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吸収線量率に関する問題

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

昨日、フルエンス率に関する計算問題を一緒に解いてみましたが、この問題には続きがあります。続きの問題を一緒に考えてみましょう。


(1) 1MBqの192Ir線源から1mの距離のγ線フルエンス率[m-2・h-1]は1時間当たりいくらになるか。ただし、192Irのγ線放出率を200%とする。
(2) このときの空気の吸収線量率[Gy・h-1]は1時間当たりいくらになるか。ただし、192Ir線源から放出されるγ線の平均エネルギーを0.4MeV、平均の質量エネルギー吸収係数を3.0×10-3 [m2・kg-1]、1eVを1.6×10-19[J]とする。

 
(1)が昨日の問題になります。今日は(2)の問題を解いてみましょう。
まず、用語のおさらいです。
吸収線量とは任意の物質が任意の放射線により照射されたときの単位質量当たりに吸収されるエネルギーと定義されます。単位には[Gy]や[J・kg-1]が用いられます。物質1kgに1Jのエネルギーが吸収されたことを表します。
 
(1)の問題から1MBqの192Ir線源の1mの距離におけるγ線フルエンス率は1時間当たり5.73×108[m-2・h-1]であることが分かりました。今日はこの値を用いて空気の吸収線量率を計算してみましょう。
 
昨日記載したように、フルエンス率とは単位時間当たりに単位面積を通過する粒子の個数です。すなわち、γ線フルエンス率が5.73×108[m-2・h-1]ということは、1時間当たり1m2の領域に5.73×108個のγ線が降り注いでいることを意味しています。では、その領域に降り注がれた総エネルギー量は求めてみると、問題文に192Ir線源から放出されるγ線の平均エネルギーが0.4MeVと書いてあるので、
 
 f:id:radioisotope_f:20200218100341g:plain
 
となります。
問題文には、1eVを1.6×10-19[J]と書かれてありますので、MeVをJ単位に換算して、
 

 f:id:radioisotope_f:20200218100341g:plain

            f:id:radioisotope_f:20200218100718g:plain

となります。
この値から空気の吸収線量率を求めるためには質量エネルギー吸収係数の値が必要となります。質量エネルギー吸収係数とは放射線が物質中を通過する際に物質が吸収するエネルギーの大きさを表す量になります。
 
1時間当たり1m2の領域に平均エネルギー0.4MeVのγ線が5.73×108個降り注いでいる領域では、この領域に降り注がれた総エネルギー量に質量エネルギー吸収係数3.0×10-3 [m2・kg-1]を乗ずればこの領域の空気の吸収線量率を求めることができます。
 
 f:id:radioisotope_f:20200218101818g:plain
 
これを計算すると、
 
 f:id:radioisotope_f:20200218102038g:plain
               f:id:radioisotope_f:20200218102210g:plain 
 
ここで、吸収線量の単位は[J・kg-1]=[Gy](グレイ)ですので、
 
 f:id:radioisotope_f:20200218102439g:plain

 

となります。これが正答である1時間当たりの空気の吸収線量率となります。

 

吸収線量(率)はエネルギーフルエンス(率)に質量エネルギー吸収係数(率)を乗じたものであるということは必ず覚えておきましょう。

このことは単位から考えても分かります。

本問題では空気の吸収線量率[Gy・h-1]の値を求めたいので、[Gy]=[J・kg-1]より

 [Gy]=[J・kg-1・h-1]

さらには

 [J・kg-1・h-1]=[J・m-2・h-1]×[m2・kg-1]=[J]×[m-2・h-1]×[m2・kg-1]
となり、

 [吸収線量率]=[平均エネルギー]×[フルエンス率]×[質量エネルギー吸収係数]

で求めることができることになります。

 

吸収線量率や照射線量率を求める問題は過去にも多く出題されてます。

問題によっては計算量も多くなるため第一種試験でよく出題されています。

2017年度物化性問1Ⅰ

次に、空気中に置かれた137Cs点線源(放射能5GBq)について考える。この線源からは、エネルギーが(ア)×10-13Jのγ線が毎秒(イ)×109本放出される。線源から1m離れた点におけるこのγ線の光子束密度(フルエンス率)は(ウ)×108s-1・m-2となる。空気の質量エネルギー吸収係数を2.93×10-3m2・kg-1とし、αT及びαKをそれぞれ0.11、0.09とすると、この点におけるエネルギーフルエンス率は(エ)×10-5J・s-1・m-2となり、電子平衡が成立するとき、同点でのγ線による空気の吸収線量率は(オ)×10-4Gy・h-1となる。

2012年度物化生問2Ⅱ
0.25GBの137Cs点線源から0.5m離れた点における662keVのγ線に対する吸収線量率を求めよう。γ線放出に対する電子の(放出比(M)係数)が0.11であるとすると、線源から毎秒放出されるγ線の数は(イ)s-1である。散乱や減弱を無視すれば、線源から0.5m離れた点におけるエネルギーフルエンス率は(ウ)MeV・m-2・s-1である。空気の線エネルギー吸収係数と密度をそれぞれ3.8×10-3m-1、1.3kg・m-3であるとすると、電子平衡が成立するならば求める値は、(エ)μGy・h-1である。

2010年度物化生問1Ⅲ
137Csの放射能を10GBqとするとき、この線源から放出される662keVの光子の数は、すべての軌道電子に対するαを0.11とすると、(J)×109 s-1となる。このとき、線源から1m離れた位置Pにおける光子のフルエンス率は(K)×104 cm-2・s-1であり、空気の密度を0.0013g・cm-3、線エネルギー吸収係数を3.8×10-5 cm-1とすると、位置Pにおける空気の吸収線量率は(L)×10-4 Gy・h-1である。ただし、線源から位置Pまでの光子の減弱は無視するものとする。

 

2013年度物化性問2Ⅱ

200MeV陽子の水中での質量阻止能が4.5MeV・cm2・g-1であるとすると、1.0×108cm-2・s-1のフルエンス率でこれが垂直入射した場合、表面付近における水吸収線量率は(L)Gy・min-1となる。また核子当たり200MeVの炭素イオン(12C6+)の場合は同じフルエンス率に対し(M)Gy・min-1となる。

ブラッグ・グレイの原理に関連する問題としてもよく出題されています。

2012年度物理問26

内容積1Lのボールチェンバーによって放射線を測定したところ、電流1nAが得られた。この場合空間の空気吸収線量率[µGy・s-1]はいくらか。次のうちから最も近いものを選べ。ただし、このチェンバーの内部は密度1.3㎏・m-3の空気が充填され、壁材はプラスチック内面にカーボン電極を塗布したもので空気等価とみなすことができるものとする。

2011年度物理問28

ビーム電流が100µAの1.0MeV電子線が1.0㎏の水に全エネルギーを吸収されるとき、この水での平均の吸収線量率[Gy・s-1]に最も近い値は次のうちどれか。

2009年度物理問27

空気等価電離箱(有効体積50cm3)をγ線場に置き、この電離箱に直列に接続した抵抗(0.01TΩ)の両端の電圧として65mVを得た。このγ線場における照射線量率(C・kg-1・h-1)として最も近い値は次のうちどれか。ただし、電離箱中の空気の密度を1.3×10-3g・cm-3とし、二次電子平衡が成り立ち、生成電荷は完全に収集されるものとする。

 過去問題をしっかりと解いて、必ず自分で計算できるようにしておきましょう。