ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
先日、中性子線の記事で重要公式を2つ掲載しました。
中性子に関係する公式
①物質との相互作用における反跳エネルギーの公式
②放射化分析に関する公式
今日は、公式②について勉強しましょう。
公式②は放射化分析で生成する放射性核種の放射能を求める公式です。
放射化分析では、分析しようとする試料(ターゲット元素)に主に中性子を照射して核反応を起こさせ、生成する放射性核種の特性として半減期や放射線の種類、エネルギー、放射能の強さを分析することができます。
では、この放射化分析の公式②を使用する過去問題、2020年度第一種試験実務問3Ⅰを一緒に解いてみましょう。
2020年度第一種試験実務問3Ⅰからの抜粋
設問の(B)は公式②そのものですね。飽和係数という言葉も覚えておきましょう。
(B)
この飽和係数は、照射時間tが生成核の半減期と等しいときは、
となり、0.5となります。
問題文章中には記載がありますね。
tが十分に小さいときは、この e-λt は以下のように近似することもできます。
この近似式は暗記しておきましょう。
この近似式の導き方までは覚える必要はありませんが、マクローリン展開を使用することで導くことができます。
この近似式を用いると、飽和係数は以下のようになりきます。
(C)λt
設問(D)を解くために、公式②に代入する数値を整理しましょう。
f:中性子フルエンス率 5.0×1013 [cm-2・s-1]
σ:放射化断面積 36 [mb] = 36×10-3 [b] = 36×10-3×10-24 [cm2]
N:金属亜鉛箔 654[mg]の原子数(原子数はアボガドロ数×モル数)
T:生成核(64Cu)の半減期 762分
t:中性子照射時間 76分
照射時間tは76分であり、生成核種(64Cu)の半減期の762分より十分短いので、公式②は、上述の近似を用いて簡単な式にすることができます。
この式に代入して生成核(64Cu)の放射能を求めます。
まず、λtの部分を計算しましょう。
λは壊変定数ですので、以下の公式を用います。
よって、λtの部分は、
となります。
次に、fσNの部分を計算すると、原子数Nはアボガドロ数×モル数で、64Znの同位体存在度が49%であることを考慮して、
となるので、
よって、
となり、正答は 3.7×108 [Bq] です。
放射化分析に関する計算問題も非常によく出題されていますので、過去問題をたくさん解いて公式②も自分で使えるように身に付けて下さい。
次回は放射化分析に関する過去問題を掲載します。