ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日は過去に物理や物化生の試験で出題されたことのある核反応のしきいエネルギーに関する演習問題を掲載します。計算問題ですが一緒に解いてみましょう。
問 12C(n,2n)11Cはしきいエネルギーを有する吸熱反応である。このしきいエネルギーを表す式として、最も適切なものはどれか。ただし、中性子の質量をMn、12Cの質量をM12、11Cの質量をM11、反応のQ値をQとする。
① |Q|×(Mn+M11)/M11
② |Q|×(Mn+M12)/M12
③ |Q|
④ |Q|×M11/(Mn+M11)
⑤ |Q|×M12/(Mn+M12)
衝突の前後の粒子や原子核の質量差をエネルギーに換算したものがQ値になります。このQ値の値が正の場合は発熱反応、負の場合は吸熱反応になります。
吸熱反応においては入射粒子のエネルギーがQ値の絶対値を超えないと反応が起こりません。この核反応が起こるための入射粒子の最小エネルギーしきいエネルギーといいます。
核反応式を用いて説明すると、
:
の核反応においてQ値は
は質量を表す
Q値>0のときは発熱反応、Q値<0のときは吸熱反応になります。
核反応を起こすのに必要な入射粒子の運動エネルギー(しきいエネルギー)は、
Q値>0の発熱反応では入射粒子のしきいエネルギーはない
Q値<0の吸熱反応では入射粒子がしきいエネルギー以上のエネルギーを持って
いないと核反応は起こらない。
Q値<0の吸熱反応においては、入射粒子xに必要なしきいエネルギーは、
となります。この式は公式として暗記しておいた方が良いでしょう。
(第7版放射線概論 P153 参照)
本日の演習問題においては、
の核反応式からしきいエネルギーは上の公式を用いて
となるので、正解は②となります。
平成24年度物化生問1Ⅱでは、この式の導き方が出題されています。
また、この演習問題の類題が平成18年度物理問11に出題されています。
32S、27Al、64Znなどはしきいエネルギーを持った放射化反応で、高速中性子の検出に利用可能なことは覚えておきたいですね。
(第7版放射線概論 P407 参照)