ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
一昨日の記事で、
「水酸化鉄(Ⅲ)(Fe(OH)3)は、90Sr-90Yの溶液から90Yを分離する際の共沈剤として使用されることは必ず覚えておかなくてはなりません」
と記載しました。
今日はこれに関連する放射化学分離の演習問題を一緒に解いてみましょう。
試験でも非常によく出題されている分野ですので、しっかりと暗記しましょう。
問 次の放射化学分離に関する記述において、(a)~(d)に入る用語はとして正しい組合せは①~⑤にのうちどれか。
無担体の90Srのみを含む水溶液中にはβ-変壊変によって娘核種の90Yが次第に生成してくる。この溶液に、非放射性のSrとYを担体として加えた後、(A)にすると、90YはYとともに水酸化物として沈殿し、90SrはSrとともに水溶液中に残るため、90Srと90Yを分離することができる。もし、非放射性のSrを加えない場合には、90Srは(B)になりやすく、Yの水酸化物に取り込まれる可能性がある。この現象を(C)という。また、90Srを溶液中に残すために加えたSrのことを(D)と呼んでいる。
(A) (B) (C) (D)
① アルカリ性 ラジオコロイド 共沈 保持担体
② 酸性 ラジオコロイド 共沈 スカベンジャ
③ 酸性 イオン ミルキング 保持担体
④ アルカリ性 酸化物 ミルキング スカベンジャ
⑤ アルカリ性 イオン 共沈 スカベンジャ
90Srと90Yが永続平衡になることは必ず覚えておかなくてはならない重要事項です。
90Srと90Yは、90Yを沈殿させることにより分離することができます。
Fe3+やY3+は溶液を(A)アルカリ性にすることで、Fe(OH)3、Y(OH)3として沈殿しますので、90YはこのFe(OH)3、Y(OH)3と一緒に沈殿させることができます。
90Srと90Yが共存する溶液に、非放射性のFe3+やY3+を加えることで、90Yを沈殿により90Srから分離することができるのです。加えた非放射性のFe3+やY3+を共沈剤(捕集剤)などと呼んでいます。(C)共沈
この場合、Y3+は目的とする90Yと同じ元素ですので同位体担体、Fe3+は90Yと異なる元素ですので非同位体担体とも呼べます。
また、90Srを溶液に残しておくために、非放射性のSrを加えますが、これを(D)保持担体と呼んでいます。保持担体を加えないと、90Srは(B)ラジオコロイドとなってY(OH)3と一緒に沈殿しやすくなってしまい90Yと分離できなくなってしましまいます。
よって、
(A)アルカリ性、(B)ラジオコロイド、(C)共沈、(D)保持担体
ですので、正解は①となります。
問題文をそのまま暗記してしまいましょう!
トレーサー量の放射性同位体を分離する際には、その質量は極めて小さいので、担体を利用します。
担体は目的とする放射性同位体を運ぶ担い役をするもので以下の2つに分類することができます。
同位体担体:目的とするRIの安定同位体
非同位体担体:目的とするRIとは異なる元素
また、スカベンジャーは目的としない放射性同位体を沈殿させ除去するために加える担体のことであり、目的とするRIを沈殿させるために加える担体を共沈剤(捕集剤)と呼んでいます。
用語をまとめると以下のような感じでしょうか…
同位体担体:目的とする放射性同位体の安定同位体
非同位体担体:目的とする放射性同位体とは異なる元素
保持担体:目的とする放射性同位体を溶液中に残すために加える担体
捕集剤(共沈剤):目的とする放射性同位体を沈殿させるために加える担体
スカベンジャー:目的としない放射性同位体を沈殿させ除去するために加える担体
放射化学分離では主に、90Srと90Yの分離、140Baと140Laの分離が頻繁に出際されています。化学及び物化生の過去問題をしっかり解いて用語の定義をしっかりと暗記して下さい。
平成17年化学問21
平成19年化学問25
平成23年物化生問3Ⅱ
平成25年物化生問4Ⅲ
平成27年物化生問3Ⅱ,Ⅲ
平成28年物化生問3Ⅱ
放射平衡に関する重要事項もしっかりと勉強しておいて下さい。