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90Srと90Y 続き

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

前回は放射性核種90Srと90Yの記事を掲載しました。90Srと90Yは重要核種として壊変や半減期、エネルギーなども必ず覚えておかなくてはなりません。また、両者の間には永続平衡が成立することも放射線取扱主任者試験でも非常によく出題されていますので必ず暗記しておきましょう。

 

永続平衡にある90Sr-90Yの混合溶液からの分離に関する問題も放射線取扱主任者試験ではよく出題されています。出題される内容はだいたい決まっていますので過去問題をしっかりと解いておくことが大切です。

2015年度第一種試験物化生問3Ⅲ

Iにおいて、T1>>T2(すなわちλ1<<λ2)の場合には、十分に時間tが経過すると(おおよそt>10T2)、核種2と核種1の放射能はA2/A1≒1でほぼ等しくなる。このような放射平衡状態を永続平衡という。

しかしt<10T2で、永続平衡が成立する前であっても、(6)式を利用することができる。例えば、90Srは次のように壊変するが、

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娘核種90Yのβ線エネルギーが2.28MeVと非常に高く測定しやすいことから、環境試料中の90Srの定量には、娘核種のβ線測定が利用されている。試料からストロンチウムを分離回収して精製したのち、2週間以上保存する。その塩酸溶液に(O)の捕集剤としてFe3+を、(P)の保持担体としてSr2+を、それぞれ塩化物の形で加えた後、加熱しながらアンモニア水を加えて(Q)の沈殿をつくり、この沈殿中に娘核種90Yを共沈させて親核種から分離する。沈殿中の90Yの放射能測定により、まず半減期の測定から(R)が含まれていないことを確認し、次いで共沈させた時刻における90Yの放射能を算出し、(6)式により90Srの放射能を求めることができる。

2013年度第一種試験物化生問4Ⅲ

核分裂生成物に含まれている長寿命核種のうち、体内で摂取された場合、問題になるのが90Sr(半減期:29年)である。90Srは(K)であり、人体内に入ると骨に沈着し長期間にわたる内部被ばくが問題になる。90Srは(3)式のようにβ-壊変により逐次壊変する。単離した90Srは18日間以上経過すると、生成する90Y(半減期:2.7日)の放射能がほぼ一定な値となり、90Srの放射能と1%以内で等しくなる。このような放射平衡状態を(L)という。

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環境試料中の90Srの分析では、90Srのβ-線の最大エネルギーが0.54MeVと低く、90Yが共存すると定量困難である。一方、娘核種90Yのβ-線の最大エネルギーが(M)ことから、90Srの定量にはこれを利用する。試料からストロンチウムを分離回収して精製した後、2週間以上待つ。その塩酸溶液に(N)の捕集剤としてFe3+を、(O)の保持担体としてSr2+を、それぞれ塩化物の形で加えた後、加熱しながらアンモニア水を加えて水酸化鉄(Ⅲ)の沈殿をつくり、この沈殿中に娘核種90Yを共沈させて親核種90Srから分離する。90Yの放射能測定から共沈させた時刻における90Yの放射能を算出し、放射平衡にあった90Srの放射能を求めることができる。

2016年度第一種試験物化生問3Ⅱ

90Srの塩酸溶液をアンモニア水で中和してろ過すると、見かけ上沈殿が生じていなくても娘核種の90Yがろ紙に捕集される。この現象は(P)の生成によるものと考えられ、無担体RIの分離に利用される。

 

また、90Sr-90Yの永続平衡に絡めて計算問題が出題されるときもあります。

難しい計算問題ではありませんので確実に解けるようにしておきましょう。

2018年度第一種試験物化生問3Ⅲ

放射平衡において、T1>>T21<<λ2)の場合、十分な時間t(t>>10T2)が経過すると核種1と核種2の放射能はほとんど等しくなる。この状態は永続平衡と呼ばれる。90Srは半減期(O)年でβ-壊変し90Yになり、さらに90Yも半減期2.67日でβ-壊変して90Zr(安定)になる(下図参照)。

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新たに分離精製した90Sr試料中には90Yが生成し、おおよそ1ヶ月で永続平衡に達する。永続平衡にある90Yの90Srの対する原子数比(NY/NSr)は(P)となる。90Sr試料中に生成する90Yは無担体で取り出すことができる。永続平衡に達するまでの90Yの原子数は、放射化やRI製造における飽和係数を使うことにより求めることができる。例えば、一旦90Yを分離除去した90Sr試料には、2.67日間経過すると、永続平衡時の(Q)%の90Yが生成する。

90Yはβ-線(最大エネルギーEmax=(R)MeV)を放出する核種であり、悪性リンパ腫の内用療法に利用されている。この方法では、治療に先だち(S)放出核種である111Inの標識抗体を投与して、腫瘍への集積性をシンチグラフィで確かめ、治療の適切性を確認する。

 

関連する演習問題を一緒に解いてみましょう。


問 次の放射化学分離に関する記述において、(A)~(D)に入る用語はとして正しい組合せは①~⑤にのうちどれか。
無担体の90Srのみを含む水溶液中にはβ-変壊変によって娘核種の90Yが次第に生成してくる。この溶液に、非放射性のSrとYを担体として加えた後、(A)にすると、90YはYとともに水酸化物として沈殿し、90SrはSrとともに水溶液中に残るため、90Srと90Yを分離することができる。もし、非放射性のSrを加えない場合には、90Srは(B)になりやすく、Yの水酸化物に取り込まれる可能性がある。この現象を(C)という。また、90Srを溶液中に残すために加えたSrのことを(D)と呼んでいる。
   (A)     (B)          (C)        (D)
アルカリ性 ラジオコロイド          共沈     保持担体
②  酸性   ラジオコロイド          共沈      スカベンジャ
③  酸性     イオン     ミルキング    保持担体
アルカリ性     酸化物              ミルキング    スカベンジャ
アルカリ性     イオン        共沈     スカベンジャ


90Srと90Yは、90Yを沈殿させることにより分離することができます。

Fe3+やY3+は溶液をA)アルカリ性にすることで、Fe(OH)3、Y(OH)3として沈殿しますので、90YはこのFe(OH)3、Y(OH)3と一緒に沈殿させることができます。
90Srと90Yが共存する溶液に非放射性のFe3+やY3+を加えることで、90Yを沈殿により90Srから分離することができます。加えた非放射性のFe3+やY3+を共沈剤(捕集剤)と呼んでいます。C)共沈
この場合、Y3+は目的とする90Yと同じ元素ですので同位体担体、Fe3+90Yと異なる元素ですので非同位体担体とも呼べます。
また、90Srを溶液に残しておくために非放射性Srを加えますが、これをD)保持担体と呼びます。保持担体を加えないと90Srは(B)ラジオコロイドとなってY(OH)3と一緒に沈殿しやすくなってしまい90Yと分離できなくなってしまいます。

 

よって、(A)アルカリ性、(B)ラジオコロイド、(C)共沈、(D)保持担体となりますので、正解はとなります。