ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
先日の記事ではウランに関する問題を一緒に解いてみました。
今日も関連事項の問題をひとつ掲載しますので一緒に解いてみましょう。
問
次の記述のうち誤っているものはどれか。
A 天然に存在するウランのうち、熱中性子によって核分裂を起こすものは主にウラ
ン235である。
B 入射中性子のエネルギーが高いと、ウラン238は核分裂を起こすことがある。
C 天然に存在するトリウムには親物質のみが含まれている。
D プルトニウム239はネプツニウム239がβ-壊変して生成される。
E 天然に存在するウラン235は、主に自発核分裂によってその数を減らしている。
天然に存在するウランとしては、238U、235U、234Uの3つがありますが、235Uのみ熱中性子との間で核分裂反応を起こします。先日の記事でも書きましたが、238Uは高速中性子では核分裂を起こします。よって、選択肢Aと選択肢Bは正しい。
天然に存在するトリウムは232Thのみです。232Thは壊変系列を作る天然放射性核種でトリウム系列の最初の核種(親核種)になります。よって、選択肢Cは正しい。
トリウム系列は232Thから始まり208Pbで終わります。232Thの半減期140億年と合わせて必ず覚えておきましょう。
プルトニウムは人工的に生成されたものがほとんどですが、ウラン鉱石中にも僅かに存在しています。これは、238Uが中性子を捕獲して239U になり、239Uが2回のβ-崩壊により変化して生成されたものです。核反応式で書くと以下のようになります。
よって、選択肢Dは正しい。
235Uは自発核分裂を起こしますが、その半減期は非常に長くおよそ1019年ほどとなります。235Uのα壊変の半減期は7億年(7×108年)ほどですので、235Uのそのほとんどはα壊変により減少していきます。よって、選択肢Eは誤り。
よって、誤っている記述は選択肢Eとなります。
天然に存在するウランとして、238U、235U、234Uの3つを覚えておきましょう。
原子力百科事典ATOMICAからの抜粋
天然ウラン
天然に産するウランをいう。資源としてのウランを指す場合と濃縮ウランや劣化ウランとの対比で、同位体組成が天然組成のものを指す場合とがある。平均的な同位体組成は238Uが99.274%(99.278重量%)、235Uが0.720%(0.711重量%)、234Uが0.0058%(0.006重量%)である。このうち235Uは熱中性子で核分裂を行うために、軽水炉ではその割合を3〜5%程度に高めた濃縮ウランを燃料に用いる。また、中性子の吸収が少ない重水または黒鉛を減速材に用いることによって、この天然組成のウランを用いても原子炉を作ることができる。
壊変系列をつくる放射性核種は以下の4つを必ず覚えておきましょう。
トリウム系列(4n) :232Th(140億年) → 208Pb
ネプツニウム系列(4n+1) :237Np(214万年) → 205Tl
トリウム系列(4n) :232Th(140億年) → 208Pb
ネプツニウム系列(4n+1) :237Np(214万年) → 205Tl
ウラン系列(4n+2) :238U(45億年) → 206Pb
アクチニウム系列(4n+3) :235U(7億年) → 207Pb
本ブログの天然放射性核種の記事を参考にして下さい。
自発核分裂に関しては放射線取扱主任者試験では252Cfが最も 重要核種になります。
本ブログのカリフォルニウム(252Cf)の記事を参考してしっかりと勉強しておいて下さい。