度物理問26や2016年度物理問28では計算問題としても出題されています。過去問題をしっかり解いておきましょう。

 

問31、問32は文章問題です。

問31は放射線の歴史から問われ、物理の運動量保存則やエネルギー保存則など問われた文章問題で、なかなかの難問だったかと思います。

レントゲンやキュリー夫人マリー・キュリー)の業績は知っている人も多いかと思いますが、ベクレルやラザフォードは名前だけ、ヴィラールやボーテ、チャドウィックなどは名前すら聞いたことがないという人もいるのではないでしょうか。イレーヌ・キュリーはキュリー夫人の娘ですね。

前半では運動量保存則やエネルギー保存則など、後半では反跳エネルギーの計算など物理の知識を必要とする問題でもあり、高校物理を学んでいなかった人には難しかったかと思います。E=pcは重要公式ですので必ず覚えておきましょう。

ウランの核分裂により生成されるエネルギーは質量欠損から計算できます。

 

問32の光子の減弱に関する文章問題です。

Ⅰは2011年度物化生問4Ⅱとほぼ同じ問題です。Ⅱは2007年度物化生問1Ⅰの類題です。

2011年度物化生問4Ⅱ、2007年度物化生問1Ⅰともに以下の記事に掲載しています。

 光子の減弱に関する過去問題

 

問題文中にも記載されている、光子が物資に入射されたとき、光子束φの減弱を表す式(微分方程式)は覚えておくと良いでしょう。この方程式から導ける光子束φの式(ア)は必ず暗記しておかなくてはなりません。この式は2017年度の第二種試験の管理技術Ⅰ問5Ⅰでも出題されています。

光子の問題では、光電効果、やコンプトン散乱、電子対生成などの物質との相互作用のほか、線減弱係数、質量減弱係数などの用語、単位はもちろん、光子と物質の相互作用を表す図などは覚えとくと必ず得点につながります。光子と物質の相互作用を表す図を知っておくと、今年度の物理問18の選択肢CやDなどの正誤が分かります。

 

物理を苦手にしている受験生は多くいますが、基本に自信がない人は高校物理から復習を始め、できるだけ多くの過去問題を解くことで得点できるようになります。