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計数率や標準偏差に関する問題③

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も演習問題を掲載します。計数率や標準偏差などの統計に関する問題です。
統計の問題は苦手な人が多いかもしれませんが、放射線取扱主任者試験では第一種、第二種ともに出題されています。公式をしっかりと暗記し過去問題を繰り返し解いておけば基本的な問題は正答できるようになりますので頑張って下さい。
今日の問題は少し難しいかもしれませんが一緒に解いてみましょう。

問 GM計数装置で、あるβ線とバックグラウンドをそれぞれ1分ずつ測定したところ、β線源の計数値は6,600カウント、バックグラウンドは300カウントであった。この測定の全計数効率を10%として、そのβ線放射能[Bq]と標準偏差に最も近い値は次のうちどれか。
 ① 105±1.4
 ② 1,050±14
 ③ 1,050±83
 ④ 6,300±83
 ⑤ 630±8.3

公式のおさらいです。
計数時間を 、試料の計数値を とすると、計数値の誤差は となります。
計数率は のため、計数率の誤差は となります。
 
同様に、
バックグランドの計数値を とすると、その誤差は となります。
計数率は のため、計数率の誤差は となります。

よって、
 正味の計数率は    誤差は   

となります。
では問題を解いてみましょう。
β線源の1分間測定時の計数値は6,600カウントですので、これを計数率に換算すると、
 
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バックグラウンドの1分間測定時の計数値は300カウントですので、これを計数率に換算すると、
 
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よって、正味の計数率は、
 
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一方、公式からβ線源の1分間測定時の計数値6,600カウントの誤差(標準偏差)は、
 
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よって、計数率の誤差(標準偏差)は、
 
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同様に、バックグラウンドの計数率の誤差(標準偏差)は、
 
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よって、公式から正味の計数率の誤差(標準偏差)は
 
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以上が、計数効率を考えない場合の正味の計数率と誤差(標準偏差)になります。
本問題では、計数効率10%を考えなくてはなりませんので、続きがあります。
計数効率10%を考慮した正味の計数率は、1分間の計数値が10倍(1/0.1)に増えるだけですので、結果として計数率も10倍になり、
 
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または計数効率10%で除して
 
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となります。
計数効率を考慮した場合の誤差(標準偏差)は放射線概論にも公式が載っています。
(第7版放射線概論P.416 式(6-4))
正味の計数率がxn[s-1]、その誤差がσnであったとすると、測定器の検出効率がεでその誤差がσεと分かっているとき、線源の放射能s[Bq]とその誤差σsは以下の式で与えられます。
 
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この公式を用いると、放射能は上述した式と同じで
 
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また、誤差(標準偏差)は、本日の演習問題ではεが与えられていませんので、ε=0とすると、上の公式は以下のように簡単な式になります。
 
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よって、正味の誤差(標準偏差)は、
 
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よって、
計数効率10%を考慮した場合の正味の計数率(放射能)とその誤差(標準偏差)は、
 
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となりますので、正答は②となります。
 
放射線取扱主任者試験では、過去には計数効率まで考慮した統計問題は出題されていないように思いますが、できれば計数効率を考慮した正味の計数率、誤差(標準偏差)の公式も覚えておくと良いかと思います。
計数率や標準偏差に関する問題は、平成30年度では第一種試験では管理測定技術問1Ⅱで、第二種試験では管理技術Ⅱ問12で出題されています。基本的な問題は公式を暗記しておけば解けますので、必ず過去問題を通して勉強しておきましょう。
 
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