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2021年度第一種試験問題総評 実務編

2021年度第一種試験問題総評

【実務】

2019年度から従来の管理測定技術の課目から実務の課目に変わりましたが、内容的には従来の管理測定技術とあまり大きく違いはないように思います。

今年度の問題の難易度は例年並みといった感じかと思います。従来からの管理測定技術、昨年一昨年の実務の過去問題をしっかり解いて試験に臨めば十分対応できる問題です。問1Ⅱ,Ⅲの問題、問3の被ばく線量や遮蔽板の枚数を求める計算問題に少し時間を要するかもしれませんが、その他は計算問題も含め、それほど時間を要する問題も多くなく、時間的にも1時間40分で解答できる問題かと思います。6割は得点したい問題です。

問1

Ⅰ GM計数管に関する問題です。問われている内容は基本的な問題ばかりですので、全問正解したい問題です。(ア)の正味の計数率を求める問題も実務(旧管理測定技術)や物理の問題で頻繁に出題されています。(C)や(D)の核種は低エネルギーβ線放出核種の代表ですね。低エネルギーβ線放出核種についてはよく出題される重要な核種がありますのでエネルギー値とともにしっかり覚えておきましょう。図1については第一種試験の2011年度管理測定技術問1にも似たような図が出題されています。

Ⅱ 放射線測定器の機器効率を求める計算問題ですが、(イ)は難しかったかと思います。誤差(標準偏差)を求める公式を覚えておかないと正答できなかったのではないでしょうか。(イ)が正答できなくても(ウ)は問題文中にある(1)式に代入すれば解けますので、(ウ)だけでも正答したいですね。

Ⅲ GM管式サーベイメータの校正に関する問題です。汚染等をサーベイメータで検出する問題には機器効率や線源効率などの用語が登場し、計算式にもこれからの値が必要になります。機器効率や線源効率、表面放出率などに関しては、本問題の概略図をイメージすればそれらの意味も分かりやすいかと思います。落ち着いて考えれば難しい問題ではありません。機器効率や線源効率、表面放出率などは第一種試験の2017年度管理測定技術問6でも出題されています。

問2

放射線業務従事者の被ばく線量を測定する個人線量計に関する問題です。蛍光ガラス線量計(RPLD)、光刺激ルミネセンス線量計(OSLD)、熱ルミネセンス線量計TLD)などは出題頻度が非常に高い線量計です。基本原理、特徴は覚えておきましょう。フィルムバッチやイメージングプレート(IP)もよく出題されています。IPについては今年度(2021年度)の第一種試験化学問28でも出題されています。固体飛跡検出器についても時々出題されますので勉強しておきましょう。

問3

非密封放射性同位元素の取り扱いに関する問題です。前半の137Csに関しては基本的な問題で過去の試験でも何度と出題されていますので全問正答したい問題です。また、実効線量率定数から被ばく線量を計算する問題も実務(旧管理測定技術)の試験では毎年のように出題されている問題です。(ウ)の被ばく線量はもちろん、(エ)の遮蔽板を置いた場合の問題も必ず解けるようにしておかなくてはなりません。線減弱係数、半価層についてしっかり勉強しておくことが大切です。(エ)については2016年度の管理測定技術問4Ⅱにも同様の問題が出題されています。後半の除染の問題も実務(旧管理測定技術)ではよく出題されています。過去問題をしっかり解いておけば正答できます。近年では2020年度の実務、2017年度の管理測定技術で出題されています。

問4

Ⅰ 安全への取り組みなどに関する問題です。放射線の知識は不要で、一般的な安全に関する知識が問われています。ヒヤリ・ハット事例やPDCAサイクルなどは社会人の人にとっては馴染みのある用語かと思います。

Ⅱ 化学薬品の取り扱いに関する基本的な問題です。エーテルやアセトンが引火性の高い薬品であることは覚えておきましょう。また、アルカリ金属の性質も知っておきたい事項です。黄リン、赤リンについては高校化学の教科書にも載っていたかと思います。

Ⅲ 化学反応式、pH、モルに関する基本的な知識が問われています。計算そのものは難しくありません。pHに関する問題は第一種試験の2019年度実務問4Ⅱでも出題されていますが、その問題よりはかなり易しい問題ですので正答したいですね。(I)、(J)はFe(OH)3との共沈について問われています。2020年度の第一種試験の化学問22でも水酸化鉄共沈法の問題が出題されています。

 問5

Ⅰ 一見、複雑な壊変図が記載されていますので難しく感じるかもしれませんが、問われている内容はさほど難しくはありません。ラジウム(Ra)やストロンチウム(Sr)が(A)アルカリ土類金属に属すること、永続平衡時には(D)放射能が等しくなることなどです。(E)の219Rnの原子数を求める計算問題も放射能を求める基本公式を覚えておけば正答できます。(F)も(E)で求めた219Rnの原子数からモル数が分かれば正答できます。

Ⅱ 223Raが属するアクチニウム系列の壊変に属する核種を暗記しておくことに加え、それらの核種がα壊変する核種かβ壊変もする核種かまで暗記していないと正答できず、難しい問題だったかと思います。

Ⅲ 内部被ばく線量を求める計算問題です。単位に注意しながら計算すれば難しい問題ではありません。2015年度や2014年度、2011年度などの管理測定技術の試験でも出題されています。(J)は226Raが属するウラン系列の核種について覚えておかなくてはなりません。

問6

Ⅰ 放射線防護に関する問題です。放射線防護の基本的な考え方として、正当化、最適化、線量限度などはよく耳にする用語ですが、線量拘束値や参考レベル、線源関連などといった用語は過去にも出題されていなかったので難しかったかもしれません。

Ⅱ 2019年度第一種試験実務問5Ⅱの類題です。2019年度試験では組織が皮膚と肝臓でしたが、今年度の問題では肝臓と胃になっています。放射線も2019年度はα線β線γ線でしたが、今年度の問題ではα線γ線になっています。実効線量や等価線量を求める計算問題ですが、放射線加重係数の値と公式を覚えておけば解ける問題です。