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線減弱係数に関する問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

昨日、光子と物質の相互作用に関する内容として、線減弱係数の記事を紹介しました。今日は線減弱係数を使用した演習問題を一緒に考えてみましょう。

 


60Co密封線源を格納している肉厚5cmの鉛容器Aがある。この鉛容器Aから透過するγ線の強度を1/5に減らすためには肉厚何cmの鉛容器Bにこの線源を格納すればよいか。ただし、60Co γ線に対する鉛の質量減弱係数を6.0×10cm2・g-1、鉛の密度を11.35g・cm-3、ln5=1.61として散乱γ線の影響は考えないものとする。


 
光子が物資中を進むとき光子は物質との相互作用によりエネルギーを失っていきます。その減弱される割合は線減弱係数として定義され、線減弱係数が大きくなると光子は物質と相互作用を起こしやすくエネルギーを失う割合も大きくなります。このことは昨日の記事でも記述しましたが非常に大切なことですのでしっかりと覚えておきましょう。
 
光子の減弱を表す以下の式もしっかり頭に入れておきましょう。

 イメージ 1
 I0 :入射光子の数 x:通過する物質の厚さ μ:線減弱係数  
 I:物質を通過後の光子の数 
 
本問題では、鉛容器Aから透過するγ線の強度を減らす目的で新たな鉛容器Bを使用します。鉛容器Aから透過するγ線の強度をI0 とし、鉛容器Bから透過するγ線の強度をI とすると

 f:id:radioisotope_f:20200325111320j:plain

γ線強度を減らす割合は1/5ですので
 

 f:id:radioisotope_f:20200325111625g:plain

 

となります。

鉛容器Bの肉厚をxcm、60Co γ線に対する鉛の線減弱係数をμとして、上述の光子の減弱を表す式に代入すると、
 

 f:id:radioisotope_f:20200325111835g:plain

両辺の自然対数を取ると、

 

 f:id:radioisotope_f:20200325112046g:plain

 
変形して、
 

 f:id:radioisotope_f:20200325112417g:plain

 

 f:id:radioisotope_f:20200325112442g:plain

 

ここでln e=1であるので、肉厚xについて解くと、

 

 f:id:radioisotope_f:20200325112708g:plain

 

となります。これは昨日勉強した半価層、1/10価層の導き方と同じですね。半価層のln 2、1/10価層のln 10をln 5に置き換えただけに過ぎません。

 

さて、問題文に60Co γ線に対する鉛の質量減弱係数は6.0×10cm2・g-1、鉛の密度は11.35g・cm-3と与えられています。質量減弱係数μmは線減弱係数μを密度ρで除したもので以下の関係があります。

 

 f:id:radioisotope_f:20200325113239g:plain

 

60Co γ線に対する鉛の線減弱係数をμを求めてみると、

 

 f:id:radioisotope_f:20200325113558g:plain


よって、線減弱係数μは、

 

 f:id:radioisotope_f:20200325113906g:plain

 

この線減弱係数μの値を用いて鉛容器Bの肉厚xを求めてみると、ln5=1.61として、

 

 f:id:radioisotope_f:20200325114124g:plain


  f:id:radioisotope_f:20200325114253g:plain

となります。

 

よって、肉厚5cm(鉛容器Aの肉厚)+2.36cm(鉛容器Bの肉厚)=7.36cmの鉛容器に60Co密封線源を格納することで、鉛容器Aに格納する場合に比べて透過γ線を1/5に減少させることができることになります。

 

光子の減弱に関しては、本問題では光子強度を1/5に減弱させる問題でしたが、過去問題では半価層の計算や1/10価層の計算などが非常によく出題されています。必ず自分で計算できるようにしておくことが大切です。

また、これらの問題を解くためには基本的な自然対数の計算も必要になってきます。対数や指数に関しては基本的な公式を覚えておけば難しいことはありません。過去問題を解きながら取得していきましょう。