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X線に関する問題2

ブログをご覧のみなさん、こんにちは。

X線に関して基本的な内容を記事にしています。

放射線取扱主任者試験では、X線に関する問題は必ず毎年出題されています。

定義、用語、公式など基本的なことを押さえ、そして過去問題をできるだけ多く解くことで理解を深め実力を養っていきましょう。特に計算問題は過去問題を多く解くことで解き方も身に付き得点につながります。

今日もX線に関する演習問題を一緒に解きながら重要事項を覚えていきましょう。

 


X線の減弱に関する次の文中の(A)から(C)の組合せとして正しいものはどれか。

「単一エネルギーのX線の細い平行線束が厚さxの吸収体に垂直に入射する場合、入射したX線の強度をI0、透過した直後のX線の強度をI、(A)をμとすれば、Iは次式によって表される。

 イメージ 1

線束が太いときには、ビルドアップ(再生)係数Bを用いて、(B)式によって表される。この式において、Bは1より(C)」

 ① (A) 質量減弱係数 (B) I = I0・e-Bμx   (C) 小さい

 ② (A) 線減弱係数  (B) I = I0・e-Bμx   (C) 大きい

 ③ (A) 質量減弱係数 (B) I = I0・e-μx/B  (C) 小さい

 ④ (A) 線減弱係数  (B) I = B・I0e-μx (C) 大きい

 ⑤ (A) 質量減弱係数 (B) I = B・I0e-μx (C) 小さい


 

放射線概論では、X線の減弱は「光子と物質の相互作用」の章に書かれてあります。

光子は物資中を進みながらそのエネルギーを失っていきます。光子が物質を通過したとき、物質との相互作用によりエネルギーが減弱される割合を線減弱係数として定義しています。一般的に線減弱係数はμで表されます。

光子の減弱を表す式(必ず暗記すること)

 イメージ 1 

 I0:入射光子の数 x:通過する物質の厚さ μ:線減弱係数 

 I:物質を通過後の光子の数

この式から物質を通過後の光子の数は指数関数的に減少していくことが分かります。光子のエネルギーが減弱していく(弱まっていく)ことを意味しています。

線減弱係数μの単位は[m-1]または[cm-1]で表されます。放射線取扱主任者試験では線減弱係数μの単位も非常によく出題されていますので、必ず単位も暗記しておきましょう。

 

光子の減弱を表す式は半価層や1/10価層の公式を導くときにも使用します。

半価層は光子の数(エネルギー)を1/2にするのに要する物質の厚さ x1/2 で、1/10価層は光子の数(エネルギー)を1/10にするのに要する物質の厚さ x1/10 です。光子の減弱を表す式の I に 1/2×I0 、または 1/10×I0 を代入して x を計算すれば半価層、1/10価層の公式を導くことができます。

 f:id:radioisotope_f:20200823094428g:plain  f:id:radioisotope_f:20200823094451g:plain

 

線減弱係数μが分母にあることからも分かるように、μの値が大きくなれば光子が物質と相互作用を起こす確率が高くなるので半価層や1/10価層は小さくなります。

 

ビルドアップ係数は原子力百科事典ATOMICAでは次のように書かれてあります。

原子力百科事典ATOMICA ビルドアップ係数

放射線束の減衰計算を行う際用いる「散乱による補正計数」で、放射線遮蔽の用語である。放射線がコンクリートや鉛などの媒質を透過するとき、任意の点でのガンマ線あるいは中性子線などの全放射線量と散乱(衝突)することなくその点に到達する放射線(直接線という)の量の比で定義される。この係数は、放射線の種類やそのエネルギー、幾何学的条件に依存しており、放射線遮蔽の専門書には表として与えられている。

上述した光子の減弱を表す式は、ビルドアップ係数 B を考慮すると以下の式になります。放射線概論ではX線の強度 I が光子束 Φ になっています。

 f:id:radioisotope_f:20200823095230g:plain (この式も暗記しておきましょう)

 

光子束が非常に細い(”コリメートされた”と表現される)場合はビルドアップ係数 B は B≒1として差し支えありませんが、そうでない場合はビルドアップ係数は以下の式で表されます。

 f:id:radioisotope_f:20200823095948g:plain  (この式も暗記しておきましょう)

 Ns:散乱光子数 Na:全光子数

 

この式からも分かるようにビルドアップ係数 B は B≧1 となります。

 以上のことから、(A)線減弱係数(B)I = BI0e-μx(C)大きいとなりますので、正答は④です。

 

放射線取扱主任者試験では、光子の減弱に関する問題は非常によく出題されています。次回は実際の過去問題を掲載致します。