ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も先日に引き続き2019年度実務の試験問題4Ⅰを見てみましょう。
前半部分から重要事項を記事にしてみます。
2019年度実務問4Ⅰ
○月×日 使用核種をそれぞれ1~10kBq含むとみられる廃液(水溶液)について、各核種の濃度を求めた。まず、廃液試料の一定量をプラスチック製容器にとり、そのまま(A)によって(B)の放射能濃度を求めた。(B)を除去した後、蒸発法による前処理後、端窓型GM検出器で計数した。さらに、試料とGM検出器間に適当な厚さのアルミニウム板を置いて計数し、(C)以外の2核種を定量した。
先月半ばに新規に追加購入した液体シンチレーションカウンタの利用についても分析条件などの検討を継続した。昨日に続いて、(B)を除去した廃液試料の一部をとり、チェレンコフ光計測による(D)の定量を試みた。その結果は、以前より使用してきた液体シンチレーションカウンタによる測定あるいは端窓型GM検出器による測定の結果と、誤差の範囲で一致した。
前半部分の正答は(A)Ge半導体検出器、(B)137Cs、(C)3Hとなります。
「試料とGM検出器間に適当な厚さのアルミニウム板を置いて計数し…」とは、β-線放出核種についてアルミニウム中での飛程から核種を同定するフェザー法に関する内容です。
フェザー法
線源から放出されるβ-線に対して、物質をβ-線の入射方向に垂直に入れると、物質を透過するβ-線の数は物質の厚さが増していくに従って指数関数的に減少します。透過するβ-線の数がゼロになる厚さがこのβ-線のその物質における最大飛程と考えることができます。最大飛程は厚さを [g・cm-2] の単位で表せば、任意の物質についてほぼ同じぐらいの値になることが知られています。
物体の厚さに対するβ-線の計数率を測定して描いた図を吸収曲線と呼びます。一般的には後方散乱が起こりにくいアルミニウムが物質として使用されます。
(出典 原子力百科事典ATOMICA)
上図は32Pのβ-線の吸収曲線で、横軸はアルミニウム板の厚さ、縦軸は計数値になっています。(縦軸は対数目盛)
β-線の吸収曲線はGM計数管の種類や線源と計数管の距離、線源の形状、吸収体の種類などといった計数管の線源に対する幾何学的形状で異なるため、フェザー法では未知試料と同一条件で測定した標準試料の吸収曲線が必要となります。
吸収曲線から最大飛程が分かれば、以下の式(フェザーの式)からβ-線の最大エネルギーを知ることができます。
○β線のアルミニウム中での最大飛程[g/cm2]
過去問題の中には、問われている設問以外にも多くの重要事項が記載されています。