ブログをご覧の皆さん、こんにちは。
一週間前に化学の試験でよく出題される計算問題としてフリッケ線量計に関する問題を掲載しました。以下の問題です。
問
フリッケ線量計を60Coのγ線で1時間照射したところ、Fe3+が溶液1g当たり5.6×10-5g生じた。γ線の線量率(Gy・h-1)は次のうちどれか。ただし、Feの原子量を56、Fe3+生成のG値を16、アボガドロ定数を6.0×1023mol-1、1eVを1.6×10-19Jとする。
皆さん、自分で解いて正答の600 Gy・h-1になりましたか?
では、先週書いた解き方の手順に従って解いてみましょう。
① 1時間の照射で5.6×10-5gのFe3+が生成されているので、この値から変化した
Fe3+の原子数を求める
前回の記事で、「原子数はモル数にアボガドロ数6.0×1023を掛けることで計算できる」、また「モル数は質量をその原子量(分子量)で除すことで求められる」と書きました。そこで、5.6×10-5gのFe3+のモル数を求めてみると、
よって、変化した原子数は、
[個]
② 100eVのエネルギーが照射されたときに16個のFe3+が変化する(G値=16)こと
から、①で求めた原子数が変化するために必要なエネルギーを求める
G値が16ということは100eVのエネルギーを吸収したときに16個の原子が変化することを表しているので、①で求めた6.0×1017個の原子が変化するために必要なエネルギーは、
100[eV] ------→ 16個
? [eV] ------→ 6.0×1017個
の関係から、
1個の原子を変化させるのに必要なエネルギーは、
であるので、6.0×1017個の原子を変化するために必要なエネルギーは、
③ ②で求めたエネルギーの単位を eV から J に変換する
1[eV]は1.6×10-19[J]であると問題文にも書いてあるので、37.5×1017[eV]を[J]に変換すると、
④ ③で求めたエネルギーは溶液1gあたりに吸収したエネルギーでであるため、
これを溶液1kgあたりに吸収したエネルギー Gy に変換する
60×10-2[J]のエネルギーが溶液1gに照射されことが分かったので(60×10-2[J・g-1]、これをGyに変換するには、[Gy]=[J・kg-1]の関係から、1gを1kg(=1000g)に換算して、
60Coのγ線の照射時間は1時間であるので、γ線の線量率(Gy・h-1)は、
となります。よって、正答は600 Gy・h-1となります。
2017年度の第一種試験化学問29はこの問題とほとんど同じ問題です。60Coのγ線の照射時間と生成したFe3+の質量が異なるだけです。是非自分で解いてみて下さい。
第一種試験で出題されるフリッケ線量計、セリウム線量計の計算問題はほとんどこの問題の類似問題ですので、モル数、原子数、エネルギー換算をしっかり勉強しておけば必ず得点できる問題です。
フリッケ線量計のG値≒15.5、1[eV]=1.6×10-19[J]の値は暗記しておきましょう。