ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
前回、放射性核種140Baと140Laの記事を掲載しました。
前回は140Baと140Laの分離に関する過去問題と演習問題を掲載しましたが、140Ba-140Laの関係(過渡平衡)も90Sr-90Yの関係(永続平衡)同様、放射平衡になるため計算問題もよく出題されています。
前回掲載した過去問題の2006年度第一種試験物化生問1Ⅱや2015年度第一種試験物化生問3Ⅱでも計算問題は出題されています。また、化学の問題でも以下のような計算問題が過去に出題されています。
2012年度化学問8
精製した140Baから生成した140Laの放射能が、精製時より25.6日後に5.0kBqであった。精製時における140Baの放射能[kBq]として最も近い値は次のうちどれか。ただし、140Baの半減期を12.8日、140Laの半減期を1.7日とする。
2007年度化学問10
1.0MBqの140Baと過渡平衡にある140Laの放射能[MBq]として最も近い値は次のうちどれか。ただし、140Baの半減期は12.7日、140Laの半減期は1.68日とする。
さて、前回掲載した演習問題の40Baの放射能は37GBqでしたが、
この37GBqの40Baと過渡平衡にある40Laの質量はいくらになるでしょうか。
今日はこの問題を一緒に考えてみましょう。
40Baの半減期は12.75日、140Laの半減期は40時間(1.68日)としましょう。
放射能が分かっているとき、その放射性同位体の重量は放射能を求める公式から計算することができます。放射能を求める公式は必ず暗記しなくてはならない超重要公式ですのでしっかり覚えて下さい。
37GBqの140Baの質量w[g]は上の公式でA=37GBq、T=12.75日、M=140を代入して求めることができます。ただし、単位に注意しましょう。放射能は"Bq(ベクレル)"、半減期は"秒"です。"GBq(ギガベクレル)"は"Bq(ベクレル)"の109倍です。
K(キロ)は103倍、M(メガ)は106倍、G(ギガ)は109倍、T(テラ)は1012倍は必ず覚えておきましょう。
37GBq=37×109Bq、12.75日=12.75×24時間=12.75×24×3600秒として代入すると、
これより
37GBqの140Baの質量は1.37×10-5[g]と分かりました。
放射平衡における親核種、娘核種の原子数を表す公式も放射線取扱主任者試験では超重要公式ですので必ず暗記しておかなくてはなりません。(λは壊変定数)
親核種1の原子数
娘核種2の原子数
通常、娘核種2の最初の原子数は0であることが多いので、N2は以下の式で表されます。
140Ba-140Laのように過渡平衡になる場合においては、娘核種2の原子数は、さらに以下の式に近似することができます。(この式も超重要公式ですので必ず暗記すること)
本問題では、娘核種140Laの原子数と親核種140Baの原子数の関係はそれぞれの核種の半減期を用いて以下のように表すことができます。
40Baの半減期12.75日は簡単に12.8日として、これを時間に換算してTBa=12.8×24時間、140Laの半減期はTLa=40時間として計算すると、
となります。
ここで、原子数は重量w[g]を質量数Mで割ったものにアボガドロ数(6.02×1023)を乗じたもので、上の放射能の公式では右辺の後半部分になります。
娘核種140Laと親核種140Baの質量数はともにM=140で同じであるため重量比も原子数比と等しくなります。
よって、140Baの質量は1.37×10-5[g]でしたので、これと過渡平衡の状態にある140Laの質量は1.37×10-5[g]に0.15を乗じて0.21×10-5[g]となります。
140Ba-140Laのように過渡平衡に関する過去問題として、第一種試験の化学では以下のような問題も出題されています。解けるように勉強しておきましょう。
2016年度化学問8
140Baは以下のように2回β-壊変して140Ceになる。分離精製した140Ba試料に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A 140Laの放射能が最大となる前に、140Laと140Baの放射能の和に極大があ
らわれる。
B 140Laの放射能が最大となるとき、140Laと140Baの放射能の和は、その時
点における140Baの放射能の2倍に等しい。
C 140Laの放射能が最大になった後、140Laの放射能と140Baの放射能の比
は、次第に一定になる。
D 140Laの放射能が最大になった後、140Laの原子数と140Baの原子数の比
は、次第に一定になる。
2014年度化学問7
140Baは半減期12.8日でβ-壊変して140Laとなり、140La(半減期1.68日)はβ-壊変して140Ce(安定)になる。この逐次壊変で、140Laを分離除去した140Baから生成する140Laの放射能が最大となるときをtmaxとすると、次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
A tmaxでは、140Laの生成速度と壊変速度は等しい。
B tmaxでは、140Laの放射能は140Baの放射能に等しい。
C tmaxの後は、140Laの放射能は140Baの放射能を常に上回る。
D tmaxの後は、140Laの放射能は次第に半減期12.8日で減衰するようにな
る。
参考までに、La(ランタン)に関しては140La以外に139Laがアクチバブルトレーサーに使用されています。放射線取扱主任者試験ではよく出題されていますので合わせて覚えておきましょう。
アクチバブルトレーサーに使用される元素:139La、55Mn、79Br、151Eu