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β線について

ブログをご覧の皆さん、こんにちは。

前回はα線について簡単に記事にしましたので、今日はβ線について少し書きたいと思います。β線に関してはβ-線とβ+線がありますが、今日はβ-線について触れたいと思います。

 

β-
 原子核β-壊変するときに放出される。β-壊変は原子核内の中性子が陽子に壊変するもので、このとき電子(β-)と反ニュートリノを放出する。 β-壊変後の原子核(娘核種)は元の原子核(親核種)の中性子が陽子に変わっているため、原子番号は1増加します。質量数に変化はありません。
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例えば、原子番号19のカリウム40Kはβ-壊変して原子番号20の40Caになり、β-線と反ニュートリノを放出します。

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40Kに関してはβ-壊変以外にもEC(軌道電子捕獲)壊変も行います。

40Kのβ-壊変とEC壊変は放射線取扱主任者試験では非常に重要で出題頻度が高い壊変ですので暗記しておく必要があります。下記の壊変図を頭に入れておきましょう。

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2019年度第一種試験物理問7ではこの壊変図に関係する問題が出題されています。

2019年度物理問7

40Kは、半減期1.25×109yでβ-壊変またはEC壊変する。これらの壊変の分岐比をそれぞれ0.89、0.11とするとき、EC壊変の部分壊変定数[y-1]として最も近い値は次のうちどれか。

2019年度第二種試験化学問11でも40Kの壊変図に関係する問題が出題されています。

第二種試験化学問11

・・・上記のような壊変系列をつくらない天然放射性核種もあり、体内にも存在して内部被ばくの主な要因になっている核種として例えば、(E)がある。(E)は、89.1%の分岐比で(F)して安定同位体40Caになり、一方、10.8%の分岐比で(G)し、安定同位体40Arになり、この際、1.46MeVの(H)を放出する。

 

また、直接は40Kの壊変図とは関係ありませんが、2019年度第一種試験の化学問3では40Kの放射能を求める問題が出題されています。この問題で記述されている40Kの同位体存在度の0.0117%は試験でも問題文としてよく記述されていますので、計算する際に忘れないように気を付けましょう。

2019年度第二種試験の化学問3でも40Kの放射能を求める問題が出題されています。


2019年度第一種試験では物理問32でβ-壊変に関する問題も出題されています。

2019年度第一種試験物理問32

(3)  粒子cは、図に示されているように、壊変ごとに軌道半径が異なる。この理由は壊変エネルギーの一部を(E)が持ち去るためであり。粒子cのエネルギーは(F)を示す。この壊変を(G)といい、壊変前の原子核を(Z, A)で表すと、壊変後の原子核は(H)となる。ここで、Zは原子番号、Aは質量数を表す。

 

2019年度の第二種試験物理問11Ⅱでは40Kではありませんが、64Cuの壊変図に関する問題が出題されています。参考までに掲載します。

2019年度第二種試験物理問11Ⅱ

下図は64Cuの壊変図式である。64Cuは2種類のβ壊変(β+およびβ-)を起こして、(F)および(G)に変化する。また、電子捕獲(EC)も起こる。これらの壊変割合(分岐比)から(F)の方が多く生成することがわかる。
この図から、64Cuの壊変当たりのγ線の放出割合は(H) %であることがわかるが、それ以外にβ+壊変に伴う消滅放射線の放出割合が壊変当たり(I)%である。ただし、内部転換は起きないものとし、陽電子による消滅放射線は3本生成することはないものとする。特性X線あるいはオージェ電子が放出される原因となる内殻電子軌道の空孔を生成する電子捕獲(EC)の壊変当たりの割合は(J)%である。

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放射線取扱主任者試験では64Cuの壊変図に関する問題は比較的よく出題されています。(第一種試験化学:2007年度問16、2011年度問20、2015年度問8)

 

α線同様、β-線の飛程に関する問題も放射線取扱主任者試験ではよく出題されています。β-線の飛程を表す公式は必ず暗記しておきましょう。

β線のアルミニウム中での最大飛程R[g/cm2]
 
 
 
α線の飛程は空気中での公式であったのに対して、β-線の最大飛程の公式はアルミニウム中です。単位も[g/cm2]であることに気を付けましょう。単位[g/cm2]を[cm]単位に変換するためには物質の密度で除すことも覚えておきましょう。
 

2019年度第一種試験実務問4Ⅰではβ-線放出核種についてアルミニウム中での飛程から核種を同定するフェザー法に関する問題が出題されています。

2019年度第一種試験実務問4Ⅰ

○月×日 使用核種をそれぞれ1~10kBq含むとみられる廃液(水溶液)について、各核種の濃度を求めた。まず、廃液試料の一定量をプラスチック製容器にとり、そのまま(A)によって(B)の放射能濃度を求めた。(B)を除去した後、蒸発法による前処理後、端窓型GM検出器で計数した。さらに、試料とGM検出器間に適当な厚さのアルミニウム板を置いて計数し、(C)以外の2核種を定量した。

フェザー法は、連続スペクトルであるβ-線の最大エネルギーを求める方法で、物体の厚さに対するβ-線の計数率を測定して描いた図(吸収曲線)を利用する手法です。吸収曲線から最大飛程が分かれば、上述したのβ-線の飛程の公式から最大エネルギーを知ることができます。

 

α線同様、β線放射線を学ぶ上で基本となるものですので、放射線取扱主任者試験でも必ず毎年出題されています。

本日記事にしたように、β線に関係する問題は2019年度に出題された問題だけでも第一種試験、第二種試験で多く出題されています。過去問題にはまだまだ多くの問題が出題されていますので、しっかりと勉強して自分で解けるように頑張って下さい。