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標識化合物①

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
今日から3月に入りましたね。少しずつ暖かくなっているように感じます。
3月は年度末となるため、何かと慌ただしい月になるかと思いますが、試験勉強ができる時間をしっかりと確保して欲しく思います。
 
昨日、反跳エネルギーに関する記事を紹介したときに平成19年度物理問11について触れました。せっかくですので問題を掲載しておきたいと思います。また類似問題もひとつ掲載いたしますので是非解いてみて下さい。

平成19年度物理
【問11】
電子の静止質量の約10^4倍大きい質量を持つ原子核から1MeVの光子が放出されるときに原子核が受ける反跳エネルギーとして最も近い値は、次のうちどれか。
1 1eV    2 5eV    3 10eV    4  100eV    5  1keV
(正解は4)

【類題】
質量数131の原子核から364keVのγ線が放出される際に、その反動として原子核が受けるエネルギー(反跳エネルギー)に最も近いものは次のうちどれか。ただし、1u(原子質量単位)に対応するエネルギーを931.5MeVとする。
1 0.05eV   2  0.5eV   3  5eV    4  50eV   5  500eV
(正解は2)


さて、それでは今日の記事の紹介です。
先日、2月13日の記事でトレーサーについて紹介しました。 
トレーサーとは、ある現象や過程で対象とする物質の挙動を追跡する目的で加える物質をいいます。トレーサーは追跡しようとする対象物質とまったく同じ挙動をすること、また追跡の過程で検出が容易であることが必要です。このため放射性同位体が利用されることが多く、放射性トレーサーと呼ばれています。

トレーサーを使用するためには、放射性同位元素で置き換わった化合物の合成が必要となります。ある化合物中の決まった位置の原子がその放射性同位元素で一部または全部が置き換わっていることが必要であり、これを標識化合物といいます。
今日はこの標識化合物について記載したいと思います。

標識化合物の純度
クロマトグラフィーと逆希釈法(同位体希釈法のひとつ)を利用します。 
試験でも時々出題されていますので覚えておいてください。

平成18年度化学問24
平成20年度化学問24
平成26年度化学問26

標識化合物の命名
特定標識化合物
 :特定の位置の原子だけが標識される 
  [1-14C]チミン、[6-3H]ウラシルのように標識位置を明記

名目標識化合物
 :特定の位置の大部分が標識されているが、その他の位置の原子も標識され分布比 
  が明確でない
  [9,10-3H(N)]オレイン酸のようにN-(nominal)を付ける
 
均一標識化合物
 :全ての位置の原子が均一に標識されている
  [U-14C]ロイシンのようにU-(uniform)を付ける

全般標識化合物
 :全ての位置の原子が全般的に標識されているが、分布が均一ではなく分布比も明
  確でない
  [G-14C]メチオニンのようにG-(general)を付ける

平成17年度化学問25
平成18年度化学問24
平成26年度化学問24
平成28年度化学問24
平成29年度化学問22

標識化合物の保管方法
①比放射能を低くする
放射能の濃度を低くする
③少量ずつ分けて保管する(放射線による相互の影響を避けるため)
④強いエネルギーのβ放出体やγ放出体などとは一緒に置かない
⑤ラジカルスカベンジャーとしては、有機溶液ではベンゼンを、水溶液ではエタノー

 ルを加え加水分解を防ぐ
(ラジカルスカベンジャーは遊離基、遊離原子を捕らえて反応を抑制)

 
標識有機化合物に関しては
①純粋な状態で保管する
②低温で保管する
・水溶液(トリチウム3H化合物)は2℃くらい
(凍結は分解が促進されるからNG、液体N2温度(-196℃ほど低温)ならOK)
ベンゼン溶液は8℃(5~10℃)くらい
3H, 14C, 35Sなどの低エネルギーβ線放出体は自己分解性があるから注意

平成17年度化学問26
平成20年度化学問24
平成25年度化学問24
平成28年度化学問23
平成29年度化学問23