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放射線の生体への影響

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
昨日、放射線の生体への影響についての記事を紹介しました。
その中で、間接作用は、
放射線が水分子を電離あるいは励起し、その結果生じた・OH(ヒドロキシルラジカル)や・H(Hラジカル)などのフリーラジカル(遊離基)が生体高分子に作用して損傷を引き起こすこと」
と記載しました。
これらの反応を化学反応式で見てみましょう。
化学反応式となると敷居が高く感じられ、なかなか馴染めない方もいるかと思いますが、とりあえず丸ごと暗記してしまいましょう。この分野は過去問題にもよく出題されていますので暗記することで得点できる問題を増えるかと思います。

放射線が水に入射すると、放射線のエネルギーが水分子に付与され、水分子のイオン化や励起が生じます。
水分子のイオン化を表す反応式は、

 イメージ 1 ①

生成したH2O+は周囲の水分子と反応して、

 イメージ 2 ②

この反応で生成した「・OH」に付された点(・)はこの分子の持つ不対電子を示し、このような反応性の高い化学種をラジカルと呼んでいます。

一方、反応①で生成した電子は、エネルギーを失うと、水分子を引き付けて安定化します。この状態の電子は水和電子と呼ばれ、記号eaq-で表されます。

 イメージ 3

励起された水分子(H2O+)は、

 イメージ 4 ③

の反応で、酸素と水素の共有結合が切れて分解します。

反応①~③は10-14s程度の非常に短い時間で起きることが知られています。
このように放射線を照射すると水溶液にはeaq-、H3O+、・OH、・Hが生成することになります。水分子へのエネルギー付与から10-12s程度の時間が経過した段階では、これらの水分解生成物は、空間的には数nmの狭い領域内に分布していると考えられ、この局所領域をスパー(スプール)と呼んでします。スパー(スプール)の間隔は、LETが高くなるほど狭まくなると考えられています。

放射線の生物への作用
①物理的過程:(10-16~10-14sくらい)
 電離(イオン生成)、励起(X線γ線なら光電効果、コンプトン散乱、電子対生成
 など)
②化学的過程:( 10-12~10-4sくらい)
 水と物質との反応で・OHラジカル(寿命 10-10sくらい)生成
③生化学的過程:数秒から数分
 核酸、タンパク質に損傷(生物学的初期効果:初期障害)DNAの損傷
④拡大過程:数分から
 初期障害の拡大、検出可能な障害、急性障害、晩発障害、発がんまで含めると数年

本日の記事と関連する以下の記事もあわせてご覧下さい。
 ラジカル
 水分子の電離と励起反応