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永続平衡について

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

 

前回は、放射平衡の中で過渡平衡に関する記事を掲載しましたので、今日は永続平衡について少し書きたいと思います。

永続平衡の問題では90Sr-90Yが非常によく出題されています。

今日は90Srと90Yを覚えましょう。

 

90Sr 半減期28.8年 β-壊変(β-線エネルギー546keV)

90Y 半減期64時間 β-壊変(β-線エネルギー2.28MeV)

 

90Srはβ-壊変して90Yになります。親核種である90Srの半減期28.8年は娘核種である90Yの半減期64時間に比べて非常に長いため、両者の間には永続平衡が成立します。

 

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前回の記事にも記載しましたが、放射平衡における親核種、娘核種の原子数を表す公式は放射線取扱主任者試験では超重要公式ですので必ず暗記しておかなくてはなりません。(λは壊変定数)

親核種1の原子数 

 

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娘核種2の原子数 

 

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通常、娘核種2の最初の原子数は0であることが多いので、N2は以下の式で表されます。

 

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140Ba-140Laのような過渡平衡になる場合では、娘核種2の原子数は以下の式に近似できることは前回記事にしました。(必ず暗記しなくてはならない超重要公式ですね)

 

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今日は永続平衡についてです。

<永続平衡の特徴>

・親核種1の半減期が娘核種2の半減期に比べて非常に長いときに成立(T1>>T2)
・親核種1の放射能と娘核種2の放射能が等しくなる

 

永続平衡は親核種1の半減期が娘核種2の半減期に比べて非常に長い時に成立します。
90Sr-90Y以外では、例えば、以下のような核種もあります。
 
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永続平衡が成立するときは、
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この式は超重要公式ですので必ず暗記して下さい。

 

90Sr-90Yのように永続平衡に関する過去問題として、第一種試験では以下のような問題も出題されています。

文章問題をしっかり解いておくと良いでしょう。

2020年度化学問32Ⅱからの抜粋

90Srは(I)β線のみ放出するため、溶液化後の90Srの単離精製のための化学分離が必要となる。これに加えて、90Srの定量のための化学分離では特徴的な点がある。親核90Srと娘核90Yの半減期の関係で(J)永続平衡が成立する。ここで(K)共沈法を適用することで、娘核種はミルキング可能である。90Yのβ線最大エネルギーが著しく高いために、他のβ線放出核種が残留していても、90Yの放射能から90Srの放射能を正確に求めることができる。

2019年度化学問6

放射平衡に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 親核種の壊変定数が娘核種の壊変定数より大きい場合は、放射平衡が成立

  する。
2 放射平衡が成立しているとき、親核種の放射能は娘核種の放射能より常に

     大きい。
3 放射平衡が成立すると、娘核種の放射能は親核種の半減期で減衰する。
4 放射平衡が成立すると、親核種と娘核種の原子数の比(N親/N娘)は、親核

     種と娘核種の壊変定数の比(λ親/λ娘)に等しい。
5 放射平衡が成立すると、親核種と娘核種の原子数の和は常に一定となる。

2018年度化学問6

ある親核種を単離してから1日後の時点で、その親核種と娘核種との間に永続平衡が成立している。この記述について、正しいものの組合せは次のうちどれか。
A 42Ar 42K 

B 68Ge 68Ga 

C 137Cs 137mBa 

D 140Ba 140La 

E 238U 234U

2018年度物化生問3Ⅲ

放射平衡において、T1>>T21<<λ2)の場合、十分な時間t(t>>10T2)が経過すると核種1と核種2の放射能はほとんど等しくなる。この状態は永続平衡と呼ばれる。90Srは半減期(O)28.8年でβ-壊変し90Yになり、さらに90Yも半減期2.67日でβ-壊変して90Zr(安定)になる(下図参照)。 

新たに分離精製した90Sr試料中には90Yが生成し、おおよそ1ヶ月で永続平衡に達する。永続平衡にある90Yの90Srの対する原子数比(NY/NSr)は(P)2.5×10-4となる。90Sr試料中に生成する90Yは無担体で取り出すことができる。永続平衡に達するまでの90Yの原子数は、放射化やRI製造における飽和係数を使うことにより求めることができる。例えば、一旦90Yを分離除去した90Sr試料には、2.67日間経過すると、永続平衡時の(Q)50%の90Yが生成する。

90Yはβ-(最大エネルギーEmax=(R)2.28MeV)を放出する核種であり、悪性リンパ腫の内用療法に利用されている。この方法では、治療に先だち(S)γ線放出核種である111Inの標識抗体を投与して、腫瘍への集積性をシンチグラフィで確かめ、治療の適切性を確認する。