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溶解度に関する過去問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

放射線取扱主任者試験の問題の中には、年に数問はなかなかの難問題が出題されることもあります。試験勉強で過去問題を解いているとき、難しい問題に出会ったときは苦戦したり解くことができなかったりすると思いますが、本番の試験で満点を取る必要はありませんので、難しい問題やどうしても分からい問題を理解しようと、その問題ばかりに気を取られ時間を割くことは賢明とは言えません。それよりも、むしろ基本問題や頻出問題を確実に得点できるように勉強することの方が大切です。(もちろん、時間的に余裕のある人が難しい問題や苦手な分野を克服する勉強を行うことは全く問題ありません)

本番の試験では6割得点できればよいのですから、試験勉強では難しい問題やどうしても苦手な分野に固執せず、基本問題、重要問題、頻出問題そして得意分野でしっかりと得点できるように勉強しましょう。

 

さて、先日、化学分離に関する記事を掲載いたしました。その中から、今日は溶解度に関する過去問題をいくつか掲載いたします。自分で解いてみて、溶解度に関する理解を深めるとともに、溶解度に関する問題が試験ではどんな問題として出題されているのかをしっかりと見ておきましょう。

 

第一種試験

化学

2006年度問22

水溶液中の塩素あるいは臭素の放射分析には110mAgで標識した硝酸銀水溶液による沈殿反応が用いられる。これらに関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。ただし、塩化銀及び臭化銀の溶解度積はそれぞれ1.8×10-10及び3.3×10-13とする。

A 沈殿を生ずる塩素及び臭素の化学形はCl-及びBr-である。

B Br-が含まれていない場合には硝酸銀水溶液を加えて生じた沈殿の放射

   能からCl-定量することができる。

C Cl-が含まれていない場合には硝酸銀水溶液を加えて生じた沈殿の放射

   能からBr-定量することができる。

D 試料水溶液中にCl-及びBr-が共に含まれている場合、硝酸銀水溶液を少

   量ずつ加えることで塩化銀、臭化銀の順で沈殿を得ることができる。

2007年度問22

放射化学分離に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

A 64Cu2+65Zn2+を含む酸性溶液に鉄片を入れると65Znが析出する。

B ヨウ化エチルを中性子照射して生成する128Iの一部は水相に抽出分離

   される。

C 沈殿分離では生成する塩の溶解度積が小さい反応が選ばれる。

D ラジオコロイドはイオン交換樹脂で分離する。

E 水溶液中のリン酸イオン及び硫酸イオンは水酸化鉄(III)に共沈する。

2011年度問25

水溶液中の放射性同位体(RI)の分離法についての次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 キレート抽出ではRIは正の電荷を帯びた分子イオンとして抽出される。

2 イオン会合体抽出ではRI原子どうしが凝集して抽出される。

3 イオン交換クロマトグラフィーではRIは中性分子として捕集される。

4 沈殿法ではRIは溶解度積が大きい塩を形成して沈殿する。

5 蒸留法ではRIは蒸気圧が高い中性分子として蒸留される。

2012年度問21

100kBqの140Baを含む硫酸バリウム(BaSO4)100mgを1Lの水とよく撹拌して混合したとき、水の溶解する140Baの放射能[kBq]に最も近い値は次のうちどれか。ただし、BaSO4の式量は233とし、BaSO4の溶解度積Ksp=[Ba2+][SO2-]=1.0×10-10(mol・L-1)2とする。

2019年度化学問31

(略)

例えば、照射後、試料中に100Bqあった131Baを分離するために、(F)として5.0×10-5mol(10mg)の塩化バリウム(BaCl2)を添加したのち、適切な方法で溶解し、100mLの溶液とする。この溶液に5.0×10-2mol・L-1の希硫酸(H2SO4)を1.0mL加えると、硫酸バリウム(BaSO4)が沈殿する。BaSO4の溶解度積を1.6×10-9mol2・L-2とすると、(ウ)Bqの131Baが沈殿に含まれる。(なお、131Baの減衰、溶液の体積の変化、並びに試料中のBa以外の元素との化学反応は無視してよい。)

(略)

 

物化生

2012年度問4Ⅲ

照射物質と生成RIの分離には種々の化学的手法が用いられる。例として、65Cu(p, n)65Zn反応による65Znトレーサーの製造を考える。荷電粒子反応で照射物質が発熱することや標的核の密度が大きいことから、照射物質は金属銅が望ましい。照射物質が固体の場合には、酸やアルカリ水溶液に溶解して分離を行うことが多い。金属銅は(L)のような(M)のある酸で溶解する。水溶液からの銅と亜鉛の分離にはいくつかの方法が考えられる。(N)では、硫化物イオンとの反応でCuSが沈殿するがZnSは沈殿しないことを利用し、CuSを沈殿として分離する沈殿法がある。一般に無担体のRIは、溶液中で(O)に達して沈殿を生成することはまずない。銅イオンの方が(P)ため、電気分解法では銅を陰極に選択的に析出させることができる。また(Q)の方がクロロ錯体を形成しやすいことを利用して、(R)を使って(Q)を捕集するのも1つの方法である。さらに錯形成能の違いを利用して分離する方法に溶媒抽出法がある。オキシン(8-オキシキノリノール)がpH3では、銅と錯体を形成するが、亜鉛とは形成しないことを利用して、銅の錯体を(S)のような溶媒に抽出して分離することができる。

