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2021年度第一種試験問題総評 生物編

2021年度第一種試験問題総評

【生物】

今年度は五肢択一式の問題において計算問題が4問も出題されています。問14は放射能を求める基本的な問題で問27も単位に注意すれば正答できる問題です。問26は昨年度も出題された倍加線量の問題です。問21は変異頻度を求める問題ですが、少し戸惑ったかもしれません。

全体的な難易度は標準的で、選択肢によっては聞きなれない専門的な用語もあり難しい問題もあります。いつも言っていることですが、過去問題をしっかりと解き、覚えることを覚えて試験に臨めば6割は得点できる問題かと思います。

文章問題では、今年は問31でRNAの構造、そして4年連続でコドン表を利用したアミノ酸配列の問題が出題されました。基本的な生化学に関する勉強を行うとともに、数年分の生物の文章問題(旧物化生の問題も含む)は必ず解いておかなくてはなりません。

問32は生存率曲線に絡めたOER、RBEの問題などで従来からよく出題されている問題です。過去問題はできることなら7~10年間分を解いておくとほとんどの問題は網羅できるはずです。

 

問1や問2では例年、標識化合物に関する問題が出題されています。今年度も問1は、DNAの合成、タンパク質の合成に使用される標識化合物の問題でした。問2は核医学に使用される標識化合物です。問1は例年よく出題されるものばかりですが、問2はFDGとメチオニン以外は聞きなれない名前が多く難しかったですね。

問3、問4、問5はγ線急性全身被ばくに関する問題です。問3は腸管死に関する問題、問4は細胞生存率に関する問題、問5は被ばく初期の線量と症状の関係に関する問題です。問5は2019年、2018年、2017年にも同様の問題が出題されています。γ線急性被ばくに関する問題では、発症までの期間や症状などは暗記しておく必要があります。放射線宿酔から骨髄死、腸管死などは過去問題で幾度と出題されています。また、被ばく後の末梢血中の変化についてもよく出題される分野です。各血球の変化を表す図をおおまかでも自分で描けるようにしておくとよいでしょう。

問6は被ばく後の組織反応に関する問題です。線量率効果や早期反応、晩期反応の生存率曲線の形状、α/βなどについて押さえておきましょう。

問7は原爆被爆者の疫学調査に関する問題です。過去何度か同様の問題が出題されており、2020年度も出題されています。過剰相対リスクなどの定義を覚え、過去問題をしっかりと解いておきましょう。

問8はγ線急性全身被ばくの障害について発症までの時間を問う問題です。白内障が晩期障害で発症までに最も時間を要することが分かれば正答できます。

問9は確率的影響、確定的影響、急性障害、晩発障害などに関する問題で基本的な問題です。

問10はしきい線量に関する問題です。よく出題されるしきい線量のおおまかな値は暗記しておくことが大切です。

問11は早期反応に関する問題ですが、やや難しかったかと思います。

問12、問13は自然放射線や人工放射線(医療被ばく)に関する問題ですが、この種の問題は比較的難しい問題が多いように思います。今年度も難しかったように思います。

問14は放射能を求める計算問題です。基本問題ですので正答したいですね。

問15はラジカルに関する問題で、これも生物や化学でよく出題されています。活性種に関してはヒドロキシルラジカル、水素ラジカル、スーパーオキサイドラジカル、水和電子などを、また酸化剤になるか還元剤になるかなどもしっかり押さえておきましょう。

問16、問17は間接作用に関する問題です。間接作用における修飾効果はしっかりと勉強しておきましょう。なかでも酸素効果は毎年必ず出題されています。問32Ⅰも酸素効果の問題です。

問18、問19はDNAの損傷、修復に関する問題です。DNA1本鎖切断、DNA2本鎖切断、また細胞周期や周期毎の感受性、修復は毎年必ず出題されています。しっかりと勉強しておく必要があります。問19の選択肢Aは2020年度生物問31Ⅱでも出題されています。

問20のアポトーシスも非常に出題頻度が高い分野ですね。過去問題をしっかり解いておきましょう。

問21は計算問題です。初めて目にするような問題ですので、少し難しかったかもしれません。今後もこのような問題が出題されることもありますので、解き方を身に付けておくと良いでしょう。

問22、問23は染色体異常に関する問題です。安定型異常、不安定型異常についてはがんの原因となるもの、線量推定に用いられるものなども合わせて、その特徴をしっかりと覚えておきましょう。問23については2018年、2015年の物化生でも似たような問題が出題されています。

問24は胎内被ばくに関する問題です。胎内被ばくの問題も毎年必ず出題される分野ですので、着床前期、器官形成期、胎児期の時期、特徴などはしっかりと覚えておきましょう。

問25、問26は遺伝的影響、倍加線量に関する問題です。遺伝的影響については生物の試験で毎年出題されていますので過去問題をしっかりと解いておけば正答できるかと思います。問26の倍加線量を求める計算問題は2020年にも出題されています。考え方は同じですので、2020年の問題も解いて解き方をしっかりとマスターしておきましょう。

問27は吸収線量を求める計算問題です。単位に注意しながら計算すれば難しい問題ではありません。

問28は粒子線に関する問題です。粒子線に関してはブラッグピークやRBE、がん治療などと合わせて勉強しておきましょう。

問29はα線の特徴に関する問題です。放射線加重係数に関してはα線、陽子線、γ線中性子線に関して暗記しておくことが必要です。選択肢Cの飛程の計算、選択肢Dのホウ素中性子捕捉療法などもよく出題されていますのでしっかりと勉強しておいて下さい。

問30は放射線治療に関する問題です。がん治療が主になりますが、使用される放射線の特徴、放射性核種については代表的なものは暗記しておくことが大切です。選択肢Cは聞きなれない言葉だったかもしれません。

 

問31のⅠはRNAを構成するリボースの構造に関して出題されています。DNAの構造に関しては過去にも出題がありましたが、RNAはあまり出題頻度も少ないため少し難しく感じたかもしれません。リボースとデオキシリボースとの違いを覚えておきたいですね。後半は2016年度の物化問6Ⅳとほぼ同じ問題です。

Ⅱはタンパク質合成における塩基の配列やアミノ酸に関する問題で、2015年の物化生で出題されて以来、非常に出題頻度が高く、最近では2018年、2019年、2020年、そして今年度2021年と連続して出題されています。考え方さえマスターすれば難しい問題ではありませんので、過去問題を何回も解いて解き方を身に付けて下さい。

 

問32のⅠは細胞の生存率曲線とOER、RBEなどに関する問題です。本問題のようにグラフはありませんが、2019年の生物問31Ⅰでも同様の問題が出題されています。OER、RBEの定義をしっかり覚えておけば、(A)(B)で問われているそれぞれを表す式は生存率曲線のグラフから容易に求められます。問17でも酸素効果が出題されていますが、酸素の有無により生存率曲線がどのように変わるかは理解しておきましょう。α/βに関しては問6でも出題されていますが、早期反応、晩期反応の生存率曲線の形状と合わせて理解しておくことが大切です。

Ⅱはしきい線量が存在する確定的影響についての問題です。腸管死については問3で、腸管死の原因であるクリプト細胞については問4でも出題されています。クリプト細胞は2019年の生物問31Ⅱでも出題されています。骨髄死や腸管死などは非常に出題頻度が高い分野ですのでしきい線量なども含めて勉強しておきましょう。