ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
コロナウィルスの影響はまだ依然とありますが、GWも終わりましたので、それぞれの目標に向かって一日一日を頑張って下さい。
少し前にアクチノイド元素に関する記事を掲載しましたが、今日はアクチノイド元素の中でも放射線取扱主任者試験で最も出題頻度の高い重要核種ウランについて、問題を解きながら重要事項を覚えていきましょう。
A 熱中性子による235Uの核分裂では、質量数が110から125の核分裂生成物が最も多
く生成する。
B 熱中性子による235Uの核分裂生成物は、β-壊変するものが多い。
C 熱外中性子による235Uの核分裂では、わずかではあるが共鳴反応によってAm及
びCmが生成する。
D 高速中性子による235Uの核分裂生成物は、α壊変するものが多い。
E 冷たい中性子(cold neutron)による235Uの核分裂では、中性子の運動量が非常
に小さいため、質量数が118の核分裂生成物が最も多く生成する。
では、問題を見ていきましょう。
熱中性子による235Uの核分裂では、質量数がおおよそ90から100と135から140くらいの核分裂生成物が多く生成されます。よって、選択肢Aは誤り。
熱中性子による235Uの核分裂生成物は安定核種に比べて中性子を過剰に持つものが多いため、原子核内の中性子が陽子に壊変するβ-壊変するものが多く生成します。例えば、90Srや99Mo、131I、133Xe、140Baなどを多く生成します。よって、選択肢Bは正しい。
核分裂反応は、不安定な核種が分裂してより軽い二つ以上の元素を生成する反応であるため、原子番号がウランより大きいアメリシウムやキュリウムは生成しません。よって、選択肢Cは誤り。
熱中性子による235Uの核分裂と同様、高速中性子による235Uの核分裂でもβ-壊変するものが多く生成します。よって、選択肢Dは誤り。
中性子のエネルギーが低くなれば、より生成核種の割合も小さくなります。よって、選択肢Eは誤り。
よって、正しい記述は選択肢Bになります。
235Uの熱中性子による核分裂反応の収率曲線は下図のようになります。
放射線概論にも掲載されてていますので、おおまかな形状、横軸の数値、縦軸の数値は覚えておくとよいでしょう。(質量数で90-100と135-140付近に収率の極大の山のピークが見られ、その収率はおよそ7%であること、また質量数が110-120くらいで収率の極小の谷が見られること)
過去には以下のような問題も出題されています。
2016年度第一種試験化学問9
C 分裂片の質量分布は質量数95付近と140付近にピークを持つ。
また、熱中性子や高速中性子のエネルギーもおおまかでよいので覚えておくと役に立ちます。
熱中性子はおよそ0.025eV、高速中性子はおよそ0.1から1MeV以上のエネルギーを持つ中性子と覚えておけばよいでしょう。
熱外中性子はあまり聞きなれない語句かもしれませんが、原子力百科事典ATOMICAによると以下のように書かれています。
ほぼ0.5〜100eVのエネルギー範囲のものをいい、熱中性子よりもやや高いエネルギーを持つ中性子で、共鳴中性子よりもエネルギーの低い中性子をいう
冷たい中性子とは非常に遅い、エネルギーの低い中性子(およそ0.005eV以下くらい)のことをいいます。
2017年度第一種試験化学問6
235Uの熱中性子核分裂により生成しやすい(累積核分裂収率の大きい)核種の組合せは次のうちどれか。
1 7Be 131I 2 75As 137Cs 3 90Sr 160Gd 4 99Mo 140Ba5 104Ru 114Cd
2015年度第一種試験化学問3
熱中性子による235Uの核分裂で、累積収率が1%以上で生成する核種の組合せは次のうちどれか。
A 77As B 90Sr C 111Ag D 133Xe E 153Eu
2011年度第一種試験化学問11
熱中性子による235Uの核分裂で生成する収率が大きい核種の組合せはどれか。
A 60Co B 90Sr C 99Mo D 111Ag E 133Xe
2010年度第一種試験化学問11
熱中性子による235Uの核分裂において、収率1%以上で生成する核種の組合せは次のうちどれか。
A 77As B 99Mo C 111Ag D 131I E 156Eu
ウランに関係することとして、ウラン系列、トリウム系列、ネプツニウム系列、アクチニウム系列の4つの壊変系列を作る天然放射性核種も放射線取扱主任者試験では非常によく出題されています。しっかりと勉強して全て暗記するようにして下さい。