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壊変に関する問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
昨日は壊変に関して必ず暗記しておきたいことを「そのまま暗記集」の記事として書きました。
今日は壊変に関連する演習問題を一緒に解きましょう。


問 原子番号Z、質量数Aの原子の質量をM(Z,A)とする。この原子核の壊変について次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。ただし、軌道電子の結合エネルギーによる質量の寄与については考慮しないものとし、電子の静止質量をmeとする。

① EC(電子捕獲)壊変では、常にM(Z,A)>M(Z-1,A)+meが成り立つ
② β+壊変では、常にM(Z,A)>M(Z-1,A)+2meが成り立つ
③ β-壊変では、常にM(Z,A)>M(Z+1,A)が成り立つ
④ 核異性体転移では、質量数A、原子番号Zともに変化しない
⑤ α壊変では、常にM(Z,A)>M(Z-2,A-4)+M(2,4)が成り立つ


壊変が起こるための条件は、親核種と娘核種の質量差で決まるQ値によります。

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ここで、Mpは親核種の質量、Mdは娘核種の質量、cは光の速度を表しています。
mc2でエネルギーを表します。
EC(電子捕獲)壊変が起こるためには、Q値が軌道電子の束縛エネルギーIよりも大きくなくてはなりません。

 イメージ 2

親核種の質量M(Z,A)が娘核種の質量M(Z-1,A)よりも電子の静止質量meより大きいことが条件ではありません。①は誤り。

β+壊変では、生成した陽電子が電子と結合して消滅するときにmec2=0.511MeVを2本放出しますので、電子及び陽電子の静止エネルギーの和である2mec2(=0.511MeV×2)以上のときに起ります。

 イメージ 3

壊変前後の中性原子の質量差では電子の2倍の質量以上、すなわち親核種の質量M(Z,A)が娘核種の質量M(Z-1,A)よりも電子の静止質量の2倍である2meより大きいことが条件です。②は正しい。

β-壊変が起こるためには、Q値が正であることが条件となります。

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親核種の質量M(Z,A)が娘核種の質量M(Z+1,A)よりも大きいことが条件です。③は正しい。

壊変が起きた後の原子核が安定で数ミリ秒から数日以上の寿命を持ち、その後基底状態になる過程があります。このような過程を核異性体転移(Isomeric transition:IT)と呼びます。核異性体転移では原子番号も質量数も変化しません。
異性体転移として以下の核反応式を覚えておきましょう。

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異性体転移では、質量数A、原子番号Zともに変化しませんので、④は正しい

α壊変はα粒子であるヘリウムの原子核を放出する壊変ですので、Q値がα粒子(ヘリウム)のエネルギーよりも大きくなくてはなりません。

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親核種の質量M(Z,A)が娘核種の質量M(Z-2,A-4)よりもヘリウムの質量M(2,4)より大きいことが条件です。⑤は正しい。
よって、最も不適切なものは①になります。

α壊変、β-壊変、β+壊変、EC壊変、また核異性体転移や内部転換などが起こった時の陽子数や中性子数の変化、また原子番号や質量数の変化は確実に覚えておきましょう。これらの壊変、転移が起こる条件も是非覚えてきたいですね。