2013年度問3Ⅰ

難溶性塩CuSの溶解度積Ksp(CuS)は、飽和水溶液における固-液平衡CuS⇆Cu2++S2-のイオン濃度の積Ksp(CuS)=[Cu2+][S2-]で表される。溶液中のイオン濃度の積がKsp(CuS)よりも大きくなると溶液から固体が析出する。S2-は水溶液中で(A)であるH2Sの解離により生成するため、[S2-]は溶液のpHに強く依存し、pHが(B)なると増加する。

64Cu2+を1.0kBq(1.1×10-16mol)と65Zn2+を1.0kBq(5.1×10-14mol)含むCu2+とZn2+の各濃度1.0×10-3mol・L-1の0.3mol・L-1塩酸溶液1Lがある。これにH2Sを吹き込んで飽和させる(この条件では[S2-]=7.6×10-23mol・L-1となる)。ただし、Ksp(CuS)=[Cu2+][S2-]=6.5×10-30(mol・L-1)2、Ksp(ZnS)=[Zn2+][S2-]=2.2×10-18(mol・L-1)2とする。

この操作により硫化銅(Ⅱ)が沈殿し、溶液中に残る銅イオン濃度は64Cu2+と非放射性Cu2+も含めてKsp(CuS)/ [S2-]で表され、8.6×(C)mol・L-1となる。なお、1.0kBq・L-164Cu2+のみで硫化物は(D)。一方、[Zn2+]と[S2-]との積は7.6×(E)(mol・L-1)2であり、この値はKsp(ZnS)より小さいので65Zn2++ Zn2+は沈殿しないで溶液中に残り、Cu2++64Cu2+とZn2++65Zn2+の相互分離が可能になる。

このような難溶性塩の生成を利用して、各種の放射性核種を相互に分離することができる。例えば、26Al3+64Cu2+65Zn2+137Cs+とそれぞれの担体を含む0.3mol・L-1塩酸溶液に、H2Sを通すと64Cu2+が硫化物として沈殿する。沈殿をろ別後、ろ液を沸騰させてH2Sを追い出した後に、アンモニア水を過剰に加えると(F)のみを水酸化物として沈殿分離することができる。次いで、そのろ液にH2Sを通じると(G)が硫化物として沈殿し、(H)が溶液中に残る。

2014年度問4Ⅰ

水溶液から目的物質を固体の沈殿として分離する場合、固体の水への溶解度が分離の効率(収率)を決定する。一般に陽イオンAと陰イオンBからできている水への溶解度が小さい難溶性塩AmBnの沈殿が生成するとき、水溶液中でのイオンと固体は(A)溶解平衡になっている。それぞれのイオンの水溶液中の濃度を[A]、[B]とすると、

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という関係が成り立つ。Kspは(B)と呼ばれる定数である。Aを含む水溶液とBを含む水溶液を混合したときに、式(1)の右辺がKspを上回るときにはAmBnの沈殿が生成してAやBの濃度が下がり、式(1)が成立したところで平衡になる。

難溶性塩であるBaSO4の場合には、Ksp=1.0×10-10mol2・L-2である。140Ba(半減期12.8日=1.1×106秒)が70MBqあると、その物質量はおよそ(イ)molである。これが硝酸塩として溶解している水溶液Xの500mLと、濃度0.02mol・L-1のNa2SO4水溶液Yを500mL混合しても[140Ba][SO42-]<Kspであって、140Ba2+は沈殿しない。もし0.02molの非放射性Ba(NO3)2を500mLのXに担体として溶解しておくと、500mLのYとの混合により140Ba2+を沈殿させることができるが、この担体量では140Ba2+のうち(ウ)%が沈殿せずに溶液中に残る。放射性同位体イオンの沈殿分離を行う際には十分な量の担体を加えておくことが必要である。

 

管理測定技術

2006年度問3Ⅰ

作業中の化学変化についての予測は、放射性同位元素の化学的挙動の予測だけでなく、危険な反応の進行や放射性同位元素の飛散等による放射線被ばくの抑止の上で重要である。例えば、基礎的な放射化学分離法として沈殿分離法や溶媒抽出法があるが、それぞれの化学反応に関わる定数である(A)及び(B)から、それぞれの分離状況を予測することができる。また、pHなどの実験条件の変化による放射性同位元素の挙動の変化も、このような反応に関する定数から予測することができる。実際の実験では、様々な化合物が混在するような複雑な系となる場合が多く、あらかじめ、(C)実験を行って、作業計画を精密化していくことが必要とされる。気体の発生を伴う反応は、放射性気体の発生の他に、急速な(D)による物質の飛散を招く可能性がある。同様の意味で、(E)を発生する反応も、突沸等による放射性物質の飛散を招く可能性があることからも、対策をたてておく必要がある。