放射線取扱主任者試験に合格しよう!

資格取得を目指す皆さんを応援します

電子対生成

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今週は光子と物質の相互作用に関して記事を掲載しています。

昨日までにコンプトン散乱、光電効果について記載しましたので、今日は電子対生成に関しての記事になります。
 
電子対生成
 光子が物質の原子核の電場で電子と陽電子を生成する反応

 

f:id:radioisotope_f:20200311102545p:plain

 

電子対生成で覚えておきたいことは、
・入射光子エネルギーが1.022MeV以上のとき起こりうる
・生成した陽電子は電子と結合し0.511MeV の2 本のγ線(消滅γ線、消滅放射線)を

 反対方向に放出して消滅する
・生成した電子と陽電子のエネルギーは、入射光子のエネルギーをEとすると、それ

 ぞれ「0~ E-1.022 MeV」までの範囲の連続スペクトルである
・電子対生成の断面積は物質の原子番号の2 乗に比例し、光子のエネルギーが大きく

 なる程起りやすくなる

など


電子対生成は電子と陽電子の2つを生成するのでしきいエネルギーが存在し、入射光子のエネルギーが電子の静止エネルギー0.511MeV と陽電子の静止エネルギー0.511MeV の和である1.022MeV 以上でないと起こりません。

生成した陽電子が電子と結合して消滅するときに反対方向に消γ線(消滅放射線線)を放出するのであって、電子と陽電子が反対方向に放出されるわけではありません。
さらには消滅γ線陽電子が電子と結合し消滅した位置で放出され、電子対生成が起こった位置で放出されるわけではありません。

過去問題では電子対生成の問題は非常によく出題されていますが、陽電子に関しても時々出題されていますので、陽電子の特徴も押さえておきましょう。

 

陽電子

 陽電子(β+線)は電子(β-線)の反粒子ですので、基本的にはβ-線と同じ振る舞いをします。β-線と同様、制動放射線も放出し、また質量も同じになります。β+線の最大飛程はβ-線の最大飛程とほとんど同じになります。
 β+線とβ-線の違いは、β+線は電子と結合して消滅するときに0.511MeVの2本の光子(消滅放射線)を放出することです。β-線は消滅放射線は放出しません。
 また、β+線のエネルギースペクトルはβ-線と同じで連続スペクトルになりますが、その形状は異なります。
 

2010年度第一種試験物化生問2Ⅲの問題を掲載します。

電子対生成に関して基本的な内容ですので、文章すべて暗記するくらいの気持ちで何回も読んで下さい。

2010年度物化生問2Ⅲ

原子核周辺の(Q)クーロン場の中で光子が消滅し、一対の電子と陽電子が生成される現象を電子対生成と呼ぶ。電子と陽電子は質量を有することから、この現象は光子のエネルギーが電子の静止質量エネルギーの2倍以上でないと起こらない。生成した陽電子は電子の(R)反粒子であり、電子と結合すると(S)0.511MeVの2個の(T)消滅放射線を互いに反対方向に放出する。

 

電子対生成に関する近年の第一種試験物理の課目から過去問題を掲載します。

自分で解いて電子対生成について理解を深めて下さい。

 

第一種試験

2019年度物理問19

電子対生成に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 電子対生成によって作られた陽電子は、同時に生成された電子と結合

   して消滅する。
B 電子対生成によって作られた陽電子のエネルギーと電子のエネルギー

   は等しい。
C 電子対生成の原子当たりの断面積は物質の原子番号のほぼ2乗に比例す

   る。
D 光子と原子核の電場との相互作用により生じる。
E 電子対生成によって作られた陽電子の真空中での寿命は約15分であ

   る。

2017年度物理問17

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 電子対生成には、電子の静止質量の2倍以上に相当する光子エネルギー

   が必要である。
B 電子対生成で生じた電子と陽電子は、互いに180度方向に放出される。
C 電子対生成で生じた陽電子は、3つの光子を放出して消滅することがあ

   る。
D 電子対生成の断面積は、物質の原子番号の3乗にお比例して大きくな

   る。

2016年度物理問18

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A K吸収端のエネルギーは、金よりも鉛の方が高い。
B 100keVの光子と空気との相互作用において、コンプトン散乱の断面積

   よりレイリー散乱の断面積の方が大きい。
C 1MeVの光子に対するコンプトン散乱の断面積は、鉄よりアルミニウム

   の方が大きい。
D 5MeVの光子と水との相互作用において、電子対生成の断面積よりコン

   プトン散乱の断面積の方が大きい。

2013年度物理問13

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 電子対生成により生じた電子と陽電子は光子の入射方向に対して90°の

   角度で放出される。
B 電子対生成では光子の全エネルギーが電子及び陽電子の運動エネル

   ギーに転移する。
C 電子対生成が起きると特性X線又はオージェ電子が放出される。
D 電子対生成が起きる確率は物質の原子番号のほぼ2乗に比例して増加す

   る。

 

光子と物質の相互作用に関しては、光電効果、コンプトン散乱、電子対生成をしっかりと押さえておくことが重要です。

光子と物質の相互作用に関する過去問題としては、基本的で良い問題が第二種試験の文章問題で見られます。これらの過去問題を何回も解いて文章を覚えるくらいの気持ちで勉強すれば、基本的な内容はしっかり頭に入れることができます。

次回は光子と物質の相互作用に関する問題として、第二種試験の文章問題をいくつか紹介したいと思います。