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リン酸トリブチル(TBP)について

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

前回、前々回とランタノイド元素、アクチノイド元素についての記事を紹介しました。放射線取扱主任者試験では暗記することで得点できる問題を取りこぼさずに確実に得点していき、1点1点を大切にしていくことが合格への近道です。

元素、周期表は確実に覚えるようにしましょう。

 

今日はランタノイド元素、アクチノイド元素に関係する化合物としてリン酸トリブチル(TBP)について書きたいと思います。放射線取扱主任者試験で頻繁に出題される化合物ではありませんが、覚えておくと役に立つ化合物です。

 

原子力百科事典ATOMICAではリン酸トリブチルは以下のように記述されています。

リン酸トリブチル(TBP)

ウラン精鉱からウランを精製する際の溶媒抽出プロセス、使用済燃料再処理の際の溶媒抽出プロセス等で使用される溶媒。

化学式は(C4 H9)3PO4。融点は−80℃、沸点は289℃、比重は0.98(25℃)で、水には難溶であるが、有機溶媒には容易に溶解する。放射線分解及び加水分解によりMBP(リン酸モノブチル)を生成する。ランタノイド元素、アクチノイド元素を酸溶液から選択的に抽出する性質があり、硝酸に対して安定であること、耐放射線性も比較的高いことから、ドデカンなどと混合して、粘度、比重を調整して再処理用抽出溶媒として用いられる。

 

リン酸トリブチルは核燃料再処理において使用済み核燃料からプルトニウム(Pu)とウラン(U)を抽出するPUREX法という抽出方法に利用される化合物です。

使用済み核燃料を硝酸に溶解させた後、炭化水素(一般的にはn-ドデカンなど)の溶媒に30%のリン酸トリブチル(TBP)を溶かしたものを加えると、ウランとプルトニウムはTBPと錯体を形成して有機相に抽出されます。その一方で、核分裂により生成した超ウラン元素であるアメリシウム(Am)やキュリウム(Cm)は水相に残るので有機相のみを取り出せばウランとプルトニウムを分離することができます。

 

放射線取扱主任者試験では、核処理に関しては覚えておく必要はありませんが、溶媒抽出法は非常に重要ですので過去問題でしっかり勉強しておきましょう。

 

リン酸トリブチル(TBP)が出題された過去問題です。

2007年度第一種試験物化生問4Ⅱ

溶媒抽出法では、溶質の抽出特性を表す指標として分配比が用いられる。有機相中の溶質の全濃度をCO、水相中のそれをCAとすると、分配比は(A)で表される。通常は有機相への抽出を増すために(B)等の抽出剤を有機相に加える。有機相を30%リン酸トリブチル/n-ドデカン、水相を硝酸溶液とした時の、いくつかの金属元素について分配比を表に示す。

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等容積の有機相と3M硝酸溶液を用いた1回の抽出では、U(VI)は(C)%が有機相に抽出され、Eu(III)とTc(VII)は(D)%が水相に残ることがわかる。この水相に対して、新たに等容積の有機相を用いて2回目の抽出を行うと、水相中に残るU(VI)量は、最初に存在した量の(E)%となる。

2006年度第一種試験化学問16

90Srに関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A ウランの核分裂によって生成する。

B 壊変する際にγ線を放出する。 

C 人体に摂取されると骨に沈着する。 

D アルカリ土類金属元素である。 

E 塩酸酸性溶液からリン酸トリブチル(TBP)へ抽出される。

2008年度第一種試験化学問7

32Pで標識したリン酸トリブチル(TBP)を合成したところ10MBqを含む1.0gの製品を得た。この製品の化学純度は90重量%、放射化学純度は86%であった。この[32P]TBPの比放射能[MBq・g-1]として最も近い値は次のうちどれか。