ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日も第7版放射線概論の章末の演習問題を掲載します。
昨日に引き続き、化学の分野から2章「放射平衡」の章末問題の問3(P.142)です。
昨日は永続平衡に関する問題でしたが、今日は過渡平衡の問題で放射性同位体の分離と絡めた問題となっています。
第一種放射線取扱主任者試験では放射平衡も放射性同位体の分離も頻出かつ重要分野です。しっかりと勉強して必ず理解して下さい。
問3 37GBqの140Ba(バリウム-140)の質量は(1)gであり、これと過渡平衡の状態にある140La((2)-140)の質量の(3)倍である。この両者の混合溶液から、沈殿法によって140Laを無担体の状態に分離1つの方法は、溶液に適当量の非放射性の塩化バリウム(4)と塩化第二鉄(5)を加え、アンモニア水で処理して、水酸化第二鉄を沈殿させ、140Laをこれに(6)させる方法である。このとき加えられる塩化第二鉄は、非同位体担体あるいは(7)といわれ、塩化バリウムは(8)といわれる。
140Ba(バリウム-140)と140La((2)ランタン-140)の放射平衡の壊変式は半減期も含め必ず暗記しておかなくてなりません。
放射能が分かっているときの放射性同位体の重量を求める式は昨日の問題でもありましたね。
放射能を求める以下の公式を使用します。
必ず暗記しなくてはならない式です。
37GBqの140Baの質量は上の公式でA=37GBq、T=12.75日、M=140を代入して求めます。ただし、単位に注意しましょう。放射能は"Bq"、半減期は"秒"です。
これより
親核種、娘核種の原子数を表す公式は必ず暗記しておかなくてはなりません。
親核種1の原子数
過渡平衡においては、娘核種は以下の式に近似できます。(この式も暗記すること)
よって、親核種140Baの原子数は娘核種140Laの原子数の
となります。
原子数は重量を質量数で割ったものです。
娘核種140Laと親核種140Baの質量数はともに140で同じであるため、重量比も原子数比と等しくなるため、140Ba(バリウム-140)の質量1.37×10-5gはこれと過渡平衡の状態にある140La(ランタン-140)の質量の(3)6.67倍となります。
過渡平衡にある140Ba-140Laの混合溶液から、140Laを無担体の状態で分離する方法としては溶液に適当量の非放射性の塩化バリウム(4)BaCl2と塩化第二鉄(5)FeCl3を加え、アンモニア水で処理して、水酸化第二鉄Fe(OH)3を沈殿させ、140LaをFe(OH)3と(6)共沈させます。
このとき加えられる塩化第二鉄Fe(OH)3は、非同位体担体あるいは(7)共沈剤といわれ、塩化バリウムBaCl2は(8)保持担体といわれます。
塩化バリウムや塩化第二鉄などの基本的な化合物の化学式は書けるようにしておきましょう。また、水酸化第二鉄の化学式も重要ですので暗記しておいて下さい。
平成27年度物化生問3Ⅱ,Ⅲでは水酸化第二鉄の化学式Fe(OH)3を書く問題が出題されています。
トレーサー量の放射性同位体(RI)の質量は極めて小さいので、担体を加えて共沈させます。放射性同位体を分離する用語についても暗記しておきましょう。
平成18年度物化生問1Ⅱや平成27年度物化生問3Ⅱでは、本問題同様、Ba2+が保持担体、Fe非同位体担体であることが出題されています。
また、昨日の記事で掲載した90Sr-90Yの永続平衡においても平成23年度物化生問3Ⅱや平成27年度物化生問3Ⅲで同様の問題が出題されています。
同位体担体:目的とするRIの安定同位体
非同位体担体:目的とするRIとは異なる元素
保持担体:RIを溶液中に残すために加える担体
捕集剤(共沈剤):目的とするRIを沈殿させるために加える担体
スカベンジャー:目的としないRIを沈殿させ除去するために加える担体