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2022年度第一種試験問題総評 化学編

ブログをご覧の皆さん、おはようございます。

令和4年度の第一種試験の総評を掲載致します。

 

2022年度第一種試験問題総評

【化学】

難易度は例年並みといったところでしょうか。

いくつか難しい問題も見られます。計算問題の中には見慣れない問題もありますが、多くは過去に出題されたことのある問題に近い問題ですので、過去問題を解いて勉強してきたことをしっかりと得点に結びつければ6割は得点できると思います。

 

問1は計算問題で真面目に原子数を求めて比を取ると結構な計算量になります。放射能が原子数に比例することを考えれば簡単に正答にたどりつけます。

問3は軌道に関する問題ですが、電子殻に収容できる電子数の数やs軌道、p軌道、d軌道などに関する知識がないと難しかったかもしれません。第一種試験では過去に出題されていませんでしたが、第二種試験では2018年度管理技術Ⅰ問1Ⅱで出題があります。

問4は40Kの放射能濃度を求める計算問題です。40Kの放射能に関する問題は頻繁に出題されていますので解けるようにしておきましょう。今年度の第二種試験では牛乳中の40Kの放射能を求める問題が出題されました。

問5の140Ba-140Laの過渡平衡は非常に重要で過去問題でも頻繁に出題されていますので、確実に解けるようにしておきたい問題です。(2021年度化学問4、2016年度化学問8、2015年度物化生問3Ⅱ、2014年度化学問7など)永続平衡も含め放射平衡は超重要分野です。

問6は加速器で放射性核種を製造する際の条件に関する計算問題で、これもよく出題されている分野です。放射化分析の公式を覚えておけば解ける問題です。(2017年度問8、2015年度化学問11、2013年度化学問8、2008年度化学問13など)

問7は核反応に関する問題で毎年のように出題されています。PET核種である18Fを生成する核反応に関しては2007年度化学問9でも出題されています。

問8の235Uの核分裂に関する問題も非常によく出題されています。(2020年化学問9、2019年化学問32Ⅰ、2017年化学問6など)

問10はコバルト(Co)に関する問題ですが、難しかったと思います。Dは光核反応です。

問12は元素に関する問題ですが、これも難しかったかもしれません。Raがアルカリ土類金属なので硫酸イオンと沈殿を作ることを知っていれば4が正答であることにたどり着いけそうに思いますが…

問13の計算問題は難しくはありませんが、指数の計算はしっかりできるようにしておきたいですね。

問14は安定核種に関する問題ですが、主要な元素については安定同位体放射性同位体を覚えておく必要があります。2017年度化学問1でも同様の問題が出題されています。

問15は天然放射性核種に関する問題です。Cの半減期20分の核種とは11Cを想定していると思われますが、11Cは天然放射性核種ではないですね。この問題も少し難しかったかもしれません。

問16は年代測定に関する問題です。2020年度化学問18でも出題されています。主要な年代測定法は覚えておきましょう。

問17は壊変図に関する問題です。2012年度化学問19と同じ壊変図です。壊変図に関しては64Cuや74Asに関する問題が過去にも出題されています。

問18に出題されている放射線検出器については、特徴、検出可能な放射線の種類などは確実に覚えておきましょう。

問19は化学反応式に関する問題です。2013年度化学21では酢酸エチルの希硫酸による加水分解での生成物の化学反応式が出題されています。

問20は気体、問21は沈殿に関する問題で毎年必ず出題されていますので過去問題を解いて化学反応式をしっかり理解しておきましょう。

問22、問24は放射性同位体の分離に関する問題です。クロロ錯体、イオン交換樹脂に関する問題はよく出題されていますので過去問題を解いておくことが大切ですイオン交換樹脂に関しては2019年度化学問22、2016年度化学問21、2015年度化学問18などで出題されています。

問25は溶媒抽出法に関する問題で、溶媒抽出法は計算問題として過去にもよく出題されています。分配比、抽出率の公式をしっかり理解しておけば正答できます。

問27は純度に関する問題です。化学純度、放射性核種純度、放射化学的純度の意味を理解しておけば正答できる問題ですが、ちょっと戸惑ったかもしれませんね。

問29や問30は放射線と物質の相互作用に関する問題です。水との相互作用は生物でも出題される分野です。フリッケ線量計やセリウム線量計などと合わせてしっかり勉強しておきましょう。

 

化学問31

ヨウ素に関する問題です。ヨウ素にはいくつかの放射性同位体がありますが、いずれも重要で毎年のように試験に出題されています。確実に覚えておきましょう。

Ⅰはホットアトムに関する問題です。1934年にSzilardとChalmersが発見したこの効果は試験でも何度か出題されています。(2019年度化学問32Ⅱ、2015年度物化生問4Ⅰ、2005年度物化生問1Ⅰ)本問題は2015年度物化生問4Ⅰとほぼ同じ問題で(C)の計算問題も全く同じですね。確実に得点したい問題です。

Ⅱはヨウ素同位体に関する問題で、こちらも非常に出題頻度の高い問題で過去にも何度も出題されていますので得点したい問題です。ヨウ素同位体については123I、125I、131Iは非常に重要ですので半減期、壊変様式、エネルギー、用途はしっかり勉強しておきましょう。ヨウ素の問題ではラジオイムノアッセイ甲状腺治療なども必ずと言っていいほど出題されますので、この辺りもしっかりと勉強しておきましょう。また本問題の後半にあるように235Uの核分裂とも関連した問題も時々出題されていますので押さえておきたいですね。

 

化学問32

放射線を利用した分析手法に関する問題です。

Ⅰの後半は少し難しかったかもしれません。22Naや24Naはよく出題される核種ですので、壊変、半減期、エネルギーなどは覚えておかなくてはなりません。水和五酸化アンチモンやシュウ酸アンモニウムなどはあまり出題されたことがないので、(E)は戸惑ったかもしれません。

Ⅱの蛍光X線源を問う(F)は55Feと241Amで迷ったかもしれませんが、γ線と問題文にあるので241Amが正答です。メスバウアー分光法も時々出題されています(2014年度物化生問1Ⅱ(O))ので覚えておきたいですね。(J)のXAFS(ザフスと読みます)は過去の試験ではあまり問われたことがなかったと思いますので難しかったかもしれません。

Ⅲでは陽電子寿命測定に関する問題が出題されています。これも過去の試験では出題されたことがないように思いますので、(L)の22Naは難しかったかもしれません。天然放射性核種からの放射線として2MeV以上のγ線を放出する核種として208Tlは覚えておきましょう。過去の試験でも出題されています。(2012年度管理測定技術問2Ⅰ(エ)、2013年度管理測定技術問4Ⅳ(P)、2014年度管理測定技術問3Ⅰ(イ))また、即発γ線分析も時々出題されています(2016年度物化生問4Ⅲ(P))ので覚えておきたいですね。